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 放課後児童クラブにおけるアンガーマネージメント
 (2022年3月1日)
  

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 放課後児童クラブにおけるアンガーマネージメント(令和4年3月1日)

児童健全育成指導士 田中純一

 

T アンガーマネージメントについて

T―1 怒りについて

 怒ることは簡単であるが、コントロールするのは難しい

T―2 アンガーマネージメントとは

 怒りが深刻な問題にならないように上手く制御し、管理することである。

 

U 放課後児童クラブにおけるアンガーマネージメント

U―1 放課後児童クラブや児童館におけるアンガーマネージメントについて

@     犯罪をしないさせない巻き込まれないための学び

A     怒りを扇動する行為を許さないことの大切さ

B     支援員や職員や大人のやり方に問題がないかを考える

C     子ども理解の基本

理解するはunderstandである。子どもの発達段階を具体的に理解する。

エリクソンの発達段階勤勉性の理解 三つ六つ九つの壁

U−2 アンガーマネージメントのやり方

@     目そらし方略を使おう

ガードナーの多重知能理論の活用

A     楽しい時間を多くし、退屈で暇な時間を少なくする

閑をつくらない ユニバーサルデザインの活用

B     外遊びや身体を動かす活動を多くする

小一時間は身体を動かす

C     表現する機会を多くし、自尊心を高める

マズローの欲求5段階説と表現し承認してもらうことの大切さ

安心できる居場所の提供

D     ロールプレーを活用する

ロールプレーでメタ認知

E     筋弛緩法やリラクゼーションを活用する

五感の考え方から体性感覚の考え方へ

F     ADHD傾向のある子ども等に配慮する

ADHD傾向の子どもはか状反応する 専門機関への巧みな誘導も必要

G     勝ち負けに偶然性のある遊びを取り入れて

 

 

U−3 アンガーマネージメントと不適応的心的防衛機制と適応的心的防衛機制

@       投影

ごっこ遊びを通して愛他主義を培う 利己他主義的活動を

A      幻想

勤労体験とユーモア

B      行動化

抑制・昇華・予期・ナッジ理論の活用

C      消極的攻撃

ユーモアと非言語的表現の活用

D      解離

時間という薬が効くまで待つ

E      心気症

心身・身心を癒す 勤労体験の大切さ

 

V アンガーマネージメントと自助・共助・公助そして近助について

V―1 自助共助公助について

 自助力と近助力を強くする

 

V―2 放課後児童クラブにおける自助・近助・共助・公助について

 コミュニティスクールなどの活用や近助力をつける

 

V―3 自助・近助・共助・公助と最近接領域について

 近助力を活用してキー刺激を見つける

 

V―4 ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワーク

 自助・近助・共助

ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワーク

終わりに
  ポジティブ心理学 
  「何をするの?」「何でやったの?」をやめよう  

 

T アンガーマネージメントについて

T―1 怒りについて
アリストテレスは怒りについて以下のように述べているという。
「怒ることは誰にでもできる。ただ怒るのは簡単なことである…しかし適切な相手に、適切な程度に、適切な場合に、適切な目的で、適切な形で怒ることは容易ではない。」
(アリストテレス 前384 - 322年 古代ギリシアの哲学者)

人間である以上、怒りの感情を持たないわけにはいかない。私自身も怒りの感情を上手くコントロールできないで、様々な苦労や失敗や他人に迷惑をかけています。子ども達の中にも自分の感情を上手くコントロールできないで、自分自身が損をしたり、他人に迷惑をかけてしまっているケースもたくさんあると思います。放課後児童クラブや児童館などでも怒りも上手くコントロールできるようにする手法を見つけたいものだと私は自戒の念を持ちながら感じています。

T―2 アンガーマネージメントとは
ウィキペディア(Wikipedia)には以下のように記述されています。
アンガーマネージメント(Anger management)とは、怒りを予防し制御するための心理療法プログラムであり、怒りを上手く分散させることができると評価されている。怒りはしばしばフラストレーションの結果であり、また自分にとって大事なものを遮断されたり妨害された時の感情でもある。怒りはまた、根底にある恐れや脆弱感に対する防衛機制でもある。アンガーマネジメント・プログラムでは、怒りは定義可能な理由によって生じる、論理的に分析可能な強い感情であり、適切な場合には前向きにとらえてよいものだと考えられている。
アンガーマネージメントの究極の目標は、怒りが深刻な問題にならないように上手く制御し、管理することである。怒りとは、何かに反応して呼び起こされる強い感情である。怒りの問題は、扇動する(そそのかす)側と扇動される(そそのかされる)側がどちらも対人関係において自制心を保つ技術や社会的技術をもたないために生じる。このような人々に対しては、怒りへの反応を訓練することにより、怒りが必要だと反応するのではなく、怒りは不要であり不快であると感じるようにすることができる。怒りのスイッチを切る方法としては、見なかったことにすること、または許すこと等がある。十分な睡眠、運動、正しい食事も怒りを予防する上で有効である。上手くアンガーマネージメントができない人々を治療する専門家としては、作業療法士、精神衛生カウンセラー、薬物およびアルコール・カウンセラー、ソーシャルワーカー、心理学者、精神科医などが存在する。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia
人間の遺伝子の中に脳の快感を出す機能があるとのことです。その中には本来型快感誘起情報として16ビートや低周波衝撃音・超高周波音・非定常持続音・反射・原色・金銀色・仮面などと共に威嚇もあるという。確かに人間は怒りや威嚇がエネルギーになったり、殺人事件の小説や時代劇や西部劇に快感を覚えることがある。またボクシングなどでも最終的に互いを讃え合うにしても戦いのプロセスの中では怒りの感情もないとはいえないであろう。現代は怒りに任せて行動することは社会的に評価されない。怒り的情動をスポーツに向けたり、殺人事件の小説を楽しんだり、演劇の世界の中で追体験することが大切になるであろう。「適切な場合には前向きにとらえてよいもの」との考えがあるように怒りのエネルギーを単純に抑制するだけではなくて、適切な方向に誘導することはとても大切であると私は思います。


U 放課後児童クラブにおけるアンガーマネージメント

U―1 放課後児童クラブや児童館におけるアンガーマネージメントについて
小学校低学年が主体の放課後児童クラブ等においては、子ども達の人数も多く、子どもたち同士のトラブルの対処が難しい場所であると私は思います。小学校低学年は自己中心的な側面が強く、自分の主張を通そうとしてケンカになることが多いものです。ゲームをやっていても「ルールを守らない」「このルールが正しい」「セーフだった。アウトだった」などでいざこざがなることは日常的なことです。ある程度のトラブルがあることは、想定内です。しかし徐々にエスカレートしていって、口撃(口での言い合い)から手が出たり、足がでたりしてしまいます。また怒りのままに行動することが日常化してしまって周囲の子ども達や支援員に暴力を振るうこともよくあるものです。
怒りがあまりにも頻繁に、強烈に、長時間、持続的に、暴力的になされるとその子ども自体の損失になるだけではなくて、周囲にも多大なマイナス的影響を与えます。ときにクラブ崩壊状態に陥ることもあります。怒りの発散によって、加害者・被害者・周囲の子ども達が強い影響を受けます。また保護者間同士・保護者と支援員等の関係も難しいものになっていきます。
放課後児童クラブは全国に26,625か所、登録児童数1,311,008人(令和2年7月1日厚生労働省調べ)あるとのことです。その目的は
この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。(児童福祉法第6条)とあります。クラブが荒れた状態になるとその健全な育成を図ることが難しくなります。
放課後児童クラブ等において子ども達の怒り等の行動を上手くコントロールするように働きかけること=アンガーマネージメントすることはとても大切であると私は思います。

U−2 アンガーマネージメントの前提
@     犯罪をしないさせない巻き込まれないための学び
大勢の子ども達がいるのでトラブルがないことはありません。遊びの中で、学習タイムの時に、散歩や清掃の時に子ども達はいろいろな問題を起こします。ただそれらの言動や行動が他人を傷つけるようにならないための事前学習が必要と思います。
暴行罪・傷害罪・侮辱罪・名誉棄損罪・器物損壊罪・強要罪など刑法に反する行為をしてはいけないとしっかりと学ぶことは子どもにとっても大人にとっても大切であると思います。
事故や災害(感染症を含む)に合わない巻き込まれない予防するための学びの機会を作っておくことが必要と思います。犯罪をしないさせない巻き込まれないための学びは日常活動の遊びの中に取り入れたり、ときに交番と協力して学ぶ機会を作ることも必要と思います。事故災害に備えて消防署等と連携して、学びの機会を活動の中に取り入れておくことも必要と思います。支援員は最低限、近くの交番・消防の出張所がどこにあるか、怪我の場合の病院等はどこにするかを決めておくことは大切です。子どもがいなくなった場合、近隣のコンビニや民生児童委員や自治会などとの連携も考慮する必要があると思います。
A     怒りを扇動する行為を許さない事の大切さ
子ども達の争いを見ていると、相手が怒るように扇動して(そそのかして)いる子どもがいるものです。扇動されて暴力を振るうのはいけないことです。しかし扇動する方も悪い場合がよくあります。扇動をする子どもは不思議と切れる子どもの切れるパターンを知っているものです。「お前はそんなことも出来ないのか?」「下手くそ」などの言葉刺激や仲間外れにするなどの刺激で、相手が粗暴な行為をすることを楽しんでいる子どももいることもあります。怒りを扇動する行為を許さないことが大切であると思います。
B     支援員や職員や大人のやり方に問題がないかを考える
子どもたち同士のトラブルが怒りを引き起こしている場合もありますが、支援員等の指導に問題がある場合もあります。子ども達を自分の想いのままに動かすことが子どもにとって大切と思い込んでいる大人がいることもあります。学習時間の極端な厳守・おやつの食べ方の極端なコントロール・生活規律の極端な強制などが子ども達の反乱の原因となっていることも多々あるものです。子ども達が安全・安心して楽しく暮らすための施設が、子ども達を縛り付ける施設になってはいけないと思います。小学生には育成支援が必要と言われています。保育園のように保護育成ではないので、子ども達の自主性を尊重しつつ、発達段階に応じた支援が必要と思います。また子どもとのアイコンタクトや保護者との信頼関係を日ごろ作っておくことが必要と思います。問題行動を起こした時に「ちゃんとこっちを見て話を聴きなさい」などと叱っても上手くいくものではありません。子どもの良い面をいつも見つけておき、しっかりと褒めることがあるからこそきちんと叱ることも出来るのだと私は思います。保護者との関係も同様です。子どもの生活や遊びをしっかりと観察しておいて、良い面を保護者に伝えることで信頼関係を築いておくことが大切です。他の子どもに危害を加えた時だけ「お宅のお子様の行為に迷惑をしています。ご家庭でも声掛けをしていただきたい」などと伝えても反発されることが多いものです。
同時に褒めたり、子ども達の自主性を尊重したりするだけでは上手くいきません。危険なことや刑法に触れるような行為については毅然たる態度でやらせないことは必要です。いつもはとても優しい支援員でも、時と場合ではとても厳しいことも必要です。また危険な行為や言動には複数の職員が協力して非言語的手法(みんなで厳しく睨む・危険な行為に割り込んで阻止するなど)で対応することも必要と思います。ただしそのことを保護者にいつも伝える必要性があるかは別問題です。クラブ内のことはクラブ内で解決することが原則であると私は思います。
C     子ども理解の基本
私は子ども理解の基本はunder standであると考えています。under standは英語で理解するです。under は下側であり、standは立つです。子どもの目線ではなくて、その下側になることによって子ども理解が深まると思います。文字通り膝を折って、子どもの目線の下になって学ぶことが一番大切と思います。under standすると見えてくるものがあります。
同時に放課後児童クラブは小学校1年生〜6年生までがいます。小学校1年生の平均体重は20s程度であり、4年生で30kg、6年生では40kg.を超えます。個人差もあるので体力差は顕著であす。またその他の面でも大きな違いがあります。この違いを前提にした対処をする必要があると思います。
子どもの発達段階を私は観察していて三つ・六つ・九つの壁があると言われていることに賛同しています。三つ前後まで(満2歳まで=未満児)は自分自身の経験を自分で覚えていることが出来る限界のようです。未満児が終わるころから言語でものごとを考えるようになるので、それまでの直感的思考とは思考パターンが違ったものになることが要因であるようです。満2歳までは安全安心な環境を用意してやることが必要です。これが三つ心と言われて言う所以で三つを超える壁かと思います。数えで四つから六つまで(満3歳から5歳まで)は他者との関係性が急激に自覚出来るようになってきますから六つ躾と言われるようにきちんとしたルールを守ることを指導することが必要となります。小学生になる前に上手く六つの壁を乗り越えたいものです。数えで七つから九つまで(満6歳から8歳まで)を考えてみると仲間関係が大切になってきて、相互関係の中での成長が顕著になると共に、男女の遊びが自然と別れてきます。そして九つを超えると自分のことを何となくであるがメタ認知出来るようになります。このことは同時に自分以外の他人がいて他人も別のことを考えているのだと少し認識できるようになると思います。これが自分を客観視できることにつながっていきます。抽象的思考ができるようになります。抽象的思考ができるようになるのが、九つの壁なのかもしれません。こうした発展段階を考えながら、子ども達から学んでいきたいと思います


子どもの活動は学び・遊び・働きと明確に分離できるものでもないことを理解しておくことも大切と思います。みんなで草取りをするという働きの中にも学びがあり、遊び的な要素もあります。エリクソンは小学生時代の獲得課題を勤勉性であると言っています。勤勉性とは一般的に学習と労働であるでしょう。小学生は学校で学習を頑張ります。放課後児童クラブではたんに遊ぶだけではなくて働く要素も取り入れることが小学生期の獲得課題である勤勉性を実現することになるのではないかと思います。放課後児童クラブにおける活動を遊び・学び・働きが包含されたものとして意図的に提供しておくことが大切と思います。

U−3 アンガーマネージメントのやり方
@     目そらし方略を使おう
小学校低学年であることを考えると、問題行動が起きた時に、「なんでそうなるの?」と分析をするよりは、とりあえず怒りの方向を別のものに持っていくのが私は有効性があると思っています。遊具の取り合いなどがあった時でも「面白い折り紙を見せてあげようか?」と上手く誘えば子ども達はついてくるものです。私はカバンの中に折り紙をいつも持っていて折り紙遊びなどに誘います。すると遊具を独占していた子どもまでが、「俺も欲しい」などと言いだすものです。上級生の女子などに声かけをしてみんなで飛行機作り・ハートの指輪作りへと発展することもあります。支援員は様々な技を持っていて、トラブルになりそうな子ども達に別の刺激を与えて、上手く誘導することも大切です。
ガードナーは人間の知能は多重であると主張しています。論理数学的知能・言語的知能・身体運動的知能・音楽的知能・空間把握的知能・対人的知能・個人内知能・博物的知能の八つの知能がそれぞれ有機的関連を持ちながら機能しているようです。子ども達も様々な知能をもっています。単純に知能指数的に評価するのではなくて、その子どもの持っている良さと得意な知能をunder standして見つけ出しておいて、怒りの方向性を楽しいものにしていくのが良いと思います。気分一効果と言って嫌な気持ちと楽しい気持ちは同居できないようです。嫌なことを楽しい方向にもっていく意味でも目そらし方略を考慮に入れ、子ども達を喜ばせる技をいくつか取得しておくことが支援員には必要と思います。
A     楽しい時間を多くし、退屈で暇な時間を少なくする
ADHD傾向の割合は男の子が6に対して女の子1くらいとのことです。概して男の子は退屈で暇な時間があると悪いことをするものです。子ども達を観察していると、「暇つぶしにあいつをかまってやろう」と扇動していることが多いものです。またつまらない話を聴くのが嫌だから互いにちょっかいを出してエスカレートしてケンカになることも多いものです。放課後児童クラブでは出来るだけ楽しい時間を多くすることが大切と思います。学校と違って指導要領があってこれは絶対にやらなければならないというものはありません。子ども達の状態に合わせて楽しく、ゆったりと過ごせる時間を確保することがトラブルを少なくすることになると思います。
最近は何をやっても楽しくない「俺。閑」という子どももいます。「俺。閑」の子どもは自分に自信がないことが多いものです。人間は必ず良い面を持っているものです。それを支援員や仲間や保護者の力で子ども自身が見つけられるように協力してあげることで閑な時間を減らすことが必要と思います。その子どもが気づいていないだけで必ず良い面や素晴らしいものが子どもにはあります。支援員がそれを信じて応援していると、ピグマリオン効果といって実現することがあるものです。
(ピグマリオン効果とは他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果のこと)
また活動がユニバーサルデザイン的なものを多くすることも大切です。動く・簡単・面白いものを増やして、「俺・閑」な子どもでも参加できるようなものにすることが良いと思います。また一つの活動をする時に、ガードナーの多重知能理論を考えながら身体を動かすこと、頭を使うこと・友達とおしゃべりすること・リズムをつけること・立体的に考えること・子ども達のオリジナリティを取り上げることが良いと思います。ユニバーサルデザイン的ですから、簡単なのだけれど奥が深く、大人でも充分に楽しめるものが良いと思います。折り紙・わらべ歌・カプラ・バックギャモン・子ども575・バドミントン・けん玉・ドリブル・ヨガ・かけっこ・ジャンケン遊び・お絵描き・写し絵・ごっこ遊びなどなどたくさんのユニバーサルデザイン的な活動を探しましょう。
B     外遊びや身体を動かす活動を多くする
怒りが爆発しそうになった時、気分転換に外に連れ出すことはとても効果があるように思います。外に出ることで少なくとも怒りの対象の相手から分離することが出来ます。また身体運動の不足はイライラを助長させます。思い切って外遊びをして適度に疲れていると怒る気にもなれないということもあります。切れやすい子ども達には一日小一時間は外の空気を吸って、元気に過ごせるようにするのが良いと思います。冬場などでも外に出るのを前提に支度を用意しておくのも良いと思います。学校内にある所は校庭やグランドを使用し、学校外のところでも近くの公園などを利用することは必要です。屋内でも身体を動かす活動を増やすのが良いと思います。空気縄跳びやストレッチ・風船遊び・ドッジボールなどいろいろ考えられると思います。
身近な自然に親しむ活動も大切と私は思います。春にはオオバコの茎を使ってのオオバコ相撲・四葉のクロバー探しなどがあります。夏には川でザリガニ釣りや魚とり・秋にはドングリ拾いにドングリコマ作り・椿の種で工作も出来ます。冬には雪合戦などもあります。身近な山野草の天ぷら会なども楽しいものです。身近な自然に親しむ活動を通して、大自然に生かされていることを自覚することも大切と私は感じています。
C     表現する機会を多くし、自尊心を高める
現遊びということ(玉川大学名誉教授岡田陽)
表現遊びとは、子どもが自己表現することを楽しめるようなあそびということです。ここではまず、表現ということを考えてみましょう。表現とは「オモテにアラワス」と書きます。表にあらわすためには、内なる何かがあるはずです。自分の内面にあるイメージの世界を具体的な形象として外にあらわすことが表現なのです。日本古典の「徒然草」にも「おぼしきことを言わぬは、げにぞ腹ふくるる心地しける」とありますが、自分の思っていることを外へ表現するということは、昔から変わらぬ人間の本質的な欲求であることが分かります。人間が成長発達し、社会のために役立つ人として働けるようになるためには、多くの知識や行動様式を知り、身につけていかなければなりません。
(中略)
教えこまれ、やらされることばかりでは息が詰まって苦しくなるでしょうが、一方適度に自己を表現する場があり、外へ自分を発揮することができればストレスは解消され、心の安定が得られます。そのへんのことを充電(チャージ)と放電(ディスチャージ)にたとえる人もいますが、教えられたことを覚え、身につけていくことが子どもにとって必要なチャージであるならば、自由にあそんだり、思ったこと感じたことを外にむかって思いきり発散してみることは子どもにとって、生命の放電ともいうべき不可欠な活動なのです。
玉川大学の岡田陽先生は以上のように書かれています。学校と違って放課後児童クラブや児童館では教え込むことよりも自己表現をすることを重視することが大切と思います。思い切って自己表現することが出来ればフラストレーションが減少し、怒るパターンも少なくなります。豊かに自己表現が出来ることは自尊心を高めることへもつながります。問題行動が起きた時にとりあえず事故につながらないように介入し、ケンカをしている状態を分離させることは必要です。同時に長期的には表現遊びを通じて、怒りも含めて上手く表現できる手法を身につけられるようにすることが必要と思います。
マズローは人間の欲求5段階説を提唱しています。第1段階「食欲」「排泄欲」「睡眠欲」などの生理的欲求第2段階安全欲求第3段階友人や家庭、会社から受け入れられたいという社会的欲求第4段階他者から尊敬されたい、認められたいと願う承認欲求・第5段階自分の世界観・人生観に基づいて「あるべき自分」になりたいと願う自己実現欲求です。子ども達が怒りの感情を抱くのは環境的要因などで生理的欲求や安全欲求が満たされない場合があります。支援員や大人は児童福祉法第6条でいう「適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る」環境を用意することが第1・第2段階の欲求を満たすことになると思います。また子ども達は仲間や空間に受け入れてもらいたいとの社会的欲求があります。自分の居場所がないことはイライラやフラストレーションとなります。また小学校2年生後半頃からは承認欲求も強くなってくるように私は思います。子ども達の得意な面を見つけてあげて自尊心を高められる環境を作ることが必要と思います。イライラした状態が作られているのはもしかしたら環境的要因にあるかもしれない。また本人が承認欲求を上手く手に入れる方法をわからないで探しているのかもしれないと考えることも必要かと思います。社会的欲求ではその子なりの居場所が欲しいことが多いものです。ある子どもはカーテンの裏が居場所であったり、段ボールの箱の中が居場所であったりするものです。そこでなら安心して過ごせるならそういう場所を確保することも必要だと私は思います。学校でさえ、教室が居場所として子どもにとって適切でない場合、保健室・校長室・コーディネーター室などが居場所になっても良いのですから、放課後児童クラブや児童館では他の人に迷惑をかけない限り、その子どもの居場所を確保してあげることが大切と私は思います。その子なりの安全な居場所を見つけるとその中で自己表現が出来るようになって、次第に仲間の中に居場所を見つけるようになってくるものだと私は感じています。
D     ロールプレーを活用する
表現遊び等で自己表現をすることは特別な劇遊び等をするというわけではないと私は考えています。ちょっとしたロールプレー(役割分担遊び)をするというものが良いと思います。いつも支援員が教える役割をするのではなくて、子ども達に教える役割をしてもらうなどです。小学3年生後半からは(満9歳になるころから)自分のことを客観視できるようになると言われています。また他人の立場に立って考えたり、抽象的な思考ができるようになります。この時期が上手くクリア出来ないと自己中心のままで他人に嫌われたりすることも多いものです。子ども達のじゃれ合いもだんだんエスカレートすると本気のケンカになってしまうことを支援員や大人や上級生がロールプレーでやってみせることも有効なこともあります。
メタ認知との認知行動心理学の考え方があるようです。メタ認知とは物事を認知している自分がいると客観的に認知することのようです。怒りが生じた時に自分はいま怒っていると客観的に自分自身を認知することは大切です。ロールプレーなどを活用してメタ認知能力を高めることは大事と思います。
ロールプレーには実際に役割りを担ってもらうとの活動もあると思います。私は折り紙活動をする時に、私が折り紙配りをしないで、自尊心欠如傾向のある子どもに配ってもらうようにしています。配る係になった子どもの前に私が折り紙をもらいに行きます。もらったら深々と頭を下げて「○○君ありがとうございました」と言います。子ども達は役割をもらって感謝されるので自尊心が高まり、自分の居場所を見つけて満足することが多いものです。この場合折り紙配りをしたいと申し出る子どもが多くなる場合もあります。やりたい子どもがいたら配る係を増やせば良いだけだと思います。
E     筋弛緩法やリラクゼーションを活用する
ケンカ仲裁法の一つとして筋弛緩法やリラクゼーションも良いと思います。頭にきて爆発しそうだったら、まずは「その怒りを全身に込めて筋肉を思い切って緊張させよう」と私が率先してやってみせています。足のつま先から始めて次第に腿・お腹・背中・肩・腕・手・指先と全身を緊張させていき、その後に弛緩させると頭に行っていた血液が手足にいくことで心が安定してきます。怒りやイライラとかフラストレーションのエネルギーを全身の筋肉を硬直させることに向けることはそれほど難しいことではないと思います。筋肉を硬直させたら自動的にリラクゼーションにもなるようです。トラブル状態を取り合えず遅延させることによって、時間稼ぎをして、怒り→暴力暴言とのパターンを脱却することも可能になるように思います。
中村雄二郎氏は「臨床の知科学の知」で以下のように述べられています。
「すなわち、現代生理学の分類では、人間のすべての感覚は@特殊感覚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・平衡感覚)A体性感覚(触覚・圧覚・冷覚・痛覚・運動感覚)B内臓感覚(臓器感覚・内臓痛覚)という三つに分けられている。そしてこの分類は@脳神経連絡の諸感覚A脊髄連絡の諸感覚B内臓連絡の諸感覚という基準によっている。この知見から言えることは、昔からただ<触覚>といわれてきたものは、単に皮膚の接触感覚にとどまらない<体性感覚>に属するものであり、それは同じく体性感覚に属する筋肉感覚や運動感覚と密接に結びついて働く」とのことです。人間の感覚は基本的には体性感覚が統制のベースになっているというのです。筋肉を動かすことリラックスすることは心を落ち着かせるのに言語的な説諭より効果的であると私は思います。
F    ADHD傾向のある子ども等に配慮する
ADHD傾向の子どもは7%〜8%いるといわれているようです。50人のクラブなら3〜4人くらいはADHD傾向である可能性があります。
ADHDAttention-deficit/hyperactivity disorderで、注意欠陥多動性症候群と言われています。クラブ等に複数のADHD傾向の子ども達がいると、相乗効果で運営が難しくなることも多いものです。ADHDのアテンションは注意・デフィシィティは欠陥・ハイパーアクティビティは超行動的・ディスオーダーは症候群です。デフィシィティ(deficit)には赤字や超過との意味もあるようです。ADHD傾向の子ども達と接していると注意欠陥と言うよりは注意過剰ではないかと私は感じています。(無意味に注意が向くという意味で欠陥ともいえるでしょうが)ADHD傾向の子ども達は普通の子どもが反応しない刺激でも過剰に反応する傾向があると思います。活動の中で「だめじゃない」「しっかりしてよ」「あなたのお陰で負けたじゃないか」などの言動や紙くずを投げつけられた、自分が一番になれなかったなどのことにも激しく反応してしまう傾向があります。しっかりと子ども達が反応する前をunder standして、どのような刺激がキー刺激(鍵になる刺激=怒りのスィッチなる刺激=アンガー・キュー怒りのきっかけとなる刺激)になっているかを見つけておきます。そしてキー刺激になる前にキー刺激を除去する対処することが必要であると思います。またADHD傾向の子ども達が一ヶ所に集中しないようにする方法もあります。同時にどっちみちよってくる仲間でもあるので、別メニューとして散歩や野外遊び・テント生活などを用意するやり方も有用であると私はやってみて感じています。
ADHD傾向のある子どもで専門機関や医療機関との連携の必要性がある場合があります。怒り方などが通常では想定出来ないパターン等で、何らかの障害がある可能性がないとは言い切れないこともあるからです。視覚障害や聴覚障害等と違って心の中の事なので、保護者へのアドバイスはとても難しいものです。まずは難しいことを前提に考えておくことが必要です。日ごろの保護者との信頼関係を深くしておいて、必要に応じて時間をかけて上手く伝えることが大切と思います。1年2年かかることもあるものです。専門機関等と連携するデメリットよりもメリットの方があることを支援員自身が知っておくことが必要です。専門機関・医療機関と連携することで療育手帳や障害手帳の交付を受けることが出来ます。療育手帳交付を受ければ手厚い支援を受けることが出来ます。また小学校児童に掛かる一人あたりの公的費用は平成30年度新潟県では116万円です。支援学校では一人当たり769万円です。こうしたことも知っておくと良いと思います。
G     勝ち負けに偶然性のあるものを取り入れる
怒りをコントロール出来ない子ども達はゲームなどで負けてもケンカになってしまうことが多いものです。私はゲームの中に偶然的な要素(良い意味でギャンブル性)を取り入れることが必要と思っています。バックギャモンやお散歩ギャモン・サイコロゲームなどはサイコロの目の出方で大きく勝負が左右します。こうした偶然性の要因によるものだと我慢が出来るようになるものです。ジャンケン陣取りを私はよくやっていました。2組がスタートしてぶつかったらジャンケンをして勝った方が進み、負けた人は退いて次の人がスタートします。ジャンケンでの勝負ですから我慢が出来ることが多いものです。また一人で負けるのは悔しさが強くなるのでツーパワー・スリーパワーで(2人や3人)で走っていって、ジャンケンをするのは一人とのパターンもやっています。負ける時も仲間がいれば辛くないものです。また、勝ち負けを伴わない活動を多くしておくことも大切と思います。一般的に勝ち負けがある遊びでも最終的にみんなが勝ち負けにこだわらないようなやり方も大切です。私はジャンケン遊びでも勝者が最後に「皆様のお陰様で優勝させていただきした。ありがとうございました」と深々とお礼をいうようにしています。勝者が喜ぶことが出来るのは負けてくれた人がいるからです。1人で右手と左手でジャンケンをしても楽しくはありません。仲間の存在こそが大切だと思います。

U−4 アンガーマネージメントと不適応的心的防衛機制と適応的心的防衛機制
ヴェイラントの心的防衛(無意識的防衛)とアンガーマネージメントのことを考えてみたいと思います。欲求不満・フラストレーション・イライラすることなどが生じたい場合に怒りの発現をして、問題行動になるのを防ぐのがアンガーマネージメントであると思います。ただフラストレーション等に対して怒りとの形で心的防衛がなされることばかりではありません。怒らないで自傷行為をしたり、心が病んだり、片頭痛などになったりする場合もあります。怒りのコントロールだけではなくて、不適応的な心的防衛機制を適応的心的防衛機制に変容させていくことが必要でないかと私は思います。
ヴェイラントは11種の心的防衛があると指摘しています。適応的なものが5種と不適応的なものが6種であす。ヴェイラントは大人の場合のことを書いていますが、子どもにも対応できると思うので、考えてみたいと思います。不適応な心的防衛には、投影・幻想・行動化・消極的攻撃・解離・心気症です。適応的なものは、抑制・ユーモア・愛他主義・予期・昇華です。不適応的なものから子どもの場合にどんな感じになるかを私自身の経験から考えてみたいと思います。
@     投影とは自分の欲求不満や葛藤を他人のせいにしたり、自分ではなくて他者がそう思っていると考えるとのことです
子どもたちはよくケンカをして相手を叩いたりして注意されると『だって、誰々ちゃんが私に意地悪をいったんだもん』などと言うことがあります。実際に意地悪を言われた場合もあるけれど、そうでない場合もあります。また、友達関係が上手くいかないときに、『私は一緒に遊ぼうと言うのに拒否される』と言う。現実はその子どもが自己中心的な振る舞いが多いために一緒に遊んでもみんなが楽しくないので、一緒に遊ばないことも多いこともあります。鬼ごっこをやれば、自分は絶対に鬼になりたくないタイプで、捕まりそうになると『タイム』を連発します。いつも自分が悪くなくて他人のせいにするので、それを注意されるとそれがまた切れるきっかけになることもあります。
投影の場合に自分を客観視出来ていない場合が子どもには多いように思います。ロールプレーの手法を使って、先生ごっこや立場をとりかえて劇遊び等をすることで、自分の姿を見直す等の活動が効果的でした。ある子どもは放課後児童クラブでいつも人のせいにして、喚くことが多かった。数クラブ合同の集いの中で、その子ども以上に他人のせいにして騒ぐ子どもをみて、自分のクラブの支援員に『先生。僕もあんなだったんですかね?』と自分を客観視したことがあった。
自分のクラブだけに閉じこもらないで、いろいろな世代やいろいろな場所で多くの経験をしたり、日常的なごっこ遊び等は有用であると私は感じます。
自分中心的な考え方を是正するためには、例えばサッカーなどをやる時に、「危険な石やゴミを拾ってから遊ぼう」などの利己他的活動(利己主義的活動と利他主義的活動を一緒にする活動)を最初にやっておくことが大切と思います。利己他主義的活動とは自分の為にもなり同時に相手の為にもなる活動です。これは適応的心的防衛機制である愛他主義にもなっていきます。
A     幻想とは現実には実現していない自分の願望が実現したと思いこんでしまう
現実にはゲーム機等を持っていないのに『自分は最新のゲーム機を持っている』と話をする。本人自身は本当に持っていると思っていることもある。みんなに嘘つきだと言われてしまうことが多い。嘘つきと言われることが切れるきっかけになることも多いものです。
幻想の場合はやはり勤労経験(働く経験)がとても良いと思います。学ぶことや遊びことは個人的なことであることも多いものです。しかし働くは傍を楽にするとか、人のために動くが語源ですから、基本的には利他的行為(愛他主義)で他人との関係性を抜きにすることが出来ません。働いた結果は自分だけではなくて、他者の利益を生むものであす。実際に働いたものの成果が自分や他人の目の前に見えるようなものが良いと思います。たとえば、草取りとかゴミ拾い・石拾いの活動をします。頑張ってやったとして、『僕だけがたくさん集めた』みたいな幻想はあまり持つことがないでしょう。自分も頑張った。他の友達も頑張った。結果として、これだけの作業が出来て、環境がきれいになって良かったとの満足感は仲間意識と自分自身のアイデンティティー確立の一助になるのではないでしょうか。何かを実現させるということは、地道な努力と汗を流すことです。勤労経験や働くこと・ボランティア活動は一攫千金のようなものと反対であるから、あまり幻想を抱くことがなくなるのではないかと私は平島公園の清掃活動や元職場の環境美化活動を子どもたちと一緒にやることで学んでいます。ユーモアも入れた嘘んこごっこ遊びやジャンケン遊びなども必要かと思います。あり得ない嘘をお互いに言い合って楽しむものです。嘘を前提にして遊んでいる間に自分の心の中に願望と幻想が同居していることに気が付く場合もあるものです。
B     行動化とは自分の欲求不満や、葛藤を解消するために、問題行動を起こすことです
上手く仲間同士で遊べなかったり、ゲームに負けたりすると、暴力を振るったり、暴言を吐いたり、トイレに閉じこもって、占拠したり、ゲーム版をひっくり返したりする。またトイレにトイレットペーパーを詰め込んで故意にオーバーフローさせたり、小便等を故意にまき散らしたりするなどの事例を私も経験しました。行動化が一番アンガーマネージメントの必要なことでないかと私は思います。
行動化して他人に迷惑をかける行為や言動についてはきちんと抑制する必要があると思います。見えないところで、人の迷惑をかけるようなことをするならば、一人か二人支援員をつけてみることも必要です。犯罪が行われるための条件は、イ死角があるために犯罪が行われる、ロ不当な暴力を使用する方の力が強い、ハ知識が悪いことをやるほうが持っている場合です。一般的に子ども相手の場合にイの死角があるパターンのことが多い。死角をなくすために、職員を常時付けておくことは必要な場合もあります。小便等をやられてみんなに迷惑をかけられ、その始末に追われるよりも先手必勝で職員を付けた方がベターと考えられます。なお犯罪を起こさなければ問題がないのだから、問題を起こさなければ褒めてあげて、みんなの為になる活動をしていくようにしていくことが大切であると私は思います。
トイレに入るとトイレットペーパーを詰まらせる場合にトイレの見張りを強くしました。その上でやった子どもを特定し、行為を抑制し、やらないようにするとともに、その子どもの得意を見つけてあげ、得意を伸ばすように働きかけました。
行動化が激しい場合は、とりあえずクールダウンをさせるために、別室で休ませることも良いことかと思います。その時に「どうしてけんかになったの?」などの質問はしないように私はしています。「朝飯何食べた?」「○○君は何が好き?」などの話をして、その子どもの得意を見つけるようにします。すると自尊心が高まって自分の得意を伸ばして欲求不満等を昇華していくように思います。怒りのエネルギーをポジティブな活動へと向けていくことがとても効果的かと私は思います。
怒り等を爆発させてしまう行動化を防ぐためにはしっかりと子ども達の様子をunder standすることが必要です。すると行動化する前のキー刺激になるものが見つけることが出来ます。他人が怒るように扇動している場合があります。そうした行為をしそうな子どもがいたら、素早くストップさせることが必要です。支援員は予期する能力が必要です。普通の刺激の範囲内でも怒りを爆発させてしまう子どももいます。どのようなキー刺激が要因なのかを実際の場面で理解しておくことが大切と思います。支援員が予期できるようになったら、トラブル発生前に上手く対処することが必要です。これは説諭や説得よりもノンバーバルコミュニケーションを使用して、ナッジ理論的にやるのが良いと思います。エスカレートすると危なくなるなあと予期したら、「アー」みたいな大声をあげます。子ども達は何だろうとこちらをみます。でも何もその後に言いません。子ども達は何で声をあげられたのかを考えてトラブルになりそうな行動を控えるようになります。これで気づかなかったらもう一回「アーアー」と大声を出します。気づいてやめたら「偉かったね」と褒めます。この繰り返しの中で子ども達も自分の行動がトラブルになることを予期できるようになります。事故やトラブル・子ども同士のいざこざは常にありうるものです。起きる前から支援員も子ども達もある程度の解決方法を予期しておくことも大切と思います。
ナッジ理論は、行動経済学(行動科学や心理学を融合した新しい学問)のひとつです。「ナッジ」は「ひじでちょっと押す」という意味があり、さりげなく意思決定や行動に働きかける方法として注目を集めています。(web insourceより)
C     消極的攻撃とは暴力や、自己主張などで、明らかに相手を攻撃するのではないが、皮肉を言う、相手を困らせるなどをする
急にしくしくと泣きだし、みんながどうしたら良いかわからなくなり、苦労をさせられる子どもがいます。また、『どうせ自分は何も出来ないのだから』などと無意識的に嫌味を言ったりします。
消極的攻撃で、集団活動には参加しない子どもがいました。とくに反発するわけでないのですが、いつも無表情で、他の子どもが熱中しても、別の雰囲気で、冷やかに見ていました。参加型の児童劇で「サルのハンカチーフ売り」の活動がありました。サルがハンカチーフをとってしまってお調子にのる場面になりましたが、数人の子ども達を中心に収拾がつかない状況になっていきました。その時に玉川まや子さんと小野眞理子さんはサル語を使って上手く誘導してみんなを導いてくれました。無意識的な行動には言葉の説諭説得ではなくて、サル語や原始的なものが子どもの心に迫るのだと学習しました。ついつい『なんでそんなことをするの?』と聞いてしまうのを慎むことがどれだけ大切なのかと思いました。サル語を使うユーモアとか非言語的表現を使って子ども達を楽しませることが必要かと思います。
D 解離とは受け入れがたい現実を見ないようにして、自分が受けた否定的感情を否定し   てしまう
解離的な状況になった子どもとの経験は私にはあまりありません。ただ、自閉傾向の強い子どもには、興奮すると自分ではわかっていても騒いだり、涙が出たり、走り回ったり、手足が震えてしまう子どもたちにはたくさん出会いました。ある意味では現実世界でないあっちの世界に行ってしまっているので、無駄な声かけをしてもプラスにならないことが多かった。それならば危険のないようにだけして、こっちの世界に戻って来るまでじっくり待つのが良いとわかった。こっちの世界に戻ってきてから『どうだった?』と尋ねると、『自分でもわかっているのだけれど、身体に勝手にスイッチが入ってしまう』との話でした。そういうこともあるのだと思いました。
激しく怒りを行動化してしまう場合でも、説諭説得すればするほど悪い方向に行ってしまう場合もよくあります。瞬間的な解離状態なのかとも感じます。こうした場合は時間という薬しか効かないこともあるものです。危険でないようにしておいて時が過ぎるのを待つことも大切です。時間という薬を使うのも抑制の一つであろうと思います。
またある意味では解離状況はトランス状況であるとも考えることができます。トランス状態は悪い意味だけではなくてポジティブな意味もあります。芸術活動等でトランス状態になることはあるようです。トランス状況が(薬物によるものでないが)創造的なものを産み出すこともあるようです。あっちの世界に行ってみることができたのも面白い経験と考えて上手い適応を考えたいものだと私は思っています。

E 心気症とは自分の欲求不満や葛藤を、自分の病気(現実のもの、空想上のもの)に人の目を引きつけることで解消しようとする
心気症で登校拒否の子どもたちにはたくさんの出会いがあって、いろいろと教えてもらいました。実際に頭がいたくなり、腹がしくしくして、脈拍も速くなったりするという。無理をして学校に連れていってもマイナスになることもあります。時という薬が一番の時もあります。この薬が効いてきたタイミングを見極めるのはとても難しいけれど、タイミングは探さなくてはいけないと思います。時の薬が必要な間は出来るだけ夜昼の逆転を防ぐことが大切のようだと思いました。学校には行けないけれど、朝起きたら、学校以外の施設に行くか、外に出ることは有意義です。学校に行っていないのだから、その時間帯は学習をさせるのが良いとの考えになりそうですが、私はあまり賛成ではありません。私は職場で働かなければならない。学校に行けない子どもの学習を見ていたら、働くことが出来きません。そこで、草取り・おやつ買い・庭清掃・ローラースケート場清掃などなどの仕事を一緒にしてもらうことにしました。これは二つの効果がありました。他の子どもが帰って来てから、『○○ちゃんだけずるい』みたいにいうときに『あなたも私と一緒に仕事をするなら、学校に行かなくても良いように先生とお母さんに頼んであげる』と切り返すことが出来るからです。もう一つは、昼間学習が出来ないので、午後や夕方に学習をするので、時間の有効活用となり、夜にはしっかり寝るようになりました。このことで夜昼の逆転を防ぐことが出来ました。心気症傾向の子どもには遊びの大切さとかいわれるけれど、勤労体験や働く意義を見つけることの方が、効果があると私は思います。自尊心が培われ昇華へと発展する可能性が高くなるからです。(放課後児童クラブでの不登校の子どもに対しては不登校学級・不登校を受け入れる児童館・フリースクール等の活用も必要な場合があると私は思います)
心身の疲れをいやすとの言葉があります。心身には身心と言い方もあるそうです。心身は心が中心だとすると、身心は身体がメーンとなります。身体が疲れた時はゆっくりと休んだり音楽を聴いたり栄養補給するのが癒しになります。心が疲れた時は運動がとても良いそうです。両方とも疲れた時はストレッチやヨガなど軽度の運動をしながらリラックスをするのが良いかと私は感じています。心身なのか身心なのか両方なのかを考えながら対応することがベターだと思います。
フラストレーションやイライラなどの状況に接した時に、不適応的心的防衛機制として「投影・幻想・行動化・消極的攻撃・解離・心気症」などになるのではなくて、適応的心的防衛機制である「抑制・ユーモア・愛他主義・予期・昇華」の方向性に持っていくことが大切であると私は思います。これはレジリエンス(ストレスなどの外的圧力を撥ね返す復活力・逆境や困難に押しつぶされることなく外的環境に順応していく適応力)を高めることであるように思います。

V アンガーマネージメントと自助・共助・公助そして近助について

V―1 自助・共助・公助について
防犯や防災の現場では自助・共助・公助が大切と言われています。例えば空き巣などの防犯対策として自宅に監視カメラをつけたり、暗くなってから動くものに反応してライトが点くなどの備えをするのは自助です。また自治会などで地域を奇麗にしたり、防犯パトロールをするのが共助です。警察のパトカーが巡回してくれるのは公助となります。私はこれに近助を加えることが必要と考えています。向う三軒両隣の6軒の家の1軒でも良いから道路をきれいにします。みんなが手伝ってくれることを望むのではなくて、お隣さんが手伝ってくれるように近助力を高めていくことが良いと思います。防災でも自宅にテントや非常食を用意しておくのが自助だとすれば、お隣さんと仲良くなっておいて、互いに声掛けをしたり、一緒にバーベキューをしておけばこれが近助力を高めます。地域全体で祭りなどをして仲間作りをし、自家発電機などの使用訓練をすれば、共助となります。地域の防災訓練で役所や消防署・警察などが一緒にやってくれれば公助となります。自助・近助・共助・公助が上手く結びついて、より良い地域にしていくことが大切と思います。
自助力を高めるためには子ども達の目線の下からunder standして、子どものニーズをしっかりとつかむことが大切だと思います。また近助力を高めるためには実際に近所を自分の足で歩いてみて、近所にある人材や資源を発掘する努力が一番大切だと思います。近所を廻ってみるとコンビニがあり、駄菓子屋があり、交番・消防出張所・公民館・児童館・公園・空き地・お店・塾・畑などなど様々な発見があります。またいろいろな人材がいて仲間になれるものです。世の中を明るくする資源は身近なところに必ずあると私は思います。

V―2 放課後児童クラブにおける自助・近助・共助・公助について
アンガーマネージメントを考える時に、子ども達を野外や広い場所で活動させ、発散させることはとても大切です。狭いクラブの場所でも使用方法を工夫したり、中庭をきれいにして外遊びを出来るようにするのが自助かと思います。また地域の中のいろいろな個人や施設などと仲良くなり、散歩コースを作ったりするのは近助力を高めることになります。自治会等と助け合って近くの公園を利用させてもらうのは共助かなと思います。最近、学校もコミュニティスクールとの提案がなされて、グランドや校庭・体育館や空き教室を放課後児童クラブに積極的に解放してくれるようになりました。これらが公助です。自助・近助・共助・公助は有機的な関連を持たせながらやっていく必要があると思います。

V―3 自助・近助・共助・公助と最近接領域について
怒りを上手くコントロールできないで本人及び周囲の子ども達及び保護者や支援員が困る場合の自助・近助・共助・公助について考えてみたいと思います。まずは自助努力があると思います。小学校低学年の子どもですので、自分のことをなかなか客観視できないものです。キー刺激を見つけて。ナッジ理論で自分自身が気づくように働きかけることとそれに本人が気づくことが自助であると思います。次に他の子ども達がそそのかしたりしないようにすること、怒り爆発となるキー刺激を少なくしていくことが近助なのではないかと思います。学校や保護者への連携が共助となります。問題行動を起こす子どもへのカウンセラーによる指導や研修会などの開催で支援員が支援の仕方を学ぶ機会を増やすことが公助とかと思います。
近助力を高めることを私が主張するのは、問題行動等をマイナスと捉えるよりはこれからのポジティブな方向性へのエネルギーがあると考えることが大切と思うからです。ヴィゴツキーは最近接領域との考え方を提案しています。今の子どもではなくて、明日子どもが出来そうなことを提供してあげて、子ども達の成長を促すとの考え方です。問題行動等が頻発すると放課後児童クラブの運営なども悩んでしまうものです。悩みながらも解決手法は現場にしかありません。現在の中に明日につながる光り輝くものを見つけて、現状を変革していくことが必要となります。現在は過去の積み重ねでもあるので、現在の中に可能性を見つけるとは過去も光り輝かせることになると思います。問題行動をする子ども・子ども集団・周囲の子ども達・支援員・保護者の中に、より良い方向性につながる最近接領域を見つけていくことが必要です。とりあえずは一人でも良いから支援員の仲間を探し、協力してくれる子ども達・保護者・学校の教員用務員などを近所から探していって近助力を高めることが一番近道であると私は思います。
問題行動を起こす子どもに対して、「何度言って聞かせても同じことを来り返して困る」と思うことは多々あるものです。こうした場合、学びの4段階との考えを取り入れて欲しいと思います。ネガティブなことをポジティブなことに変容させるためには、ある程度繰り返してやることが大切です。学びの1段階は一応頭でわかることだそうです。2段階はわかったことをやってみることです。普通これでわかったと勘違いしてしまうことが多いようです。これはまだ理解できた段階ではなく、数多くこなして身体に覚えこませることが第3段階となります。最後に他人にも教えることが出来るようになるのが学びの4段階に到達したことになるとのことです。頭でわかる→やってみる→数をこなす→他人に教えられるとの発達段階があるとのことです。1回やってみて効果がないからすぐにやめると考えるのではなくて、繰り返し繰り返し粘り強く子どもの可能性を信じてチャレンジすることが私はアンガーマネージメントにおいても大切と思います。
V―4 ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワーク
放課後児童クラブや児童館ではケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワークの手法で健全育成を実施することが多いと思います。アンガーマネージメントでもケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワークの手法を活用することが必要だろ思います。怒りを発散させて問題行動をとってしまう子どもをとりあえずクールダウンさせたり、認知の歪みを取り除いたり、メタ認知が出来るように促すことも大切です。これらのケースワークは自助活動とも考えることができます。周囲の子ども達に働きかけたり、みんなとの遊びの和を作ったり、防犯防災の学びをしたりすればグループワークでこれは近助力を高めることになります。学校や地域の主任児童委員や保護者・自治会などと協力していけば共助活動であり、コミュニティワークとなります。社会全体としての方向性を自治体等が示すのはソーシャルワークとの考え方になります。アンガーマネージメントにおいても自助・近助・共助・公助及びケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・ソーシャルワークなどを取り入れて、関連性を持ちながら活動することが大切ではと私は考えています。

終わりに
今までの心理学は精神的な問題行動等の原因を見つけ、解決手法を探すことが基本であったように思う。しかしながら、現場で子ども達の相手をしていると、ネガティブなことに眼を向けるよりはポジティブなものを見つけてそれを発展させることが効果的であると感じて私は実践してきた。最近、ポジティブ心理学との心理学の考え方を放送大学院の臨床心理地域援助特論(21‘)で学んだ。ポジティブ心理学では、「幸せ=ウェルビーイング」を支えるものとして5つの柱となる要素をあげています。5つの柱は、それぞれの頭文字を並べて「PERMA(パーマ)」と呼ばれている。Positive Emotion:(ポジティブエモーション)ポジティブ感情Engagement:(エンゲージメント)没頭や没入Relationship:(リレーションシップ)豊かな人間関係Meaning:(ミーニング)人生の意味や意義Accomplishment:(アカンプリシュメント)達成、完遂、マスターだという。私は子ども達の中から何かをやりたいとのエネルギーを見つけポジティブな方向性にして没頭できる環境を創り、より発展させるために物的人的社会的資源を発掘し活動を活性化させ、その活動の意味を掘り下げながら、目標を達成することでウィルビーイング出来る方向性を子ども達と探し続けたいと思います。
支援員の発する言葉の中に「何をするの?」とか「何でやったの?」などが多いものです。子ども達をしっかりUnderstandしていると、低学年の男の子の多くは別に考えないで衝動的に行動していることが多いものです。危険なことをしようとする前にナッジ理論を使ってさせないようにしましょう。やらなかった場合に「偉いね」と褒めてあげましょう。やってしまったことを「何でやったの?」などと聞くのも下手なやり方です。まずは見逃した自分のことを反省し、落としどころを見つけるのが必要と思います。叱っても良いけれど最終的に褒めになるようにと思います。「何をするの?」「何でやったの?」はやめましょう。
私の住んでいる新潟市西区はネット等で検索してみたら、人口155408人で小学校が19あります。この中に放課後児童クラブ38・放課後等ディサービス19・児童館児童センター2・児童遊園1・自治会数315・公園愛護団体187・公園315となっています。私は自治会活動・公園愛護活動・児童館活動等の中で、地域の仲間・子どもたち・学生さんたち・放課後児童クラブ支援員・児童館職員行政関係者などと共に明るくきれいな環境作りを近所から始めてだんだんと拡大していきたいと考えています。コロナ過でもきれいな公園には大中小を問わずいろいろな人たちが遊びに来ています。放課後児童クラブや自治会・公園愛護団体等が互いに助け合って、よりきれいな街つくりをすることが、心豊かな子ども達に育つためにプラスになると私は信じています。
いつでも起こりうる病気・事故・災害・犯罪に備えて、いつも身心を鍛え・安全対策への自助努力に努め、おすそ分けやガーデニング・レクレーション等々で身近な近助力を高め、地域を歩くことで物的人的資源を発掘して共助力を地道に培い、病院・消防・警察・自衛隊・市町村等の公助と連携して、安全安心できれいな日本を創ろう。

 


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