綾波レイの作り方

赤木リツコ&伊吹マヤ


「ところで先輩。なんなんですか?今回のお題は?」
「いい質問ね、マヤ。世の中にはあんな実験動物をぜひ一家に一人という変態がごろごろいるのよ。そして資本主義社会では需要に対して供給が必要だわ」
「あの…ちょっとそれって…」
「今さらカマトトぶるんじゃないの。さ、材料を説明して」
「…はい」
 リツコに促されてマヤが抱えていた書類挟みを取り出す。
「まずはエヴァンゲリオン初号機を一つ」
「一つしかないけどね」
「エントリープラグ、及び補機一式」
「これは通常の作戦装備でかまわないわ」
「MAGIシステム一つ」
「これも一つしかないわね」
「最後に…」
「碇ユイ一人よ。これは骨も残さず使いきるし、ここは国連直属の施設だから国家権力も介入できないわ。気遣いは無用よ」
「やっぱり問題ありません?私はあんまり…」
「潔癖称はね、辛いわよ。汚れたときに解るわ」
「つまり先輩は汚れてるわけですね」
 リツコはうつむいたまま息を飲み、横目でマヤを睨む。キッと顔を上げ、ひとつ咳払いをする。
「次、レシピいくわよ」
「はい」
 マヤは書類を一枚めくる。
「まず碇ユイさんを初号機にエントリーさせます」
「さんを付ける必要は無いわ」
「えーと、次にシンクロ率を400%まで上げます」
「シンクロ率は感情の爆発を契機に最大値を得るわ。ここは罵詈雑言を浴びせて怒らせるのが常套手段ね」
「常套って…やったことがあるんですか?」
「母がね。昔のことよ」
「結果は?」
「大成功」
「そうですか…」
「さ、あなたがやるのよ」
 リツコがマイクをマヤに手渡す。マヤは反射的に一歩退く。
「わ、私がですかあ」
「そうよ。私の命令が聞けない?」
「いえ…えーとそれじゃあ…ばかー、あほー、まぬけー」
「そんなのじゃだめよ!こうするの!(以下通信品位規制法と関係なく自己規制)」
「あ、シンクロ率400%越えました」
 モニタには空になったエントリープラグが移される。
「完全に溶けてます。さすが先輩ですね」
「…素直に喜べないわね」
 マヤはさらに書類を一枚めくる。
「次にエヴァンゲリオン初号機の胸部装甲をはずします」
「コアをむき出しにするためね」
「次にサルベージの準備をします」
「MAGIを使ってエントリープラグ内に自我境界線を生成するのよ」
「でもこれではエントリープラグ内に再生されないんですよね」
「そうね。でもしばらくするとコアから3才のユイが生成されて出てくるわ。記憶は失っているけどね。これがレイよ」
 マヤはさらに書類をめくりながら尋ねる。
「でもこれで終わりじゃないですよね」
「エントリープラグに対してサルベージを試みればレイはどんどん出てくるわ。ただ最初の一体にしか魂は入っていないの。ガフの部屋の中は無尽蔵じゃないもの」
「でもそれじゃあ、魂が無いのはどうするんですか?」
「レイが死んだらその魂は残っているレイに乗り移るわ。予備として地下の水槽に飼っておけばいいのよ。それに実験動物に使うには丁度いいし、世の中には変態はいくらでもいるわ」
「…不潔」


綾波レイ(魂無し):価格応談
問い合わせはネルフ本部技術開発部技術一課、赤木リツコ博士まで


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Mar.,25,1996