3月17日(『正法眼蔵』「袈裟功徳」道元禅師の尊い教え。

道元禅師、『正法眼蔵』「袈裟功徳の巻」

予、在宋のそのかみ、長連牀に功夫せしとき、齊肩の隣単をみるに、開静のときごとに、袈裟をささげて頂上に安じ、合掌恭敬し、一偈を黙誦す。その偈にいはく。

 大哉解脱服(大なるかな解脱服)
 無相福田衣(無相なる福田の衣)
 披奉如来教(如来の教えをこうむり奉りて)
 廣度諸衆生(廣く諸々の衆生を度す)

ときに予、未曾見のおもひを生じ、歓喜みにあまり、感涙ひそかにおちて衣襟をひたす。(中略)もしいたづらに郷間にあらば、いかでかまさしく佛衣を相承著用せる僧寶に隣肩することをえん。悲喜ひとかたならず、感涙千萬行。(中略)

 ときにひそかに發願す、いかにしてかわれ不肖なりといふとも、佛法の嫡嗣となり、正法を正傳して、郷土の衆生をあはれむに、佛祖正傳の衣法を見聞せしめん。
(谷口清超先生著『正法眼蔵を読む』新草の巻・拾遺より)