8月13日(車中、同期飛行兵と紳士の論争に我が父を想う)
大東亜戦争、終戦の日を偲びて(4)
北海道内にて千歳へ移動の列車の中、乗り込んでいた民間の紳士と同期飛行兵との間に論争起こる。
飛行兵ーー我々はこれから最後の決戦の為に基地に赴くのである。
紳士ーーー戦争は終わりました。天皇陛下の仰せに従うのが日本臣民のつとめです。
飛行兵ーーあの終戦のお言葉は軟弱な側近どもの画策によるものなり、騙されるな。
紳士ーーーそんなことはありません、確かに天皇陛下のお言葉でありました。私たち日本
臣民は天皇陛下のお言葉に素直に従うのがつとめであります。
飛行兵ーー何を言うか、あの御放送はまやかしだ。天皇陛下の本当の大御心にては非ず。
ひ弱な民間の側近どもの画策せるものだ。我々は最後の決戦をする。
この論争を傍で聞きて我れ思えり。
この紳士の年齢・雰囲気は我が古里の父と相似たり。果たして我が父ならば、この紳士と同期飛行兵との論争、どちらに味方するならん。
即座に我れ思えり。我が父は紳士の論に賛成するならんと。されど我れ自身は同期飛行兵と同意志なり。愛国者のお父さん、さようなら。
