3月19日(我が子は “神殿” にあり)
我が子よ 汝はいずこにいるぞ 町の中か 山の中か 砂漠か 海の上か それとも土中の住家か 生活は一体どうしているのか 飯は食っているのか 車の中の生活か 都会の高速道路の下での ホームレスの生活か。
汝が生まれたとの 知らせを聞いたのは 山頂の修業城であった あれから幾星霜 汝はひとり独自の 道を歩み続けた 既に小学生の頃 汝は一人で ほぼ日本全国を歩き廻った 中学生では 北は北海道から 南は沖縄まで滞在して ひとり食べて来た また汝は高校1年1学期では 学年最高1番の成績であった そしてその夏休みが終わって 新学期の始まるとき 汝は高校退学を 申し出たのであった 父はそれを“佳し”とした。
“佳し”とした理由は その調度同じ年代に 大東亜戦争末期 己が命を捨てて 国に殉ぜんとの 心情にて 喜び勇んで 特攻訓練に励んでいた 自分があったからである 世の中の時勢は変われど 日本男児の生きる道 父と子は同じ血筋ぞ “行け、己の道を生きて行け、父は汝を信じるぞ” 汝は顔をほころばし 悦び勇んで家出した 汝の父と母は 汝の門出を祝い 駅に汝の旅立ちを見送った。汝は顔をほころばし 希望に燃えて出立した。
あの門出の時の 汝の顔は 今も忘れられない 限りなく 可愛い我が子よ あれから幾星霜 汝の便りは 汝の生き様は 数年に一度くらいか とぎれとぎれに 届いたが しかし 汝の生き様は 遠く高く 常識の理解を はるか超えていた。
今、父は汝の住居を たずねる 尋ねる 訪ねる。
飛行機に乗る 自分で操縦するのではない 旅客機に乗って行くのだ 大空は広い 地球は美しい 山を越え 海を越え 目指す空港に着陸す そこからバスに乗ること1時間 高速道路に乗り 国道を行き 更に山道を登る 嗚呼何と麗しき所ぞ 其処は何と 「神殿」との地名ではないか。汝は 神の宮なる 「神殿」 に居りたるか 汝は神に護られをりたり 唯感動す 「神殿」 に汝は居りたるか。
