時の狭間に

橘 由似 




「…おい、アリス。いいかげん起きろ……」
 男は傍らで身を丸めて寝息を立てている人物を見下ろしながら、呆れはてた声音で呼び掛けた。
 『アリス』と呼ばれた者は、その声に答えるかの様にわずかに意識を浮上させる。が、軽く寝返りを打っただけで、再び夢の中へと戻ってしまう。
「…ったく、寝汚い奴だな……」
 その男はやれやれといった様子で髪を掻き上げながら深い溜め息を漏らすと、片膝をついて、寝惚け続けているアリスの鼻先へと手を伸ばした。
 そして思い切り鼻を摘み上げる。
 暫くすると、アリスの眉間にしわが刻まれ、それが深くなる頃、流石の息苦しさに耐えかねたアリスは、唸るような呻き声を上げて飛び起きた。
「---だーぁッ、何すんのやッ!」
 ゼイゼイと息を上げて、眼前の男を睨みつける。
「こっちは、ようやっと寝付いたというのに……」
「…ほう? 横になった途端、いびきをかき始めた奴の台詞とは思えんな。寝過ぎでボケたのか?」
 男は膝の埃を払いながら、冷ややかな視線をアリスへと投げると、用は済んだとばかりに自分の荷物の方へと足を向けた。
 その後ろ姿に反論を試みようとしたアリスは、一瞬目を瞬かせて、
「何や火村? けったいな恰好しよって?」
 何故か見慣れない服を纏う火村に、アリスは首を傾げて問いかけた。そして自分が寝付く前の記憶を遡る。
「……それに、俺は朝の四時まで机の前に座っとったんやで? 何で君がここにおるんや?」
 微かに眉を寄せて考え込んでいるアリスの方へと歩を進めた火村は、ベッドの脇で渋面を作り身を寄せる。
「何か悪いモンでも拾い食いしたのか? バカな事言ってないで、さっさと仕度しろ。置いていくぞ」
「そないなモン喰っとらんわ! いちいちうるさいで。仕度しろ言うても、一体どこへ行くというんや? コスプレせなあかん所なら、行きとうないんやけどッ!」
 ぶつくさ文句をたれて噛みついてくるアリスに、火村は腕を組み、冷ややかな視線を投げた。
「…ったく、いつまでも寝惚けてるんじゃねぇよ。それに一緒に行くって言ったのは、お前の方なんだぜ。どうしてもここに留まりたいって言うのなら、俺は一向にかまわないんだがな」
 嫌味を言って背を向けた火村の事を軽く睨み返したアリスは、ふと冷静になって---目が覚めてきたともいう---辺りの様子に目をやった。
 どうも奇妙なのは火村の恰好ばかりではない。
 二人のいる部屋は、ホテルというより旅籠と評するに近く、アリスの寝ているベッドも、スプリングのきいた代物からおよそかけ離れた質素な作りだった。《ベッド》というより《牀》と表現するほうがふさわしい。
 そういえば火村の着ている衣装も、どことなく古代中国を連想させる。
 着物の袖を取ってしまった様な丈の長い上着に、幅広の帯を腰の位置で巻き付け、動きやすくする為か、ズボンの裾を長靴の中に挟み込んでいる。上着の下から覗くシャツの袖口には、革で出来たようなリストバンドと思しきものを巻いていた。
 そして仕度の仕上げとばかりに、自然な動作で荷物の間から長剣を手に取ると、慣れた手つきで腰に下げた。
 ---……何がいったい、どうなってるんや?
 アリスは得体の知れないものが、背筋を上っていく錯覚を味わっていた。
 確かに自分は寝る直前まで、机に向かってワープロを叩いていたハズだ。それもいつになく筆のノリが良くて、気が付いたら空が白み始めていて。話の区切りが一段落ついたのを切っ掛けにベッドに潜り込んだ……。
 それがどうして、目が覚めたらこんな訳の判らない状態になっているのだろう?
 暫し呆然としていたが、ふと何かを思いついたアリスは、手っ取り早い確認方法を試してみる。
「…って……」
 この場合、『痛くない』との答えが一番模範的だと相場が決まっているのだが、アリスの意に反して、抓られた頬は確かな痛みを訴えていた。
 ---…なんでやねん……。
 痛みのもたらす結果から言えば、まさしくここは現実世界というわけで……。
 もしアリスのデータベースから拾い上げるならば、『異世界へ飛ばされたのかな?』という事になるのだろうか。
 だが如何せん本業はミステリー作家である。SFの世界となると、多少の知識はあれど、この状況を打破する手立ては皆目見当がつかない。まさしくお手上げである。
「…お前なぁ……いつまでもだらだらしていないで、さっさとしねぇか。そんなに俺を怒らせたいのか?」
 火村の言葉に面を上げたアリスは、大きな溜め息をつくと、しぶしぶといった様子でベッドを抜け出し、身支度を始めるのだった。
 とにかくベッドの側に畳んである服に着替え---着方は身体が覚えていたので不自由はなかった---て、階下の食堂で粥とおかずという簡単な朝食を摂る。
 食事は不味くはなかったが、習慣の違いは食欲を減退させる。作ってくれた人には失礼と思いながら、申し訳程度に口をつけてアリスは食事を終えた。正面でそれを見ていた火村は何も言わない。
 食事をすませた火村は手早く荷物を纏めると、アリスを促すようにして宿を後にした。

◇◇◇

 宿を一歩出て目にした町並みは、更にアリスの気持ちを暗くさせるに十分であった。
 近代的な建造物は何一つ無く、寂れた風景が目の前に広がっている。建物の間から見える空は、嫌味なくらい青く高い。まるで山間の奥地に迷い込んでしまったかの様な錯覚を覚える。
「……ほんま、どこなんや、ここは……」
 小さく呟きながら辺りを見回してみても、自分が知り得るものが何ひとつ無い。どことなく奇妙な違和感を感じて、それがまた不安を誘う。
 ましてコンクリート・ジャングルに身を浸し、便利な日常に慣れてしまっているアリスには、文明から取り残されてしまったかの様に思えてならなかった。
 否応なく、自分が時空の歪みに落ちてしまったのだという事実を突きつけられた気がして、アリスは今日何度目かの溜め息をついた。
「アリス、荷物を見ててくれ」
 そんなアリスの心情を知ってか知らずか、火村は言いつけると宿の裏手へと姿を消した。ぽつんと一人残されたアリスは、ただ火村が消えた方角に目をやるしかない。
「…どないなるんやろ…これから……」
 己の不運を嘆いていても仕方ないと思うが、言葉にしてみると却って寂寥感が増す。いつもは脳天気と言われ続けているアリスだが、流石にこの状況は堪えた。取り乱していないのは、火村が側にいるおかげだろう。たとえ自分の知る彼ではなくても。
 勝手が判らないまま放っておかれた事に、些かの不安を感じ始めた頃、二頭の馬を連れた火村が戻ってきた。アリスはその姿にほっと肩の力を抜く。
 そんなアリスに火村は片方の手綱を渡すと、手早く荷物をくくりつけ、馬上に身を預けた。
「何しているアリス。行くぞ」
 そう促す火村を、アリスは困惑の表情で見上げる。
「俺、馬なんか乗れへん。こんなん渡されても……わぁ!」
 鼻面を擦り寄せてくる馬から逃げるように後退るアリスの事を、シニカルに口許を上げて火村が嗤う。
「大丈夫だ。そいつはおとなしいし、人によく慣れている。お前はただ座っているだけでいい。お前なんかより、余程優秀だぜ。…って、比べちゃあ、馬がかわいそうか」
「くぅ、いちいちムカつく言い方やな。なんやねん、こないなもの!」
 火村の言葉に触発されたアリスは、鐙に足を掛けて勢い良く乗り上げる。
「……それに、お前の身体が覚えているさ…」
 必死に馬と格闘しているアリスを端で見ていた火村は、呟くように言った。だがその言葉は、集中しているアリスの耳には届かない。
 やがて馬上の人となったアリスは、怖々と手綱を握り締めて火村を見やる。
「何か言うたか?」
「何でもねぇよ」
 一方火村は慣れた手つきで馬首を巡らすと、軽く脇腹を蹴った。それを合図に火村の馬は歩き出す。アリスを乗せた馬もまた、続くように歩きだした。
「うわぁぁ…」
 動いた瞬間、馬の背から振り落とされそうになったアリスは、バランスを崩して慌ててその首にしがみついた。
 勢いで鬣を強く引っ張られた馬の方は、その突然の行動にも動じる事なく、前に従いついて行く。火村の言うように、人を乗せることに慣れた動きである。
 なんとか体勢を立て直して前を向くと、火村が呆れ顔で振り返っているのが目に入った。羞恥に顔を赤くするも、アリスには言い返せる言葉が見つからない。
「ちゃんと前を向いてろよ。重心を真ん中にしておけば、そうそう落ちるもんじゃねぇし。まぁ、落ちたら置いていくだけだがな……」
「……」
 火村の辛口のアドバイスにも、大人げないと知りつつ無視を決め込んで、アリスはしっかりと手綱を握りしめる。前を行く火村の背中がなんとなく笑っている気がして、つい睨みつけるアリスだった。
 時間が経つにつれ馬に慣れ始めると、辺りの様子を眺める余裕も出てくる。山裾を進むこの道の前方は大きな林へと続き、振り替えれば町を囲んでいた牆(かべ)が全体を見渡せる程になっていた。
 もう一度視線を前に転じると、腰に下げた剣に目が留まる。火村の物と比べいささか細身ではあるが、重さから実用品であるのが伺えた。
 ---こないなモンが必要やなんて、結構ヤバイ所ちゃうんかいな……使い方もわからへんし…。
 アリスはグリップを確かめるように、剣の柄に手を伸ばした。意外に手にしっくり馴染む感触に、軽い戸惑いを覚える。だがそれ以上に強い安堵を感じて、これが自分の剣であることを感覚で納得していた。
 この日の行程は、昼食の為に休息を取った以外は、すべて馬上だった。
 次の町に着き宿に転がり込む頃には、アリスの身体のあちこちが悲鳴を上げていた。普段使わない筋肉を、長時間緊張にさらした結果である。
 旅装も解かないままアリスはベッドに倒れ込む。
「うう……尻がいてぇ…」
 俯せに寝転んで暫く唸っていたアリスだった。が、静かになったと思いきや、そのままの状態で寝入ってしまっている。
「少し初心者にはきつかったか。だが、こっちも悠長に構えている時間が無いんでね」
 火村の言葉は、既に眠りの住人になってしまっているアリスには聞こえはしまい。
 その姿に苦笑を浮かべ肩を竦めると、眠りには邪魔である剣を外し、ベッド脇の手が届く辺りへと置く。
「…早く戻ってこい……アリス…」
 不可思議な火村の呟きは、いつになく優しい響きを含んで、薄闇に沈んだ部屋に消えていった。
 次の日も、目覚めたアリスの状況は、何の変化も見られなかった。昨日と同じように一日が始まり終わってゆく。
 アリスがこちらに来て三日目の事。
 二人が街道わきの小屋を後にして、鬱蒼と茂る林の中を進んでいる時、それは起きた。

◇◇◇

「アリス! 走れッ!!!」
 突如、火村がアリスに向かって大声で叫んだ。そして自分も馬に鞭をあてようとした瞬間。
「そうはさせねぇ!」
 野太い声が辺りに響き、まるでそれを合図とするように、数人の男が木の陰から飛び出してきた。二人を取り囲む様に、どりじりと迫ってくるそれぞれの手には、禍々しい殺気を放つ得物のが握られている。
 二人は進むことも、引くことも出来ずに、足止めを余儀なくされた。
「な、なんやねん…こいつら!」
 抜き身の刃物から視線を外すことができずに、アリスは声を上擦らせながらその場を後退る。
 火村はアリスを庇うように立ちふさがると、腰の剣に手を掛けた。ゆっくりと鞘から引き抜き構える。
 「どうしても、俺達を行かせたくないみたいだな。まぁ、お前たちを雇った連中の見当はついちゃいるが……。失せろと言っても、聞かねぇだろうなぁ……」
 口角を上げ皮肉を込めて嗤うと、火村は男達を見据えた。そして、馬上では不利と見た火村は、視線を向けたまま、馬から下りて男達と対峙する。
「アリス、剣を抜け。この人数じゃ、お前を庇える余裕がねぇ」
「なぁ、…じょ…冗談! こんなもん使えへんわ!」
 アリスは驚愕に目を見開き叫んだ。火村はアリスの泣き言を、振り替えることなくにべもなく切り捨てる。
「無理でも、やってもらう。その剣はお前にしか扱えんし、動きはお前の身体が覚えているはずだ。俺が連中を切り崩す。隙を見つけて、そこから逃げろ!」
「無茶や! それに君を置いて逃げられるわけあらへん!」
 アリスには火村を置いて逃げる事など、出来るわけがない。ここで火村を見捨てたら自分が許せない。卑怯な人間になってしまう。
 いつでも火村とは対等の人間でいたいと、アリスは思っているのだから。
「ごちゃごちゃとうるせぇ! 逃げる算段はそのぐらいにしとけや。どうせ、ここで死ぬんだから、よッ!」
 怒声と共に男が火村に対して斬りかかってきた。他の者達もそれに倣い、得物を手に押し寄せてくる。
 火村は自分の馬を男達の方へ走らせる事によって、最初の一撃を躱した。
「悪ぃが、ここで殺られる訳にはいかねぇんだよ!」
 馬に蹴散らされた男達の中へと自ら踏み込んだ火村は、近くにいた男を難なく屠ると、返した剣先を脇から襲いかかってきた相手へと向けた。身を沈め、タイミングを外し、バランスを崩した所を、剣を水平に薙ぐ。
 瞬く間に人数を減らしたその腕前に、男達の中に軽い動揺が走った。むやみに突出するのを控え、火村との間合いを計りながら様子を窺う。
「何だ? 威勢がいいのは最初だけか?」
 そう火村は嗤うと、血糊を払って、改めて剣を構え直す。火村の眼光に射竦められた男達は、微動だに出来ないでいた。
 動けないでいるのは何も男達ばかりではない。アリスもまた、火村の剣技に見入っていた一人だった。
 ---…ほんまに強いんやなぁ。動きが早ぉて、追いつけへん……。
 自分が馬上にいることも忘れ、身を乗り出すように火村の動きを追っていたアリスである。意識は当然、火村へと向けられている。それが、仇になった。
 火村の目を掠めて、アリスの背後に回った男がいた。
 先に気付いたのはアリスの馬だった。気配を感じて嘶くと、後ろ脚を蹴り上げて、振りかぶってきた男の剣を弾き飛ばす。
 その咄嗟の動きについて行けず、アリスは馬の首にぶら下がるような形で放り出された。
「うわぁぁぁぁ……」
 アリスの叫び声が場の均衡を崩す。更に間が悪いことに、アリスの方にも何人か走っていくのが、火村の視線に捕らえられた。
「気をつけろ、アリス! そっちにも何人か廻ったッ!」
 敵の剣を受け止めながら火村は叫ぶ。側に移動しようにも、繰り出される剣の動きに止められてままならない。
 一方、格好悪く尻餅をついたアリスは、火村の声を聞き、慌てて剣に手を伸ばした。鞘から抜き放ち、辛うじて構える。火村よりは扱い易しとふんだ数人が、取り囲むようにアリスに迫った。
「アリスッ!」
 避けた瞬間に、左腕に摩擦感が走る。アリスは立ち上がり際、袖に視線を巡らすと、切れ口に朱が滲んでいた。その色を目にして初めて、焼けるような痛みを感じる。
 斬られたと知った時、アリスはパニックに陥った。
 冷静に判断する事が出来ず、剣を振り回す。構えも何もなく、ただ男達に向かって切り込んでいくだけだ。
「逃げるなぁ!」
 やたらと男達を追いかけ回し、やがてアリスは、肩で息をつき始めた。いたずらに体力を消耗し、剣を構えた右手の握力も失いつつある。
 一方、火村の方にも最早アリスを気遣う余裕は無くなっていた。あれから数人を叩きのめしたが、一人で戦うには限度がある。いくら剣の使い手とはいえ、長引く様であれば、自分もどうなるか知れようというものだ。
 一刻も早く、決着をつけねばならなかった。
 アリスは額に浮かんだ汗を拭おうと手を上げた。そこを好機と見た敵が、死角に入り込んで突進して来る。
「もらったぁッ!」
 余りの速さに、アリスには避ける余裕がない。ダメだと感じた瞬間、アリスの意識はブラックアウトした。
 振り返った火村の目の前で、アリスが膝をつく。だが構えた剣は、男の攻撃を見事に受け止めていた。勢いを巧く使って弾き返すと、よろけた男の腹へ剣を立てる。
 そして何事もなかったように立ち上がり、火村に顔を向けた。
「心配かけた様ですね、ヒムラ」
 言いながら襲いかかる敵を叩き伏せ、ヒムラへと駆け寄る。ヒムラも状況を把握した様で、ニヤリとシニカルな笑みを浮かべてアリスを迎えた。
「今回はえらく長かったじゃねぇか。同調(シンクロ)するのもいいが、時と場所を考えろ」
「肝に銘じます」
 そして互いに背を合わせ意識を集中させる。
「なかなか面白い人物でしたよ。物書きを生業にしてて」
「ほう? で、へんな言葉使いをする? まぁ、ここが片付いたら、じっくり聞かせて貰うさ」
「そうですね。さっさと終わらせましょうか」

◇◇◇

「うわぁ!」
 上掛けを飛ばすようにアリスはベッドから飛び起きた。鼓動が早鐘を打ち、大きく肩を揺らして息をつく。
「おいアリス、脅かすなよ。ガキじゃあるまいし、怖い夢でも見たのか?」
 声の方に脅えた顔を向け、それが自分の知る相手だと確認するや、アリスは深々と息を吐き出し、蒲団に顔を埋めた。
 火村は訝しげにそれを見ている。ある程度アリスが落ち着きを取り戻したと見えた頃、皮肉口調で話し掛けた。
「お前なぁ。人を呼び付けておいて、その態度はねぇだろう? さっさと起きて、ありがたく作ってやった飯を、喰ったらどうだ?」
 その言葉にゆるゆると顔を上げ、むっとしている火村の表情を見て漸く、アリスに笑みが戻る。
「死んだかと思ったんや。奇妙なトコにいて、剣を持ったおっちゃんに斬られて。絶対絶命やと、覚悟したんや……」
「……アリス先生はいつからファンタジー作家に鞍替えしたんだ? 寝言はいいから起きろ!」
 アリスの台詞に拍子抜けをした火村は、毒舌をはきながら寝室を出て行く。真摯な表情で青くなっているアリスを気遣ってやれば、ただの夢に脅えただけとは。あまりものバカらしさに頭痛がする。
 頭を押さえて去るその背に向かってアリスは叫んだ。
「なんやぁ? バカにしてからに! それに比べてあっちの火村は、めちゃ恰好良かったで! えらい違いやわ!」
 騒ぎ立てるアリスの言葉は、聞く人もなく、寝室に虚しく響くだけであった。


End/2001.10.06



『ロマンチックにリボンをかけて 2』(1999.05.02)用に書いて頂いた作品です。
殆ど無理矢理突発でお願いした、橘さんの初アリス☆
橘さんお得意のチャイニーズアクションパラレルで、もうウキャウキャですわvvv
「みどりばさんの目指す《アリス・ワールド》は難しい」と言いながらもナイスなアリスを書いて下さった橘さんに、アリスを布教したのは、間違いなくこの私---。
アリスに転んでくれれば
と目論んでいたのに、ものの見事に火村に転ばれてしまいました(i_i)
「かわいいアリスより格好いい火村を書いてしまった」と橘さんご自身が仰るように、えーえー確かに火村カッコいいですわ。---ちうか、格好良すぎッ!!
アリスファンの私としては、少ぉし口惜しい気分ざんす。
しかも、アッチの世界のアリスに「面白い」と言われてしまうアリスの立場って一体…(-_-;)

お閑になった頃にまたまたお願いする予定なんですが、その時は火村に向かっている愛をアリスにもチマッと分けてあげて下さいまへ☆
みどりばのお・ね・が・いvvv

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