【出戻り営業部編】バクダット〜バスラ〜クエートへ

平成23年7月2日


◆1976年12月9日
今日はバスラ港でのビジネスデイで、本来なら限られた人だけの筈が、何故か本人の家族、その友人、またその友人の友人と称する得体の知れぬ見物客?も一杯入場してきた。 入り口の受付は現地の方々が担当しているので、どうやって入場したかは不明だが、現地の報道によれば今日の入場者は4500人と報ぜられた。 そんな馬鹿な、どう見ても之はただの見物客でしかありえない、本当の商談で来ている方は100人もいないだろうと思う位。

◆1976年12月10日
見本市中止!
今日は一般の日で、10時開場となっていたが、岸壁には9時前から続々と群集が集まり始めていた。 我々はデッキから之を見ていて今日は大変な日になるからとお互いに警戒していたら、あまりの群集に9時半に開場した・・・とたんにタラップを 一斉に駆け上がって来て展示ブースを走り回る・・・見物ではなく、何か貰える物はないか無料サンプルはないかと鵜の目鷹の目で探し回っている様子で、我々も説明ではなく盗難防止で立っているだけ。 突然アナウンスがあって、入場者は即下船する事と繰り返しの放送、 一体何事かと聞いたら、押し寄せた群衆が暴徒化して統制が取れず現地警察より、見本市中止せよとの依頼があったそうだ。 船内の見物客は 警察が強制的に下船させたので、再びデッキで見たら、タラップは引き上げられて乗船できないようになっていて、群集が岸壁で何か大声で怒鳴っているのが聞こえた。 現地警察の説明では、押し寄せた群衆が我勝ちにタラップに集中して海に落ちる人もでて、制止した警察官と殴り合いになったりして、これ以上は危険だと判断して中止を要請したとの事。 開場から僅か1時間で中止、 岸壁の群集は昼頃までまだ大勢まっていたらしいが、二度とタラップを降ろす事はなかった。色々ひどい所もあったが、中止になったのはここだけだった。

開場前に群集が集まり始めた所


タラップを上げて中止になった直後の群集の様子です。


後で聞いた話では、前日のビジネスデーに来た一般人?が、船で集めたカタログや無料サンプルをみせたりして、多いにその成果?を吹聴したので、楽しみの少ない人々が、我々もその恩恵に預かろうと殺到したのが理由らしい。

◆1976年12月11日
バスラ出港
昨日はとんだドタバタで見本市中止になてしまったが、そのお蔭で展示物の整備がゆっくりと出来た。 今日は昼にバスラの港を出港、泥河の真中をゆっくりと下っていく、港を出たら両岸はすぐ「椰子の木」が連なりそれを過ぎると見渡す限りの平野で泥煉瓦作りの田舎屋が点在しているだけ。 船上から見ていると、水溜りの道路を
素足の子供達が走り回っている、住めば都だろうが、これで良いのだろうかと考えさせられた。 チグリス:ユーフラテス河を下ってバスラから約100キロ南のクエート港に向かっている。 河幅の大きさや 途中の椰子の林の状況は写真を見て下さい。




◆1976年12月12日
クエート入港
朝8時半クエート港の沖で接岸許可を待って10時に接岸。 船から見ると全くの平野 、いや砂漠と言ったほうが良い位。 岩手県位の面積にたったの50万人足らずの人口がこの海岸沿いの狭い場所に住んでいる。 統計ではクエートの国民所得は世界で一番となっているが、それは平均数値のなせる「騙し」で貧富の差の大きい事がちょっと見ただけで歴然たる物がある。 自動車の普及率は10人に一台と言われて街を走る車は 殆どが米国製のキャディラック! 日本車は目に入らなかった。クエートでの笑い話: 此処ではキャディラックが普通の車で、灰皿が一杯になったら 新車に買い換える・・・ウソか本当か不明だが、石油収入がごく一部の特権階級に吸い込まれているのは間違いない。 女性は全く姿を見せないし 酒類は一切禁止となり欧米風の娯楽は宗教違反で禁止されている、 一体何が娯楽なんだろうと不思議な位だ。
12月でも日中は暑いので、政府、経済界の人々とのパーティは夕方6時から始まったが、飲食態度も物静かだし、カタロク、無料サンプル類も欲しがらない、関心が無いのか、バスラとの差があまりにも大きいので気持悪い位だった。 9時過ぎ終了。まるでクラゲを抱いている様な感じて、応対は本当に疲れて10過ぎには寝てしまった

◆1976年12月13日
今日はビジネスデー。 ここの習慣にあわせて開場はあさ9時から12時で一旦中止して午後は4時から9時までの開場となった。 予想通り午前中は全くのパラパラの入場者であったが 夕方からはこの短時間に3500人が入場した。 私達の取引先もこの時間に来て頂いて手紙では表現しきれない色々な話が出来てお互いに満足。

写真の女性は取引先の社長夫人、 私の髭も大分「サマ」になって来ました。


◆1976年12月14日
一般公開日、午前中は昨日同様殆ど入場者無しだったが4時過ぎからはもう船内どこもかしこも満員の状況、今日の入場者は、カタログは? 無料サンプルは?と要求してくる状態で昨日までの入場者とは明らかに違っていて、率直に書けば貧富の差を証明している様な感じだった。 入場者は現地報道では6000人との事!
見物客が全員下船したのは10時近かった、それから皆でブースの点検整備開始したが我々のブースは被害は無かったが雑貨関係のブースでは大分盗難があった様子。

終わってから、仲間達とご苦労様と部屋に集まりウイスキーで乾杯したら見事に酔ってそのまま寝てしまった。12時過ぎ目が醒めてF氏から貴重なカップヌードルを貰って食べたが、これはもう最高に美味しかった!今でも忘れられないね。

現地新聞に掲載された写真の切り抜き。右端が私です。