【出戻り営業部編】巡航見本市の出張

ルーマニアにビックリ!
平成22年5月22日


◆11月7日 ガラチ(ルーマニア)
  このガラチの場所は黒海に流れるかの有名なドナウ河の河口より上流に150キロ位さかのぼった所にある港町で人口は25000人、これでもこの国では人口の多い町です。とにかく日本の面積の三分の二の所に約2500万人程度が住んでいるだけで、至る所原野ばかり。所々に大きな石油コンビナートが目立つ位。 第二次世界大戦の時ドイツ軍にこの石油産業が狙われて、ドイツの機甲師団の戦車軍に蹂躙された苦い経験があり、戦後はソ連に占領されて散々痛めつけられた歴史のある国だ。
この港町ガラチに前夜汽車で入ってガラチホテルに泊まった。朝飯の食堂は定食だけ!それも中国製のティーバッグにぬるい湯のはいったポットと硬いパンと小さなバターだけで先日コーヒーを出してくれた時にこれが当たり前と思っていたが、あれはこの国では「贅沢」な部類に入る事を理解した。食後現地の商社と商談をした後夕方有名なドナウ河を散策したがお天気が霧雨まじりの寒風(日本の位置では北海道稚内より北)のせいもあって、河は泥水の様に濁って「ドナウ河のさざなみ」なんて詩情は全くなしだった。7時にさくら丸が接岸したので早速乗船。ここでも軍人によるパスポート検査、検査ではなく半分いやがらせ!じゃないかと僻みたくなる位の非能率さ。肩からぶら下げている短機銃だけが異様にピカピカに輝いていたのが印象に残っていた。

◆11月8日 ガラチ
特別招待客日・・・・だが実態は!!
今日は11時から ルーマニア政府関係者、政治家、現地商工会役員等の歓迎パーティなので我々もその準備に朝から駆り出されて、11時から接待役として参加した。約500人ほど夫人や、なぜかその友人?も乗船されたが、パーティのテーブルに着いたら、仰天どころか目を疑う様な光景が展開された。
テーブルに出された色々な料理を我先にと食べられるのは当然だが、置いてあったジュースの缶、りんごやオレンジ等の果物、サイダー壜やビール壜を持参の袋に詰め込む、そして次には灰皿、栓抜き マッチ・・・およそ持てる物は全て綺麗にテーブルから消えて何も残らなかった。
信じられない様な光景であったが、さくら丸がアフリカに寄港した時も同じ現象があったと船のボーイさん達が話してくれたが、今回の招待客はいずれも現地では上流階級の筈なのに、この行動には唖然として言葉も無かった。我々がテーブルのそばに居るのに全く平気で、もって行く。一体彼等の神経はどうなってるのだろう?

◆11月9日 ガラチ
商談日の筈が・・
今日は現地貿易関係者と商談の日であったが、何故か乗船してきたのは一般の見物客だった。彼等は商談どころか各ブースを走り回ってカタログ集めに奔走しているだけ。一人で5袋分のカタログを詰め込んで帰る・・・後で聞いたら日本の上質の紙は現地の業者に高く売れるそうで、小遣い稼ぎに来て居る様なもの・・・お蔭で殆どのブースでカタログは午前中で無くなった。実演も開始すると黒山の人だかり、ルーマニアでは輸入禁止のジグザグ刺繍の実演を開始すると縫い終わらぬ内に、ひったくるようにして試縫いの布を持ち去るのでとうとう中止してしまった。この日は5000人ほど来たらしいが、終わってから各ブースで色々な物品が盗難に会い、明日の一般デーの対策協議をしたひどさだった。

◆11月10日 ガラチ
一般見物デー
朝から霧雨でどんよりした天気。こんな天候だから見物客も少ないだろうと思って、9時に甲板に出て見たらもう見物客の行列が出来ていた。開場は10時だがその前に見物客の数はふえるばかり。 此処に5枚の画像がありますからどんな風に混雑が増してきたか見てください。
@最初はこんなかんじだったが Aしだに人がふえはじめ
Bどんどんと船に近づいてくる Cも、もう限界っ!
D気づけば人、人、人!!!

始めはタラップの前方に黄色の警官用のテントがありましたが、最後は群集の中でもみくちゃにされて形がつぶれています。 警官がどなっても群集の力でじりじりと岸壁まで押されてもう少しで海に落ちる寸前。 さくら丸の担当者の判断で、一旦タラップを引き揚げて、乗船出来ないようにして、現地警察の応援を求めてやっと行列を作って乗船開始したが、それからはもう船内はめちゃくちゃの大騒動、この日だけで7600人が乗船したそうで、乗船開始後一時間ですべてのブースで実演中止とカタログ配布中止の指示がでた。それでも昨日の連中に聞いてきたのかしっつこくカタログをよこせと迫る連中が多くてその対応に苦労した。5時終了だが船内から全ての見物客が出て行ったのは6時過ぎで、今日は展示品の盗難防止に目を光らせていた様なものだった。 このような国で見本市やっても意味無いとの声が大きかった。

◆心が和んだルーマニアの少女の行動
唯一、心が和んだのは、昨日ジグザグ刺繍の実演をした時、中学生位の女の子が自分のハンカチをだしてこれに刺繍してくれと頼まれたので刺繍して渡したら今日その中学生が来て英語で有難うと言って小さなテーブルクロスをプレゼントしてくれた。嬉しかったね、泥棒:かっぱらい連中みたいな中にキラっと輝くこんな女性も居たんだ!

◆展示場総点検
朝9時から、船内の全てのブースの総点検開始する。 昨日の大群衆の押し合いへしあいでブースの頑丈な支柱が曲がっていたり、陳列棚がずれたりしていたのは、当然だったが、 酷かったのは、置いてあった(陳列)してあった物品で小型で手頃な物は殆どと言って良い程綺麗に無くなっていた事。 製品見本として置いてあった歯車や色見本、盗んでも全く市場価値の無いものまで見境無く行方不明! 中には実演用の電源コードまで持って行かれて、これからどうするか頭抱えたブースもあった。 
彼らに言わせれば「盗られる様な陳列する方が悪い」様です。

◆11月12日(金)曇り
ドナウ川を下る (ルーマニアよりブルガリアへ)
朝7時、ガラチの港を出港して黒海に向かう。このガラチがルーマニアのどの辺りにありますか?地図を添付しますので見てください。


港町工業都市ですから、多分黒海沿岸にあると思われて当然ですが、実はドナウ川の河口から約160−180キロ位上流にあるのです。さくら丸は岸壁からタグボートに引かれて離れるとその場で180度の方向転換をして船首を河口に向けました。この大型船が楽に旋回出来るんですから、川幅の大きさが想像できます。

ガラチの町は造船業も盛んで工場も沢山ありましたが、10分も下っていくと、もうそこには広大な原野が見渡す限り広がっていました。1944年末この付近でドイツ軍とソ連軍の戦車軍団が大激戦をやった・・・こんな大平原ですから戦車同志の戦いにはうってつけの場所?・・そんな事を連想していましたが、それから30年以上も経っているのに、この付近は全く変化なしの状態。 ドナウ川、日本では堤防がしっかりと構築されて洪水防止がされているんですが、この周辺はまったくそれらしき物はなく、さくら丸の起こした波がそのまま岸に押し寄せていました。 途中で見た唯一の民家は二軒並びの農家でした。

ゆっくりゆっくりと下ってやっと黒海の河口に着いたのは夕方の5時近く、約10時間かかりました。 皮肉な事にこの頃になると連日曇り空でおてんと様全く顔を見なかったんですが、やっと顔を見せてくれ暮れました。お蔭で夕日の美しかったこと!写真では充分にお伝え出来ぬのが残念です。

今夜は河口から約200キロ南のブルガリアのバルナ港に向かって航海です。黒海に入りますと、やはり海です、大分揺れが大きくなりました。