頼んできたのは生殖毒性部門のヤツで,当然ながらしもねた関係の仕事をやってるんですね。彼の今の仕事は,薬物のセックスホルモン様活性を調べることです。
簡単に言うと,ラットを去勢して,そこに薬物を投与し,去勢によって萎縮した生殖器がどんな風になるかを調べるわけです。去勢前と同じ状態に戻るようなら,その薬物にはセックスホルモン活性がある,というわけです。

今日のは雄。わたしはろくすっぽ情報も聞かずに解剖をはじめました。どうせ,前立腺だのなんだのという副生殖腺と,ステロイドホルモンの合成をしている副腎,セックスホルモン分泌を調節する器官である下垂体あたりがターゲットだろうと思ってますから遠慮なく開き始めるわけですね。ざくざくやりながら,ふと,頼んできた彼に尋ねました。
「秤量臓器は何?」
萎縮した臓器が元に戻るというのを評価するのに一番いい方法はその臓器の重さを測ることです。去勢されただけの動物の臓器重量と,薬物を投与した動物の臓器重量を比較して重くなったかどうかを調べるわけです。
この重さを測る臓器を秤量臓器というのですが,秤量するんですから,臓器の周りのよけいな脂とか,きれいに除去してあげなきゃいけません。もちろん臓器を切っちまうなんてのは論外です。
というわけで,わたしは彼に確認したわけです。きれいにとらなきゃいけない臓器はなに?って意味なんですね。

彼は秤の精度管理をしてたので背中を向けたまま,笑いを含んで答えました。
まずね,ちん○ん
あん?
聞き返したわたしの口調はかなりきついものだったらしく,彼はびっくりして振り向きました。
彼の表現にわたしがむっとしたものと思ったしく,あわてて言い直します。
「あ,すいません。陰茎亀頭です」
どういう表現をしようと,ソレはソレ。わたしはそんなことで怒っているわけではありませんでした。いや,怒ってるんではなく,呆然としていたのです。
答えないわたしに,彼はよけい焦って謝罪を繰り返します。
「ごめんて。変ないいかたしたよ,怒んないでくださいよ」

いいながら近づいてくる彼を,わたしはゆっくりと見上げました。
「何でそんなもん測るのよ?いつもやんないじゃん?」
「いや,最近は測るんだよ・・・どしたの?まさか・・・?」

そのまさかでした。まさかそんなもん必要ないと思っていたわたしは,皮膚と一緒にばっさりと。手ごたえあったのはわかってたのですが気にせずにばっさりと。
皮膚をむいてみてみると,モノの見事にいわゆる亀頭の先端からはさみが入って,もうソレは二本足のタコウインナ-状態。

もちろんわたしのミスです。悪いのはわたしです。わかってるけどさ。
でもね,そんな顔しなくてもいいでしょ。あわせて測れば大丈夫だって。
なんなんだよ,そのせりふは。

「ひどいことするよなぁ・・女って・・・」

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