金の誠、銀の誠 |
青い空、白い雲、心地良いそよ風。
今日はとてもいいお天気です。
菜々美ちゃんと誠くんは、一緒に湖へ出かけました。
「いい天気ね、誠ちゃん。」
ボートのへさきに座ってきれいな景色を眺められて、菜々美ちゃんはとてもごきげんです。
「ええ天気やな、菜々美ちゃん。ふう、はあ。」
ボートを漕がされている誠くんはとても大変そうです。
「今日はお弁当たくさん作ってきたの。あとで一緒に食べようね。」
菜々美ちゃんの膝の上にはおおきなバスケットが乗っかっています。
「うわあ、楽しみやなあ。菜々美ちゃんの作った料理おいしいもん。菜々美ちゃん、将来はきっとええお嫁さんになるで。」
「やだもう!誠ちゃんったらあ!」
菜々美ちゃんは真っ赤になりながら、思わず誠くんを思いきり突き飛ばしてしまいました。
「わっ、わっ、わわわわっ、わあぁぁ〜」
ドブン
なんというおやくそくでしょう。誠くんはそのまま勢いあまって湖の中に落ちてしまいました。
「誠ちゃん!?」
菜々美ちゃんは慌てて身を乗りだして自分も飛び込もうとしましたが、今着ている服は買ったばかりの新品だと言う事を思い出して、飛び込むのを止めました。
「誠ちゃん、たしか泳げたわよね・・・」
一分
二分
三分
菜々美ちゃんが「そろそろヤバイんじゃないかしら」と思い始めたその時です。誠くんの落ちた辺りから泡がブクブクとたくさん出てきたかと思いますと、中からきれいな女の人が姿を現わしました。
水面の上に立ち、驚く菜々美ちゃんを見下ろす女の人の両脇には、なんと誠くんが二人、寄り添うように立っています。
一人はセーラー服を着てうっとりしている誠くん。もう一人は白衣を着て目つきのあぶない誠くんです。
目を白黒させながら二人の誠くんを交互に見ている菜々美ちゃんに、女の人はこう言いました。
「私はこの湖の精霊ミーズ。貴方が突き落としたのはこちらの女装マニアで、自分の美しさにしか興味の無い誠ちゃんですか?それともこちらのメカフェチで、生身の女の子よりも人造人間の方が好きだという誠ちゃんですか?」
「違います!あたしが突き落としたのは、ふつうの誠ちゃんです。」
菜々美ちゃんが力いっぱいそう答えると、湖の精霊ミーズはにっこり微笑みました。
「あなたはとても正直ですね。ごほうびにこの二人の誠ちゃんはあなたに差し上げましょう。」
そう言い残すと、湖の精霊ミーズは二人の誠くんを残して再び湖の中に戻ってしまいました。
「ちょっとまってよ!?あたしの誠ちゃん返してーッ!!!」
しかし菜々美ちゃんがいくらさけんでも、湖の精霊ミーズは二度と姿を現わしませんでした。
こうして正直者の菜々美ちゃんは、女装マニアの誠くんとメカフェチの誠くんに囲まれて幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
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