バグロム帝国の聖日


 聖大河の彼方、ここバグロム帝国では、「地球」と言う異世界からやってきた一人の男が持ち込んだ「地球文化」が華麗に花開きつつあった。
「ご主人さまーっ。」
「おう、イフリータか。」
「ご主人さま、わたしチョコレート作りました。食べて下さい。」
 ここ、バグロム帝国においては、この日、2月14日は偉大なる帝王に臣民達が貢ぎ物を捧げる日と定められている。
「ふむ、アーモンドチョコか、どれ。」
 陣内は皿の上に盛られた一口大のチョコレートの山から、ひとかけ摘んで口に放り込む。
「いかがですか?ご主人さま?」
 魔神イフリータは心配そうに、主の顔を覗き込む。
「モグモグ。フン、駄目だ駄目だ。モグ、こんなもんではモグ、我が不肖の妹、菜々美が作った物にも遠く及ばんぞ、モグ。」
 菜々美のチョコは無論盗み食いしたものだ。
 言葉とは裏腹に陣内は次々にチョコを口に放り込んでいた。イフリータは嬉しそうににっこり笑みを浮かべる。
「しかしモグ、よくこの地でモグ、チョコの原料など手に入ったものだなモグモグ。」
「はい!ありあわせの材料でチョコの味を出してみました。」
「ほう?」
「お砂糖の代わりに蜂蜜使ったり、カカオの代わりにポクテ使ったり、」
「ふむふむ。」
 陣内は最後の一つを口に放り込む。
「それからアーモンド味はシアン化カリウムを使って出しました!」
「ぶバフーッ!!!」

*シアン化カリウム:別名、青酸カリ。猛毒。独特のアーモンド臭を発する。



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