ホモ?
Episode 1 ---新宿、カプセルホテルにて---
 
 1995年11月12日、朝。この日は、絵風蔵展のために前日から上京。11日、絵風蔵展を観て、酒宴を楽しんだ後は、「'95るるぶ東京」から新宿に近くて安いところを探して、この日はそこを宿にしました。新宿のカプセルホテルです。初めてのカプセルホテルで多少緊張していたのか、全然眠れずに朝まで過ごした僕は、早めにホテルを出ることにしました。その朝のことです。

 チェックアウトのためにエレベーターに乗って1階のフロントに向かっていました。すると、途中の階で扉が開いて一人、男性が乗ってきました。その人は、エレベーターに乗り込むと
 「どうだ、昨日は眠れたか?」
と、話しかけてきました。
 「いやぁ、全然眠れませんでした。(^^;」
と、答える僕。ここから会話が始まりました。
 「そうか。」
何故か納得しているおじさん。次に口を開いたのもその人のほうでした。
 「昨日は、…やったか?」
あまりに唐突な質問に戸惑う僕。内心ドギマギしているのだが、笑顔で答える。
 「いやぁ、やってませんよぉ。相手もいないし…。」
 「そうか、それじゃあ眠れんだろう。」
あまりにオヤジな会話(しかも初対面で)に唖然としていると、エレベーターが1階に着きそうな気配がありました。もうすぐこのオヤジな会話から解放されると、思っているその時、おじさんは最後の言葉を吐いたのです。
 「そうか、やってないかぁ。勿体ないなぁ。可愛い顔しているのに。」
そう言うと、その人の手が僕の頬に…伸びてきました。(ガ〜ン、ガ〜ン、ガ〜〜ン、って、ことは、やられるのは僕のほうか?)その瞬間、ドアが開きました。チェックアウトの手続きをするおじさん。

 呆然と立ち尽くす僕。

Episode 2 ---名古屋、地下鉄にて---
 
 1994年、冬。その日もそれまで何か月も続いた毎日のように、スーツにネクタイを締め、地下鉄にゆられながら会社に向かっていました。当時は、毎日毎日、2、3時間の睡眠時間だったせいもあり、電車に乗るとすぐに吊革に掴まって眠ってしまいました。金山から矢場町までといえば、3駅しかなく、眼が覚めれば矢場町に着いているはずでした。

金山〜東別院
 Z Z Z z z z ……。

東別院〜上前津
 何だか変な感じがして起きました。目の前に大きなガッチリした体格の男性が立っていました。その人と僕は、お互いに前を向き合っていました。ラッシュから1時間位早い時間のせいもあって、人と人との身体が、かろうじて触れなくても立っていられる位の混み具合でした。それなのに、その人は、他の人と比べると、僕に異様に近づいて、身体を引っ付けるように立っていました。しかし、それだけなら違和感は感じません。その目の前の彼の手の平は、何故か僕のものを支えるように添えられていたのです。その指は、その形に沿うように曲げられていました。
 僕は動揺いました。はたして、この人は痴漢なのだろうか?相手が女性だったら、はっきりそう思っただろう。手がまさぐられたら、きっとすぐそう思っただろう。僕は、この人がいったい何なのか解らないまま、睡眠不足のせいもあって、そのまま再び寝てしまいました。

上前津〜矢場町
 上前津駅に着くと、人の流れる気配に僕は眼を覚ましました。その流れに乗るように、前にいた人も降りていきました。安心した僕は、また眠りに入ります。が、眼を次に開けたときには、同じ人が背を向けて立っています。それにも関わらず、手の平は相変わらず僕のものに触れていました。こうなれば、どんな人でも同じ結論にたどり着くでしょう。「この人は痴漢だ。」そう結論が出ると、僕が降りる駅に着いてしまいました。
 ドアが開くと何事もなかったかのように会社に向かいました。世の中には痴漢にあったことがない女性も多いというのに……。

 こんなときに「ネタになる!」と喜んだ僕は異常でしょうか?


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Takeshi Ando <MXA01645@niftyserve.or.jp>
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