イエメン(北イエメン)・モカ

貨物船の前を、この地方特有の三角セールの漁船が走る。
港の中でも30〜40ノットの強風。



紅海最南部にある海峡が、「Bab el Mandeb ・マンデブ海峡」である。
日本語にすると「涙の門」という意味らしい。
ここは、紅海の幅が一気に狭くなる場所で、潮流や風が強く、古来より多くの船乗りが涙したといわれる有名な難所である。
1年に2回、季節風が交代する時期があるのだが、その時期を誤ると非常に難儀することになる。

ボヘミアンが通過した時は、そうした厳しい時期の真っ只中であった。
真上りのコースで、8時間ねばっても通過できない。
あげくの果てに逆進させられる始末である。
危険と判断して、モカに逃げ込むことにした。
もう1〜2週間早くエジプトを出発すれば、追い風でスイスイのはずだった。
たった61マイルを26時間もかかってしまった。

モカは、「モカ・コーヒー」の積出港だったと聞いたが、「風待ち」の港としても利用されていたようである。
税関職員は「ターバン」を頭に巻いてやって来た。
手続きが終わると、タバコとビールを要求された。
税関職員がタバコとビールを隠し持って帰るのだから不思議なところである。
もっとも、この辺りの国ではどこでも同じだが。

モカで天候の回復を待っていたが、一向に風が落ちる気配は無かった。
港内で30〜40ノットの風である。
テンダーで桟橋まで行くのが困難なほどであった。
自然の力は偉大である。
補機(エンジン)など全く役に立たない。
マンデブ海峡は季節を誤ると、ヨット・帆船にとっては今なお「涙の門」である。



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