放課後児童クラブや児童館におけるグループワーク      ・・・遊びだけではなくて働きと学びも加えて・・・
          平成28年10月6日
  児童健全育成指導士 田中 純一

1、放課後児童クラブや児童館にお けるグループワーク

 児童館・児童クラブの活動を大きく分けるとケースワークグループワークコミュニティーワークに分けることができる。それぞれ個別援助活動集団援助活動地域社会援助活動ということになる。(それらをまとめて社会福祉援助技術総論となるが、社会福祉援助総論の中にはソーシャルアクションなども含まれる)これらは互いに有機的な関連を持ちながら存在している。ケースワーク・グループワーク・コミュニティーワークは最初から関連性を意図的に考えて行う必要があるのである。

ポイント1 ケースワーク・グループワーク・コミュニティワークは相互関連が必要

2、グループワークの基本的な考え 方

放課後児童クラブや児童館の活動の3要素の中で、グループワークは活動の中心的な軸になっている。このグループワークのあり方について考えてみたい。グループワークというと子どもの遊び集団を援助したらグループワークだと思われがちであるが、それだけではグループワークとはいえないのである。

小関康之著 児童グループワーク(ミネルヴァ書房発行)では以下のように述べられている。
 人格的協同志向型の小集団は、明らかに人格的発達志向型集団として位置づけることができる。ドイッチ(M.Deuysch)は、このような小集団の特徴を次のようにあげている。

@   集団の仕事をしようという意欲が高く、メンバーが互いに責任を感じあうことが多い。

A   成員間の分掌と協力の度が大きい。

B   成員間のコミュニケーションがより効果的で、より多くの意見が出され、理解の度も受容の度も高い。

C   友情があつく、他人に対する尊敬も高い。

 一般にグループワークは、自然発生的集団や団体や施設が意図的に作った人為的集団を対象とするが、グループワークが、それぞれの団体や施設、あるいはサークル活動において努力しなければならないことは、対象となる集団が、人為的集団であれ自然発生的集団であれ、グループ活動の過程にあって、小集団=人格的協同集団的性格をもった集団へと変容することである。  たとえば自然発生的集団である子どもたちの遊び集団に対して、グループワーク的アプローチを試みても、子どもの自然発生的集団=遊び集団のもつ排他的性格を、人格的協同集団としての性格に変えながら、より多くの子どもがグループワークの対象となるように、試みがなされなければ、グループワークは、自然発生的集団の内的凝集性を高めるだけの効果しかなくなり、結果的には、排他性を高めること以外に効果を持たないことになる。すなわちグループワークは、自然発生的集団をも対象として扱うが、それはあくまでも自然発生的集団を、小集団の核として活用することであり、自然発生的集団を民主的・人格的な開かれて小集団へと変容発展させていく過程を整える援助をすることに、大きな役割を見いだすべきでる。

 またグループワークが対象とする人格的集団についても、同様なことが言えるわけで、集団成員がプログラム活動=グループ経験を通じて、対面的相互交流をはかりながら、自然発生的集団の性格にみなれる「われわれ感情」を育てていく過程が、グループワークの仕事になるのである。
 子どもを対象とするグループワークが、小集団をすすめていく際に留意したいことは、子どもがグループワークに参加する心理的動機には「他の子どもと一緒になにかをしたい」という欲求があることを理解することである。すなわち、子どもの他の子どもとの相互活動への方向づけは、他者志向性(他の子どもに対する関心)と課題志向性(なにかをしたいという欲求)との相互の機能的関連によって成立っているのである。
 青井和夫の小集団の定義は次に示すような条件をみたすものであるが,彼の示した小集団の定義は、グループワークが念頭のおいている人格志向型の集団の性格を端的に示すものとして評価することができよう。彼は小集団の「小」(small)は。人数のことではなく、「集団の性格」をあらわすこと言葉としてとらえている。たとえ20名をこえても、小集団としての三つの条件をみたせば、それは「小集団」であり、また、たとえ数名の集団でも、小集団としての性格をになわなければ「小集団」ではないとしている。すなわち小集団を示す三つの条件とは

@   対面的(face to face)な関係に あること
A   成員の間に相互作用(interraction) が行われていること
B   成員間の間に個人的な(as a individual person)印象や知覚を有す ること
 小集団とグループワークの関連について言えることは、グループワークの活動過程そのものが「小集団」の概念をつくりあげていく過程であり、グループワークが目指す集団過程が小集団の形成過程ということができるのである。

ポイント2 対面的関係・成員間の      相互作用・小集団

3、グループワークの留意点

 一般的にグループワークの原則はケースワークに準じているので以下社会福祉技術援助総論より抜粋した。

@受容の原則
 グループワーカーは、先ず一人ひとりを一個の人格を持った人として尊重することが基本原則である。小さな子どもといえども尊重するという基本的態度を身につければならない。ワーカーの好みや、個人的な好き嫌いもあろうが、グループの中の一人ひとりを理解していくことが受容につながる。

A個人差の尊重の原則
 グループワーカーは、自分と接する子ども一人ひとりが独自の存在であることを頭で判っていても、すべてのメンバーについて、つい平均的な姿を求めがちである。子どもの長所・短所、言葉使いや行動、そして発達段階(エリクソンのいう)に応じての知識だけで子ども理解をするのでなく、発達の差や、性格、考え方にも個人の違いがあることを十分に知り、個性を持つことを忘れてはならない。
(社会福祉援助技術総論P84)

B援助目的の明確化の原則
 グループワーカーは、子どもをなぜグループに参加させるのか、それはどんな内容のグループなのか、グループはその子どもの成長にどんな意味をもつのかを明らかにすれば、メンバーを容易に受け入れることができよう。
 メンバーの子どもも、それなりの意味がわかればワーカーに対しての信頼や喜びをもつことができる。(前掲P85)

C自己決定尊重の原則
 グループワーカーは、メンバーの自主的な人間としての成長を促す役目をするものであるから、グループの中で一人ひとりが自分の「責任」を果たすということを自覚させ、自立心を強めさせることが必要となる。
 また他のメンバーに対する尊重の気持ちを自覚させよう。そのため、ワーカーが自分の好きなプログラムを実施しようとしたり、自分の希望でグループを指導することは危険である。あくまでも子どもたちのメンバーが自分で選択し、自分で決定する雰囲気作りをしなければならない。自分たちで決定できることが、自主的なグループを育て、人間を育てていくことになるのであるから。

D成就の経験と喜びの原則
 自分たちの決めたことを達成した喜びは、他人が決めたことの達成より幾倍も大きいことは誰でも経験していよう。グループで協力し合うことは、達成までに多少時間がかかっても、社会的能力を高めていくことになり、その経験を積み重ねることで、個人もグループも成長していく。

Eメンバーの相互作用の効果の原則
 グループワーカーは、メンバー同士の働きによる影響が深まるように援助することが大切である。協力し、互いに自分の足りないところを補ったり、援助したりすることで相互作用が深まり、「わたし」から「わたしたち」感情が深まって自発的活動を促し、まとまりあるグループに発展していく。

F融通性のある運営と活動の原則
 グループワークの過程で、メンバーのニーズや変化に応じて融通性のあるグループであることが望ましい。グループワーカーはプログラム活動についても、メンバーの能力や発達に応じた変更や修正を行っての活動や運営ができるようにする。
(前掲P85〜86 グループワークの原則)

 以上のような原則をもとにグループワークは展開されることが多い。現実には、いろいろな場面で、ケースバイケースで実施されることになる。

 4、放課後児童クラブや児童館におけるグループワークの展開

 働き・学び・遊びについて
 働くとは生産活動をして、賃金もしくは消費のための諸物品を作ることであろう。主に大人が生きていくために、必要とされるものである。
 学ぶとは将来的に働くための知識や技能を身につけるための諸活動をすることとなる。
 遊ぶとは働く・学ぶ以外に、人間が、余暇を過ごしたり、楽しんだりするものである。
 働く・学ぶ・遊ぶの名詞形が働き・学び・遊びと一般的になっていると考えられる。
 大人になると、一般的に会社や工場などで働き、子どもは、社会に出る前に学校において、将来に備えて学び、児童館や地域や学校において遊び、ということになっているようだ。
 しかしながら、はたしてこうした専門的分野に特化していることが正しいであろうか。私は働き・学び・遊びを別々なものと考える仮説が間違いではないかと思うようになってきた。具体的に子どもや大人の諸活動を見ていると、働き・学び・遊びは複合的包括的なものであるからだ。
 学校で考えてみると、昔の教員は宿直があり、学校に泊まり、トイレ清掃や校庭の草取り、花壇の水やり、ガラス拭き、床磨き、ときには雪下ろしもしていました。今では学校内だけで、校長・教頭・教務主任・生活主任・クラス担当教諭・養護教諭・調理士・図書館司書・学校カウンセラー・調理員・技師(用務員)・トイレ清掃の委託業者などなどたくさんの職種に分かれています。結果的に、『私は教える人。あの人はトイレ清掃』といった感じで、自分の職場を自分できれいにしようとの意識が薄くなってきています。専門的なきれいな仕事はしたがるけれど、汚いことは拒絶する傾向があります。このことは親も一緒ですから、勤労的な体験は身分の低い人がやるとの意識が、日本の社会にも出始めています。このことで働きが子ども達の活動の中に入ってこなくなったのかもとも感じています。

働きと学びと遊びのバランスをとるための活動の手法について

 遊びへの特化・学びへの特化をやめて、活動を働きと学びと遊びの複合体にしていくことが大切と考えています。家庭が、働きを経験する場所でなくなってきているからです。たくさんの子どもがいる場所で、働きの要素を意識的に取り入れることが大切と思います。
 すべての諸活動に中には、働きと学びと遊びが包括されていると私は思います。その中で、働きの要素をもう一度見直す必要性がある時代にきたのではないでしょうか。
 児童館・児童遊園などの児童厚生施設や地域などから、働きを大切にした活動を再構築したいと考えるこの頃です。


5、活動の実際
 活動は活きた動きを捉え、その中に働き・学び・遊びとが包含されていると私は考えています。  例えば折り紙を作るグループワークで考えてみます。ロケット作りをします。折り紙の準備や配るプロセスが働きです。働くは人のために動くですから、一生懸命働き、折り紙を貰った人は「ありがとうございました。」と感謝することが必要となります。
 次にロケットを覚える過程です。これは学ぶ(=真似るが語源)ですから、静かに話をきちんと聴くことが必要となります。
 最後にロケットで遊んだり、大きく作ったり、小さくしたり工夫するのは遊ぶです。ここでは自由に遊ぶことが必要となります。  これらの活動は同時にグループワークでもあります。放課後児童クラブや児童館・保育園などでは異年齢が一緒に活動することがあります。意図的に仲間つくりを考えて活動すれば、それがグループワークとなります。折り紙のうまい子どもが苦手な子どもの手伝ってあげることはとても大切です。
 カードゲームなどもグループワーク的手法を使えば、楽しく遊べます。
 ツーパワー・スリーパワーで足して10になるととれる神経衰弱をやります。開く人・どれを開くか教える人・とったカードを持っている人など役割分担をしてやれば勝って楽しみは23倍になります。負けても悲しみは2分の1・3分の1になります。
 カプラなどは最初に一人ひとりで活動します。次第に無意図的に仲間で遊ぶようになります。上手い具合に支援員等が意図的な働きかけをすれば、より良いグループワーク活動になります。ケースワーク・グループワーク・コミュニティワークは一体のものとして考える必要があります。

 6、最後にリーダーの役割

 子どもにとって放課後児童クラブの支援員や児童館の職員は強いリーダーの役割と実際的にはなっています。そこでグループワーカーであるとともにリーダーに役割が事実としてあると思います。そこでリーダーとは何かを考えてみました。

leaderの役割

 リーダーの役割を横浜市緑の会の代表の方が

L listen(聴く)

E education(教育する)

A assist(支援する)

D discussion(討議する)

E evaluate(評価する)

R responsibility(責任をとる)

と表現されていた。面白いなあと思った。子どもの支援者もリーダーである。ある意味では年齢が違うのでかなりの影響力がある。

 子どもリーダーについて同じように考えてみた。

L Look(観察する)

E education  抽出する(良いもの        を抽出する)

A assist    支援する

D delightful(嬉しい・楽しい)

E evaluate   評価する

R repeat(繰り返す)

と考えたらぴったりとするかなあと思う。

 Lookとしたのは、子どもたちはまだ十分に言葉で表現できないことがあるから、しっかりとした観察が一番と思うからです。これはナイチンゲールから学んだことです。

 Educationは抽出するが語源です。子どもの良いものを抽出することが大切と思います。

 Assistは支援するです。

 Delightfulは嬉しいとか楽しいとの意味です。小学低学年の子どもにはDiscution(討論する)よりも実際に活動しながら、アシストすることが大切と感じたからです。

E evaluateすること(褒めたり叱ったりして評価すること)は大切です。褒めるだけではだめだし、叱るだけでも上手くいかない。褒めるために叱り、叱るために褒めてやる気を起こさせることが大切と思います。

R repeatにしたのはresponsibility(責任を取る)よりは繰り返し行うことで定着を図っていくことが子どもには必要と考えたからです。

活動を行う時にLookEducationAsisstDelightfulEvaluateRepeatと覚えておくのも手かなあと思いました。

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