児童館放課後児童クラブにおける表現活動スマホ版(平成28年9月21日)

子どもの表現遊びについて
児童健全育成指導士 田中純一

 表現遊びということ

 表現遊びとは、子どもが自己表現することを楽しめるようなあそびということです。ここではまず、表現ということを考えてみましょう。

 表現とは「オモテにアラワス」と書きます。表にあらわすためには、内なる何かがあるはずです。自分の内面にあるイメージの世界を具体的な形象として外にあらわすことが表現なのです。

 日本古典の「徒然草」にも「おぼしきことを言わぬは、げにぞ腹ふくるる心地しける」とありますが、自分の思っていることを外へ表現するということは、昔から変わらぬ人間の本質的な欲求であることが分かります。

 人間が成長発達し、社会のために役立つ人として働けるようになるためには、多くの知識や行動様式を知り、身につけていかなければなりません。特に情報化時代といわれる今日では過去の時代とはまるで比較にならぬほど多量の情報の獲得が必要となってきています。しかし、人間はたえず空気を吸ったり吐いたり呼吸して生きているように、他から知識を教えられ受け入れることと、自分の内なる思考や感情を外へ発揮することとが適度なバランスを保っていることが必要なのです。教えこまれ、やらされることばかりでは息が詰まって苦しくなるでしょうが、一方適度に自己を表現する場があり、外へ自分を発揮することができればストレスは解消され、心の安定が得られます。

 そのへんのことを充電(チャージ)と放電(ディスチャージ)にたとえる人もいますが、教えられたことを覚え、身につけていくことが子どもにとって必要なチャージであるならば、自由にあそんだり、思ったこと感じたことを外にむかって思いきり発散してみることは子どもにとって、生命の放電ともいうべき不可欠な活動なのです。

 

 上記の文章は玉川大学名誉教授岡田陽先生の言葉です。岡田先生は児童館・児童クラブこそ子どもの表現遊びに取り組むことが大切とおしゃっています。

 有明児童センターにも来てくださって直接子どもの表現遊びの指導をしてくださいました。有明児童センターの子どもの表現遊びは岡田先生の指導がきっかけで始まりました。うまい表現ではなく何よりも子ども自身が喜ぶ子どもにとってのディスチャージであるものにしたいと考えています。また表現遊びは音楽や踊り絵を描くことだけにあるのではなく、日常的なごっこ遊び、じゃんけん遊び、折り紙で遊ぼうなどの中にもあります。ある意味では生活全部がひとつの表現遊びであるとも考えられます。何か活動をやるときに必ず子どもの自己表現の場面が多くなるように意図的に考えておくことが大切と思います。

 選択肢を増やすこと

 始めから自由に自己表現できる子どもは多くないものです。そこで折り紙遊びという一つの素材を用意することにより、子ども達が自由にそれを変えていくことが大切となってきます。児童厚生員の仕事は子どもの選択肢を増やすことにもあると思います。

 表現遊びでもう一つ大事なことは他人の表現を馬鹿にする行為を許さないことです。価値観というのはそれぞれいろいろです。他人の作品をすぐに「下手」等ということは絶対に許してはいけません。表現遊びの基本前提です。またサポーターである職員が安易に特定の作品をほめることも考えものです。子どもはその真似に走ります。面白そうなのがあったら「これはすばらしい。」といったあとに他の作品も「これもすばらしい」「これもすごい」とみんなほめるように私はしています。いろいろなものをすばらしいということで子どもはそれぞれの価値観で自分の好きなものを選ぶようになっていきます。

 

 今回の児童劇巡回事業はこうした子どものための表現遊びの一環の中に位置付けられていると私は考えています。「トリオ・ザ・あぽたんの宝探し」はいくつかの児童劇の中で児童の日常的な表現遊びへと発展させるために一番良い演劇であったように私は思います。またマー坊役・エリちゃん役・カズ役の子どもも日常的にいる子どもたちです。またあんなケンカの光景もよくあるものです。その姿を子ども達はみることで自分の姿をみているように感じたように思います。その中でケンカをしてもやはり仲良しが一番ということを学んだように思います。演劇の中には自分を見つめなおすためのいくつかの要素があると思います。

 自分では直接的には体験できないこともごっこ遊びの中ではやることができ,子どもの表現遊びは本当に大切なことだと 思います。    

田中 純一

    平成15年7月31日



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