新米社員の社会人生活(6)
麻雀修行(クラブ)編&社長の相手  
平成20年2月12日



 麻雀修行(クラブ編)

松岡さんの自宅での基礎訓練・実習がどうやら一段落したら 「これからは実戦形式でやる」とのお言葉で訓練場所が自宅からクラブに変わった。変わったのは場所だけじゃなくて実戦形式とはなんと「賭け麻雀」の事であった。

変わったのは場所だけではない。自宅で教えていただいたときは懇切丁寧に仕組みや役の作り方をやさしく指導して頂いた松岡さんもクラブでは全くガラリと変わって鬼の松岡指導教官に変身されたのである。
飛行学校に例えるのならば単独飛行前の操縦訓練のようなものでちょっとでもヘマすれば 容赦なく後部座席の教官から棍棒で目から火が出る位殴られる!まあ、そんな感じで

・牌の積み方が遅い
・きちんと並べてない
・牌の切り方が遅い
・点数の勘定が出来ていない

などなど・・・散々どやされてこっちはもう目が廻ってそれこそ操縦桿から手が離れて錐揉み墜落寸前の状態!情け容赦なく賭け麻雀であるから負けた分はシェークスピアの「ベニスの商人」に出てくる金貸しシャイロックみたいな取立ての嵐。乏しい財布の中から嗚呼!100円札が消えていく・・・。

ありゃあ 本当にひどかった。三人ともボロ負けの連続。(さすがに肉1ポンドとまでは言われなかったが)それでも 松岡さんから「どや?今晩やるか?」と言われれば行きます、やりますと三人ともクラブに直行、始まる前は天下の大将軍、終わってみると すっからピン!時々松岡さんが手加減してくれて勝たしてくれる?のだがそれに気付かず俺も上手になったと鞍馬の大天狗!でも下手な鉄砲も数うちゃあ当るの諺とおり少しずつ場慣れしてきてなんとかお相手出来る所まで育てて頂いた。

鬼の松岡教官殿に 敬礼!かしらあ〜右!

 なんと社長のお相手を拝命!名誉なことだと思いきや・・・

給料日は3時に終業と決まっていてクラブの特別室では社長や重役の方々が時々麻雀を楽しんで居られると聞いていた。何月の給料日だったか忘れたが終業後帰り支度していた私に松岡さんが来て「H君、君 これからクラブで麻雀のお相手をしてくれないか」と話かけられた。てっきりいつもの3人組でクラブ直行!と思ったので、他の二人はもう退社したことを告げると松岡さんからは「いや、今日は君一人でよいんだ。」とのお返事。

はて、と思いつつ、「ところで、どなたのお相手をするんですか?」と聞くと

「ああ、君、社長だよ。 社長だ。」

「え? まさか 冗談でしょ?私が社長のお相手だなんて???」

「いいから 早く行ってお相手して来い!」

半分命令なので仕方なく特別室に行ったらほんとうに社長と二人の重役さんが待っておられた。入社以来 話もした事の無い、それこそ雲の上の方が三人もおられる!いくら私が強心臓の持ち主でも内心は震えがきてガタガタ。どうやってお相手したか全く記憶に残っていないがくたくたに疲れ果てた事だけ覚えている。

翌日松岡さんに結果報告した時になぜ私が呼ばれたんですかと聞いたら

「社長の麻雀はヘボ麻雀。それでいて負けず嫌い。だから社長より下手は居ないかと聞かれたんで君を指名したんだ。期待通り 負けてくれて社長殿はご機嫌。お蔭で俺は面子が立ったよ。有難う。」と言われた。

なるほど、そういわれてみるとたしかに社長の麻雀の腕前は下手だった。(社長、スミマセン)ヘボの私ですら気づくのだからほかの重役さんがご苦労される筈だ。でもそれ以来社長のお相手させられそうになるといち早く トンズラを決め込んで逃げるが百計、君子危うきに近寄らずでお相手はこの一回だけだった。

後日談
何年かたって社長が麻雀から足を洗った。いや手を洗って止めたという話を聞いた。ちまたの雀達のさえずりを聞くと社長自身その下手さに呆れて止められたらしい。あ〜あ そんな事ならもっと勝たせてあげれば良かったと思っても 後の祭り!でも一番ほっとしたのはいつもお相手していた重役の方々だったと思いますが、さて真相は闇の中〜♪



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