第11章  波乱の戴冠式


 空には太陽、地には人込み。風は涼しく、気温も良好。
 エランディア、リース王女の戴冠式がついに催された。
 それは国力を見せつけるという目的によってまさしく絢爛豪華な物となっていた。
荘厳なたたずまいの式場で行われる厳粛な式はすばらしいの一言。各国から招かれ
た国賓たちはそれぞれため息を洩らした。
 そしてそんな中にルーンやファトラの姿もあった。
「なかなか金がかかっておりますな。さぞかし無理をしているのでしょう」
 ファトラはルーンにだけ聞こえるよう小声で話す。
「戴冠式なのですから、このくらい当然です」
 ルーンも小さな声で答えた。
「しかしこれだけの規模ですと必要な費用は…いえ。やめておきましょう」
 ファトラは口ごもる。他国のことに干渉する必要はないだろう。
「どこかで癒着が起きているでしょうね」
 ルーンはこともなげに答えた。癒着どころかリースの暗殺計画が進んでいる。
「はあ…」
 ファトラは中央の台座に鎮座しているリースを見た。隣にはニーナが影のごとく
ついている。そして舞台端の方にはかろうじてルルシャの姿が見て取れる。どうや
らルルシャは見ているだけらしい。
 リースはけばけばしい衣裳を着せられ、人形のように座っており、ニーナは正装
して、いつものように事務的な表情をしていた。遠目に見ているので、知らない人
間にならば彼女たちは人形で通ってしまうだろう。
 リースの心は冷めていた。もう全てのことがどうでもいいように思える。このけ
ばけばしい衣裳も、複雑なお膳立ても、ニーナに教えられた長ったらしいスピーチ
もただ空しいだけだ。
 ルルシャが用意した王位。きっとリースに幸せになって欲しくてだろう。しかし
そんなものなくても充分幸せだった。いや、むしろ王位などがあっては幸せが失わ
れてしまう。王位などのせいでルルシャは暴走してしまった。リースにしてみれば
王位など全く興味のないものだ。彼女の望むものはルルシャやニーナとの幸せな生
活だった。
 リースは怒りを憶えた。しかし怒りの矛先はどこにも向けられない。ルルシャは
彼女に幸せになって欲しくてこのようなことをやったのだ。それを思うとリースの
心は痛んだ。お互いに意思の疎通ができないことに耐えがたい歯痒さを感じた。
 今すぐここから逃げ出したいという衝動に駆られる。逃げ出して元の生活に戻り
たい。しかしそう思っても、もうどうにもならない。王位を継承しないなんて言っ
たら、ルルシャは悲しむだろう。結局、このまま進むしかないのだ。
 彼女にとって、唯一の望みはファトラがルルシャと話し合いをさせてくれると言
ったことだ。どうなるか分からないが、リースはファトラに対してある程度の信頼
を寄せていた。

 祝辞やらなんやらが終わり、さらにはいろいろなプログラムが消化され、戴冠式
が終了すると、今度は街のメインストリートをパレードする。そうして着いたのが
街のイベントホールだ。ここではリースの即位を記念し、いろいろな行事が催され
る。結局の所、国力の見せつけが主な目的となっていた。
 イベントホールの構造はというと、天井はなく、コロシアムのような構造になっ
ている。しかし芝居などができるように座席はコロシアムの片側半分しかなく、そ
の反対側が舞台になっていた。舞台の後ろにはすぐに壁がある。
 リースは専用の観覧席に座り、隣にはニーナがつく。ルルシャは一応リースと一
緒にいた。クロノドールのことがあるので、一緒にいるようにニーナが頼んだのだ。
本当はルルシャはもう帰りたかった。
 そしてその周辺を衛兵が固めた。ファトラやルーンなどの国賓もそれぞれの席に
案内される。
 かくして即位記念の行事が開催された。前座は踊り子の舞い。可憐な衣裳を身に
纏った女神のごとき女性たちが美しい舞いを披露する。ちなみにアフラもその中に
入っていた。そして彼女が舞い全体を引っ張っている。
 しかしリースの憂鬱な心にはどんなすばらしい舞いも届かなかった。
 ファトラは舞いをそこそこ楽しんで観賞していた。美しい女性たちが踊る姿とい
うのはいい。シェーラや誠たちのことを心配するそぶりはない。
 ルーンは舞いを観賞していた。しかしシェーラたちのことが心配であまり楽しめ
なかった。

 かくして前座の舞いが終わり、メインイベントである所の武道大会へとプログラ
ムは進んだ。出場者は神官やら王室お抱えの挙闘士やら腕のたつ豪族やらだ。大会
にはシェーラとミーズも出場することになっていたが、シェーラはいないので代わ
りにアフラが出場することになった。彼女はすでに舞いに出ているので、本来は出
場しない予定だったのだ。
 試合はトーナメント制で8組がエントリーし、合計7試合が行われ、各組は2名
で構成されている。なぜこのようにするかというと、少ない時間数でよりたくさん
の人数を出場させるためだ。また見せ物的要素が極めて強い。武器に関しては神官
の方術、及び全ての武器の使用が禁じられている。従って本格的な戦いになること
は少ない。
「とうとうシェーラは戻ってこなかったわね」
 楽屋でミーズがため息混じりに言う。
「もうこうなった以上、仕方おまへんやろ」
 アフラは舞いの衣裳を脱ぎ、神官の服装に着替えながら答えた。

 武道大会舞台上では挨拶やらなんやらが終わり、試合が開始された。まず最初は
エランディア王室お抱えの挙闘士と他国の豪族との試合だ。
 司会による選手紹介の後、試合開始の合図が発せられた。

 第1試合が開始されてからしばらく立った頃。関係者以外立ち入り禁止の区域を
歩いている一人の男がいた。彼は若い女性を一人連れている。
「むう。困ったな。ファトラ王女の偽物がもう一人いたとは…。仕方ない。私が式
に出席している方の偽物を捕まえておくから、お前はそれからリース王女を暗殺し
ろ。分かったな?」
 クロノドールは女性に向かって振り向きながら言う。ニーナは戴冠式で忙しいの
で、作戦に参加することはできないのだ。
「ファトラ姫の偽物ってまだいたんですか?」
 実際には誠である所の女性は、疲れたような顔をして聞く。
「どうやらそうらしい。本物のファトラ王女はこちらの手中にあるし、そうとしか
考えられん。さすがというか、よくやるものだ」
「はあ…」
 誠は不思議に思った。自分のようにファトラの代わりをやっている人間が他にも
いるのだろうか。しかしそっくりの人間がそうすぐに見つかるとも思えない。ひょ
っとしたらファトラはなんらかの方法で逃げ出したか、解放されたかしたのではな
いだろうか。
「とにかく、お前がこちらの言う通りに動かないことにはファトラ王女の命はない
ものと思え。分かったな?」
「はあ…。で、具体的にはどういうふうにやるんですか?」
「うむ。とりあえず武器を渡そう。これだ」
「あ、はい」
 クロノドールは懐から鞘のついた短剣を取り出す。誠はそれを受け取った。
「刃には鴆毒が塗ってある。わずかにでも傷つけることができれば確実に殺すこと
ができる。ま、死にざまは酷いものになるのだがな」
「はあ…」
 誠はそれを懐にしまう。なんだか怖いものを受け取ってしまった。これでクロノ
ドールを斬りつけたら…などという思いが頭をよぎる。
「念のために言っておくが、くれぐれも変な気を起こさないように」
 誠の心の内を見透かしたがのごとく、クロノドールが注意する。
「あっ、はい…」
 誠はどきっとしながら返事をした。
「それとリース王女に接近する方法なのだが…」
 クロノドールは懐から紙を取り出す。広げてそれを読もうとした。
「計画ではリース王女周辺の警備が甘くしてあるはずなので…」
 刹那----突然物陰から人影が一つ飛び出した。赤い髪と美麗な姿態のその人影は
猫のようなすばしっこさでクロノドールに肉薄し、彼の手の中の計画書をかすめ取
ると、クロノドールから飛び退く。
「むっ、何奴!?」
 不意を突かれ、クロノドールは仰天しつつも人影を睨みやる。
「へへん。証拠は頂いたぜ!」
 赤い髪と褐色がかった肌。人影はシェーラ・シェーラだ。彼女はクロノドールか
ら奪い取った計画書を誇らしげに掲げている。
「シェ、シェーラ・シェーラさん!!」
 誠の顔に驚きと歓喜の色が表れる。
「おう、誠。助けに来てやったぜ!」
「むうー、お前は大神官…!?」
 クロノドールは顔を引きつらせている。
「あたいを知っていてくれてるなんて、光栄だね。お前の悪事、このシェーラ・シ
ェーラ様が全てお見通しでい!!」
 シェーラは誇らしげに胸を張って豪語する。
 物陰から菜々美とアレーレも出てきた。二人はシェーラの後ろにつく。
「誠ちゃん、大丈夫?」
「ああ、菜々美ちゃん、僕は無事やで」
 誠も走ってシェーラたちの方へついた。菜々美は感極まって誠に抱きつく。さす
がに誠も撥ね退けようとはせず、菜々美を抱いてやる。
 シェーラは菜々美を睨みつつも、アレーレに計画書を渡した。アレーレはそれに
素早く目を通す。
「これだけあれば充分ですね。完全な証拠です。あなたはもう破滅ですね」
 アレーレはクロノドールに向かって悪戯っぽくウインクした。
「なにをー。破滅などせん! それをこっちへ渡すのだ! 渡さねばこちらで捕ま
えているファトラ王女の命はないぞ!」
 クロノドールは額に血管を浮び上がらせながら叫ぶ。それを聞いて、シェーラは
ふふんと鼻を鳴らした。
「おやー。おかしいねえ。あんたが捕まえているのは偽物のファトラ王女じゃない
のかい?」
「ええい! うるさい! お前だって分かっておるはずだぞ!」
「いやー、何が何だか全然分かんないねえ。分かってるのはお前はもう破滅だって
ことだけだよ」
 シェーラは薄く笑いながら、クロノドールを蔑むように見る。
「あ、あの…。ちょっと…シェーラさん?」
 誠が冷や汗を流しながらシェーラを見た。
「おう、誠。その物分かりの悪い女に説明してやれ!」
 クロノドールに諭されて、誠はシェーラに説明しようとする。
「あの、シェーラさん。本物のファトラ姫はこの人がまだ捕まえているんですよ。
ですからその…あまり無茶なことをするとですね…」
「いやぁ。さっきおめえも聞いただろう。ファトラ王女が戴冠式に出席してるって。
それが本物だよ」
 シェーラは誠に向かって誇らしげに言う。
「え、ええぇっ!?」
 誠は驚愕の声をあげた。ひょっとしてファトラは一人で逃げてしまったのだろう
か。それはいくらなんでもずるい気がする。
「な、なんだとお!? 貴様、出任せを言うでない!」
 さすがのクロノドールも驚きを隠せないようだ。シェーラを差した指先が震えて
いる。
「へっ、詳しいことは後で説明してやるよ。さあ、宰相。大神官であるこのあたい
が証拠を掴んだ以上、言い逃れはできねえぜ。一緒に来てもらおうか」
「むううぅぅ…。おのれい。コシャクな小娘め!」
 クロノドールはそれだけ言うと、逃兎のごとく駆け出した。
「あっ! 待ちやがれ!」
 シェーラはクロノドールの後を追いかけて行く。誠と菜々美とアレーレもついて
行った。

 武道大会は第1試合が終わり、第2試合が開始されようとしていた。
「東側----エランディアよりザッハ・アーンドラ選手とメガロ・シャクム選手ーー
!! このお二人はエランディア、クロノドール宰相お抱えの戦士ですっ。先の王
室お抱えの挙闘士とは所属が異なっております」
 舞台に上がってきた二人の男を司会が紹介する。二人の男は確かに戦闘用のいで
たちではあるが、屈強な大男という訳ではない。眼光が鋭く、中肉中背の鍛え上げ
られた肉体をしていた。
「対しまして西側----ミーズ・ミシュタル選手と、アフラ・マーン選手ーー!! 
このお二人は大神官の方です。アフラ・マーン選手は同じく大神官のシェーラ・シ
ェーラ選手の代わりに出場致します」
 舞台にミーズとアフラが上がってくる。二人はシェーラたちのことが心配なため、
どことなくそわそわしていた。
 かくして試合開始の合図が発せられた。

 クロノドールはイベントホールの中に入って行き、観覧席の方へ行こうとする。
観覧席への入口を警備している兵士たちは彼の慌てぶりに驚くが、宰相なので止め
はしない。クロノドールは入口をすんなりと通ることができた。
「おい、こら、待てぇ!」
 それについでシェーラたちも入口の所へ来た。すると兵士たちがシェーラたちを
止めようとする。
「ここは関係者以外立ち入り禁止です!」
「あ、おい、あいつを捕まえるんだよ! あいつは犯罪者だ!」
「だめです! 何を言ってるんですか!?」
 シェーラが強行突破しようとするので、兵士たちは彼女を取り押えようとした。
「おい、離せ! 離せよ!」
「シェーラさん、ここはいったんルーン王女様の所に行った方がいいですよ」
「だめだ! そんなことしてたら、逃げられちまうよ!」
「ああん、もう。あいつ行っちゃったわよ!」
「侵入者だ! 侵入者が出たぞ!」
「何言ってやがんだよ!?」
 兵士が叫ぶがいなや、大量の兵士たちが新しく現れる。
 結局、シェーラたちは兵士たちと揉みあいになってしまった。 

 そうこうしている内に、クロノドールはニーナの所まで来た。彼女の隣にはリー
スもいる。ルルシャがクロノドールを睨んだ。
「お、おい、ニーナ。ちょっと来い」
「はい」
 ニーナはクロノドールの慌てぶりにも全く動じることなく、ルルシャに目配せす
ると、クロノドールについていく。リースは心配そうにそれを見送った。
 クロノドールはニーナと一緒に人気のない所まで来た。
「ニ、ニーナ。その…じ、実は計画書を大神官の一人に取られてしまった。ど、ど
うすればいい!?」
 クロノドールは息をせき切らせながら、やっとのことで声を絞り出す。ニーナは
それを聞いて、眉を少しばかり動かした。
「ケイカクショ? 何のことですか?」
 ニーナは何のことだか分からないというふうで聞き返す。
「だ、だから、暗殺計画の計画書だ!」
「は? 誰を暗殺するんです?」
「な…。リース王女だろうが!」
 クロノドールは周りに聞こえないように小声で話す。それを聞いて、ニーナは仰
天してみせた。
「ええっ!? リース王女を暗殺!? それは反逆罪ですよ!」
「な、何を…!? まさかお前…」
 クロノドールはニーナ以上に仰天し、肩をぶるぶると震わせている。
「話はこれで終わりですか。では、私は忙しいので、これで」
 ニーナは淡々と吐き捨てるように言い、顔を真っ青にさせているクロノドールに
背を向けると、リースの所に戻り始める。
「ぬうう…。く、くうぅ…。お前、裏切りおったな!!」
 怒りのあまり、クロノドールは口から泡を噴きながら絶叫する。声を聞かれない
ようにという配慮など、もはや微塵もない。
「はあ? 何のことだか全く見当がつきません。仮にもし私が何か知っていたとし
ても、計画書に私の名前なんか出てこないでしょ?」
 ニーナは振り向きながら答えた。実際、計画書にはニーナの名前は一ヵ所も出て
こないのだ。
「ぬ、くううぅ…。おのれえ…」
 クロノドールは怒りのあまりもう死にそうな状態になっている。
「おいこら、待てえ!」
 その時、シェーラの声が響いた。入口の兵士たちを強行突破してきたのだ。彼女
の後を兵士たちが追いかけてきている。
「ぬうぅ…。くそう。もはやこれまでか…。しかし私はただではやられんぞおっ!」
 断末魔のごとき叫びをあげると、クロノドールは再び走り始める。ニーナは反射
的に身構えた。しかしクロノドールはニーナがいるのとは別の方向へ走っていく。
「待てええぇぇっっ!!」
 その後をシェーラが追う。それに兵士が続いた。
 ニーナは拍子抜けした様子でそれらを見届けると、とりあえずリースの所に戻る
ことにした。

「くぅ…。あいつらやたらと強いわね…」
「なんかいんちきでもしてるんやおまへんか…?」
 ミーズは額の汗を拭きながら言う。アフラは立ち上がりながら答えた。
 試合はミーズたちの方が押され気味だった。方術を使えば楽勝であることは明ら
かだが、方術の使用は禁止されている。二人とも体術には自信があったが、相手は
どんなに攻撃されても平然としているのだ。それにやたらと力が強い。体術はそれ
ほどたいしたことないので、避けるのは簡単だが、当たってしまうとかなりのダメ
ージを受けた。
 相手の二人はアフラとミーズを威圧するような鋭い目つきで、こちらに近づいて
くる。訓練を受けているとはいえ、その様子には多少の畏怖を感じた。
「大神官を嘗めたらあきまへんどすえ!」
 アフラが男の一人に向かって駆け出す。が、それは途中で中断されることとなっ
た。一人の男が突然舞台に乱入してきたのだ。
「ザッハ、メガロ、非常事態だ! 計画が暴露した。ここから脱出する! 例の物
を発動させろ!!」
「な! あんさん、反則行為どすえ!」
 そんなアフラの抗議にも構わず、その男はザッハとメガロの方へ走っていく。
「承知」
 ザッハがつぶやくように答えた。メガロも同じような反応を示している。
「待てえ! クロノドール!」
 その時、舞台にシェーラも乱入してきた。追っ手の兵士も引き連れている。
「シェ、シェーラ! あんた一体今までどこに行っとったんどすか?」
「うるせえ! あいつを捕まえろ!」
 シェーラが絶叫する。ミーズとアフラは何が何だか分からず、うろたえてしまっ
た。
 シェーラの姿に舌打ちしたクロノドールは懐から何か取り出すと、それを宙に投
げる。それは火花と炸裂音をあげながら、宙へと上昇してゆき、破裂したかと思う
と、まばゆい閃光を放つ。
「まさかこのようなことになるとはな。ニーナの奴を信用した私がバカだったとい
う訳か…。しかし私は無様に負けたりはしない。そう…少なくとも私を裏切った連
中だけは始末する。その後はここを脱出しよう」
 ザッハとメガロを背景に、クロノドールは苦々しげに語る。しかし彼のその容姿
は徐々に変化し始めていた。それはザッハとメガロも同じだった。彼らは人から人
でないものに変化し始めているのだ。
 目が血走り、腕には血管が浮き出てくる。彼らはがっくりと床に膝をついた。し
かし変化は留まることなく続いている。服が引き裂け、爪が剥がれ落ちた。血がし
たたり、肉片がびちゃびちゃと床に落ちる。
「うっ…」
 その異様なさまに、誰ともなく呻き声をあげる。シェーラも、兵士たちも、ただ
それを見ていることしかできなくなってしまった。アフラは吐き気を覚えたらしく、
床にうずくまっている。会場全体がしんと静まりかえった。
 その時になってようやく到着した誠と菜々美とアレーレはその異形のものを見た
瞬間、硬直してしまった。
「う、うるるおぉ…」
 クロノドールが…以前はクロノドールだったものが咆哮をあげる。その姿は人間
のものではなく、獣のものになっていた。後ろの二人も同じような姿になっている。
いわゆる人狼。ワーウルフだ。
「な、なんだあっ!?」
 シェーラが困惑の声をあげる。その疑問はそこにいる誰もが持っているものだろ
う。その光景はあまりにも信じがたいものなのだ。
「ふふ…。驚いたか…。これこそ先エルハザード文明の力。人間の肉体その物を兵
器とする幻の技術。この前遺跡から発見されたばかりのものだ。まあ、あの伝説の
鬼神に較べれば数段下ではあるが、それでもお前たちを倒すことなど造作もない」
 その生物は声だけはクロノドールのままだ。それは威嚇するように腕を振るって
みせた。
「へん。何をするのかと思えばそんなことかい。こちとら伝説の鬼神とも戦ったこ
とがあるんでい! そんなもん持ち出してきたって、結果は同じさ!」
 シェーラは血気盛んな調子でまくしたてる。ミーズはあえて、でも負けたでしょ
うとは言わないことにした。
「そうか…。それなら試してみるがいい。お前たちは知っているはずだぞ。私は銃
で撃たれても死なないことを! 死をもって自らの愚かさを知れ!」
 クロノドールはそう言いながら、シェーラたちの方へ飛びかかってきた。ザッハ
とメガロも一緒に飛びかかってくる。
「ちっ!」
 シェーラは舌打ちしながらこれをかわす。ミーズとアフラも飛びのいてよけた。
 血の気の多い兵がワーウルフに攻撃を仕掛けるが、逆にやられてしまう。重傷を
負った兵が床に転がり、そのあたりが血の海になった。
 会場はすでに大混乱になっていた。国賓たちは我先にと逃げ始め、兵士たちの中
にも怯んで逃げようとする者がいる。中には鬼神の祟りだなどと叫ぶ者もいた。
「ミーズの姉貴、アフラ、手を貸してくれ!」
「言われなくても、貸しますおす」
「当然よ!」
 ミーズとアフラがワーウルフに向かって身構える。しかしその時になって、自分
たちがランプをつけていないことにようやく気づいた。武道大会では方術の使用が
禁止されているため、外しておいたのだ。
「ちょ、ちょっとうちランプを取ってくるさかい、待ってておくれやす」
「あたしも取ってくるわ」
「お、おい!」
 シェーラの抗議は無視して、ミーズとアフラはそそくさと控え室の方へ戻ってい
く。やむなくシェーラは一人で戦うことにした。
「えい、くそ! 来やがれ!」
 ランプを起動しながらシェーラが叫ぶ。
「うるるおぉっ!」
 ワーウルフがシェーラめがけて、強靱な腕を振り下ろす。シェーラはこれを受け
ることはせず、身をひるがえしてよけた。空振りした腕はそのまま勢いを失うこと
なく床に激突し、重厚な敷石が豪音と共に真っ二つに割れる。
「ああー、ま、誠ちゃん。とりあえず私たちは避難してましょ」
「う。うん。そうやね…」
 誠と菜々美は混乱をさけて、とりあえず安全な場所へ行くことにした。
 シェーラの方は3体のワーウルフを相手に一人で戦っているため、防戦一方の状
態だった。兵士たちはすでにびびってしまい、動きがとれないでいる。しかし武道
大会の出場選手たちが加勢してきてくれた。
 が、状況はなかなか好転しない。かえって犠牲者が増えるだけというような気も
した。
「誠様、借りますよ」
「えっ?」
 不意に、アレーレが誠の懐の中に手を入れた。と、さっきクロノドールが誠に渡
した短剣を取り出す。アレーレは剣を鞘から抜き放った。
「ア、アレーレ。何をするつもりなんや?」
「そうよ。危ないわよ!」
 びっくりした誠と菜々美がアレーレを諭す。しかしアレーレはにっこりと微笑ん
だ。
「大丈夫ですよ。私も剣術の心得はあります。私もお姉様たちと一緒に戦いたいん
です」
 それだけ言うと、アレーレは舞台の方へと走っていった。舞台周辺では派手な戦
いの真っ最中だ。彼女はその中へと身を躍らせる。
 アレーレは小柄な体躯を器用に操り、ワーウルフに接近すると、一回だけ斬りつ
けて離脱する。一撃離脱の戦法だ。ワーウルフの腕に裂傷が走った。
 剣に塗られた毒は強力なものだ。しかしワーウルフはたいしたダメージは受けな
い。おそらく強力な解毒能力があるのだろう。
「アレーレって結構凄いのね」
 誠と一緒に物陰に隠れた菜々美が感心した様子で言う。
「うん。でも…」
「でも…」
 誠がつぶやくようにいう。菜々美は誠の顔を覗き込んだ。
「僕たちだけ戦わないのって、なんかなあ…」
「で、でもしょうがないじゃない。私たちは戦闘訓練なんか受けてないんだから」
 さすがに菜々美も辛そうな表情で弁解する。
「うん…。そうやけど…」
 戦っているアレーレたちを見ながら、誠はうかない顔をしていた。

             ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 ミーズとアフラはランプを取るために控え室の方へと急いでいた。
「早く。早くしないと…」
「そんなこと分かっております」
 通路は逃げ惑う人やら野次馬やらでごったがえしているため、なかなか先へ進め
ない。ミーズたちは焦った。
 と、不意に前方に見慣れた人影が現れる。
「ミーズさん、アフラさん、ランプを取ってきました!」
「まあ、藤沢様! ありがとうございます」
 藤沢がミーズとアフラにそれぞれのランプを手渡す。二人はそれを素早く装着し
た。
「さあ、早く行きましょう!」
「はい!」
「急ぎましょ!」
 三人は舞台の方へと駆けていった。

             ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 クロノドールがワーウルフへと変化し、会場が大混乱になった時。
「ファトラ、これは一体どういうことです?」
 ルーンが顔面蒼白になりながら、ファトラに聞く。
「わらわにも分かりませんよ。しかしどうやらクロノドールの悪事がばれたようで
すな。シェーラたちの仕業でしょう。誠もいるようですし、この事態さえなんとか
できれば、後はなんとか…」
 さすがのファトラも青くなりながら答える。
「と、とりあえずここから逃げましょう。危険です」
「は…。し、しかし…」
 ファトラはリースのことが心配だった。今、この状態で襲われればひとたまりも
ないだろう。
「とにかくいったん逃げましょう! ここは大神官の方たちに任せるのです!」
 ルーンはファトラの手を取り、一緒に逃げようとする。しかしファトラはその手
を振り払った。
「すみません、姉上。わらわはちょっと行ってきます」
「ファ、ファトラ!」
 ルーンは驚いて、ファトラの顔を凝視する。
「すみません!」
 それだけ言うと、ファトラは疾風のごとく去っていった。
「ファトラ…」
 ルーンは仕方なく、自分だけで逃げることにした。

             ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 ニーナがリースの所に帰ると、ほとんどすぐにクロノドールが舞台に現れ、ワー
ウルフと化した。
「ちょ、ちょっと、何あれ?」
 さすがのルルシャも驚いたふうで、ワーウルフを指差しながら言う。
「どうやら銃で死ななかった原因はあれのようですね…」
 リースに聞こえないようにしながら、ニーナは信じられないほど冷静な口調で答
える。その脇ではリースがそれまでの様子をじっと凝視していた。
 口許がわずかに震え、声を出すこともせず、惚けたかのように戦いの様子をじっ
と観察している。彼女の目だけがせわしく動き回る。
「とにかく、ここはいったん逃げましょう。危険です。さ、リース様!」
「…………」
 ニーナは立ち上がりながら、リースに声をかける。しかしリースは反応しない。
「リース様! リース様!!」
「あ、はいっ!」
 ニーナがリースの肩を揺すりながら大声で呼ぶと、リースはやっと反応を示し、
弾かれるように立ち上がった。しかしそれからどうすればいいのか分からず、再び
動作を停止する。
「え、えーと…あのー…」
「逃げますよ!」
 ニーナはいらいらしながらも、リースの手を引こうとする。
「あ、はいっ!」
 リースはニーナに連れられて、ようやく歩きだそうとした。
 その刹那----
「うるるがあぁ!」
 ワーウルフの内の一体がリースたちのいる観覧席に向かって突進してきた。その
強力無比な腕が石でできた手すりを豪音と共にいともたやすく薙ぐ。
「きゃああああぁぁっ!!」
 恐怖にかられたリースは無理に体をひねり、バランスを崩して倒れそうになった。
 今度はワーウルフは反対の腕を振り上げると、それをリースに向かって振り下ろ
した。鋭い鈎爪が彼女の肉をえぐろうと肉薄する。
 が、その前にルルシャがほとんど体当たりするようにしながら、リースを突き飛
ばす。体躯同士のぶつかる鈍い音がし、二人はワーウルフの腕の届かない所にまで
撥ね飛ばされた。
 その直後、それまでリースの座っていた席が床もろとも瓦礫の山と化し、破片が
飛び散る。
「ルルシャ様! リース様!」
 腕で顔面を保護しながら飛び退ったニーナは二人の名を呼ぶ。ルルシャはリース
に覆い被さるようにして倒れていた。
 ワーウルフは再び攻撃を仕掛けるべく腕を振り上げる。が、
「あんさんの相手はうちどす!」
 声と共にかまいたち状の風が舞い、ワーウルフの背中を斬りつける。声のした方
では、アフラが身構えていた。
 ワーウルフは仕方なく、攻撃目標を変更する。
「だ、大丈夫…リースちゃん?」
 ルルシャが咳き込みながら聞く。ぶつかった時のショックで肺が圧迫されたのだ。
「う…うん…」
 頭を床に打ちつけてしまい、多少くらくらしながらもリースは答えた。
「じゃ、早く立ち上がって」
「あ、はい」
「さ、早く逃げましょう!」
 ルルシャはリースを立ち上がらせてやると、彼女の手を引いて逃げ始める。
「さ、こちらへ!」
 ニーナが二人を手招きし、観覧席を出ようとしたその時----
「うがああぁぁっ!!」
「ぐふうっ!」
 ワーウルフによってアフラが撥ね飛ばされる。彼女の体は敷石の上を数回バウン
ドし、壁にぶつかって停止した。彼女の体は敷石の上に無様に投げ出される。
「う…ぅぇぇええ…」
 仰向けに倒れているアフラは腹部を強打されたせいで胃の中のものを吐き出しな
がらも、やっとのことで顔を持ち上げ、ワーウルフの方を見る。
 ワーウルフはアフラがしばらくは動けそうにないことを確認すると、リースたち
の方に向き直った。そしてリースに狙いを定めると、彼女に向かって突進して行く。
「うおおぁぁっ!!」
「…ぃ…に…逃げ……ぇゃ…ぅぁ…!」
 アフラは声にならない声を出し、リースたちに警告する。その声は届かなかった
ようだが、ワーウルフの唸り声で襲われそうなことには気づいた。しかし気づいた
所でどうにかなるようなものではない。
「きゃああああぁぁぁっっ!!」
 誰だか分からないが、女の悲鳴がこだまし、ワーウルフがそこへ突っ込む。
「…ぇぇ…せいっ!」
 アフラは地面にはいつくばりならがも方術を発動させた。狙いは特に特定してい
ない。とにかくワーウルフのいるあたりに撃ち込んで、攻撃を外させるのが目的だ。
 バランスを崩したワーウルフの攻撃は逸れ、石を打ち砕く。そこにいたリース、
ルルシャ、ニーナの三人は強烈な竜巻によって吹き飛ばされた。
「う…い…痛い…」
 したたかに打ち付けた腰をさすりながらも、リースは何とか立ち上がる。そこは
元立っていた場所からは10メートル程離れていた。ワーウルフの姿が見えたので、
反射的に物陰に隠れる。
「あいたたた…あ! リースちゃん! どこ!?」
 ルルシャは反対側に飛ばされていた。リースを探したいが、すぐそこにワーウル
フがいる。残念ながら、隠れているしかない。
 ワーウルフはリースたちを探してあちこち見回す。
「よくもアフラをやってくれたわね!」
 ミーズがワーウルフに向かって攻撃する。ワーウルフはリースたちを探すのは中
断して、再び戦闘に入った。
「ルルシャ、大丈夫?」
「あ、ああ。私は大丈夫だけど、リースちゃんがいない」
 ルルシャの所に、頭を低くしながらニーナが来た。
「危険だからとりあえず逃げた方がいいよ。リースちゃんも一人で逃げられるから」
 ニーナの提案に、ルルシャはとんでもないという顔をした。
「そんな! 置いていける訳ないじゃない!」
「でも今は危険すぎるってば! ちょっと来なさい!」
「あっ、ちょっと、放しなさい!」
 ニーナはルルシャの腕を引っ張って安全な所まで避難する。
「ちょっと! 放してよ! 私はリースちゃんを探すんだから!」
 ルルシャが行ってしまわないように、ニーナはしっかりと彼女の腕を握っている。
ルルシャはニーナの手を振り払おうと暴れていた。
「無茶だって! あの子もきっと逃げてるよ!」
「でも…!」
「あの子を信じなさい! きっと大丈夫よ」
「でも…」
 ルルシャは反論することができず、黙ってしまう。確かにリースももう何でも自
分でできる年齢だ。それにリースのことを信じていないという訳でもない。しかし
ルルシャはどうにもリースのことが心配でならなかった。ひょっとして崩れ落ちた
壁の陰で泣いているのではないかと思うと、いてもたってもいられなくなり、すぐ
にでも行ってやりたくなる。ルルシャはどうすることもできず、地団太踏んだ。

 大神官や戦士やらが戦っている様子を誠と菜々美は物陰から見守っていた。ワー
ウルフたちが狙っているのはエランディアの人間のようなので、二人には危害は及
ばなかった。
 戦況はというと、大神官たちの方が押され気味だ。何しろあのワーウルフたちは
強力な自己修復能力を持っているらしく、斬りつけようが何しようが、即再生して
しまうのだ。しかも初めは3頭しかいなかったはずが、数が増えていた。どうやら
クロノドールの放った照明弾のようなものが合図になっており、どんどんと集結し
ているらしい。
 次から次へと死体が量産されている。大神官たちは返り血で血だらけになりなが
ら戦っていた。
「ああー、僕にも何かできたらええのに…」
 安全な場所に隠れながら、誠は力なくつぶやく。
「無理よ。せいぜい後で傷の手当てをしてあげられるくらいだわ」
 菜々美は誠をなだめるように言う。その心の中で、こうつぶやいた。
(彼女たちが生きていたらだけどね…)
 誠は何とか大神官たちの手助けにはなれないかと、思考を巡らせていた。
(要はあいつら、怪我してもすぐに直ってしまうのがいかんのや。一体あれはなん
ですぐ直ってしまうんやろか。いや、そういえばクロノドールが先エルハザード文
明の力とか言っていたな…。ということは…)
 誠の顔に決意の色が現れ、すっくと一歩踏み出す。
「ああ、誠ちゃん! どこ行くの? 危ないわよ!」
「いや、ひょっとしたら僕の力でなんとかなるかもしれん。ちょっとやってみるわ」
 誠は菜々美の方に振り返りながら言う。菜々美は信じられないという顔をした。
「ちょ、ちょっと、誠ちゃん!? 危ないって!」
「大丈夫やさかい、菜々美ちゃんはそこで見とってや」
「あー! 誠ちゃーん!」
 菜々美の声が空しく響く。誠は戦闘の真っ只中へと突入していった。

「な、誠!? 危ないからあっち行ってろよ!」
 誠の姿を見つけたシェーラが言う。彼女は手傷を負い、返り血やらなんやらで散
々たる姿となっていた。ただ目だけが力強く輝き、肉体を躍動させている。
「いえ、僕の能力で何とかなるかもしれません。あいつらを押さえ込んでくれませ
んか?」
「何い?」
 シェーラが怪訝な顔をする。
「そうどす! 誠はんの能力なら…」
 誠の声を鋭く聞きつけたアフラが言う。彼女は風に乗って誠の所までやってきた。
「誠はんの能力ならあいつらの能力に対抗できるかもしれまへん。やってみる価値
はあります」
「じゃ、じゃあ」
「シェーラ、あいつらの中から一匹足留めするんどす!」
「あ、ああ。分かったよ」
 シェーラはあまり乗り気でないながらも、アフラの指示に従った。
 アフラとシェーラの二人はワーウルフの内の一体をうまいこと転倒させて、さら
に方術を使って動きを止める。
「今だ、誠!」
「はい!」
 誠はダッシュしてワーウルフの背中に飛び乗り、首のあたりに手を当て、神経を
集中する。はっきりいって状況が状況のため、神経を集中させること自体がなかな
か困難であったが、目には見えていないはずのものが精神に徐々に投影されてくる。
さらに念を集中すると、精神投影は完全なものになった。ワーウルフの体内でナノ
マシンのようなものがせわしく動いている様子を“見る”ことができる。
 誠は今度は自分でイメージを創り出し、精神投影から逆に精神投射を行った。自
分の精神とナノマシンとを繋いでいる情報バイパス上をイメージが逆流して行き、
ナノマシンがリプログラムされる。
 それまでナノマシンにプログラムされていた人狼化と損傷修復のプログラムは破
壊され、誠が新たにプログラムした自己破壊プログラムが起動する。
 ナノマシンはあっという間に全て解体されてしまった。
 誠はワーウルフから飛び退いた。
「もういいですよ。簡単に倒せるはずです」
「よしきた!」
「ほんならいきまっせ!」
 アフラとシェーラは誠が充分離れたことを確認すると、ワーウルフに必殺の攻撃
をみまった。これまでにも何度かやっているのだが、それは傷を負わせることはで
きても、すぐに修復されてしまっていた。
 しかし今度は違った。大きく穿たれた傷跡は消えない。それにワーウルフ自身だ
いぶ弱ってきていた。
「やったぜ! これなら倒せる!」
「ほっとしましたわ!」
 二人は次々とそのワーウルフに攻撃を加えていく。ほどなくしてそのワーウルフ
は地面に倒れ込み、赤黒い血をどくどくと流し始める。どうやら絶命したらしい。
「よっしゃあっ!」
 シェーラがガッツポーズをとる。
「じゃあ次いきましょう」
「分かりました」
 三人は次の目標を決めて、攻撃を開始する。その内、三人でワーウルフの能力を
低下させて、ミーズや藤沢や戦士たちがとどめをさすというパターンができあがっ
ていった。
 誠の参戦でそれまで不利だった戦況は有利なものへと変わろうとしていた。


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