子どもの遊びの理解と支援

 

子どもの遊びの理解と支援(2016年3月5日)

児童健全育成指導士 田中 純一

 放課後児童クラブにおける子どもの遊びの理解と支援について考えてみたい。4年間の学校での経験、31年間の放課後児童クラブと児童センターでの経験、定年退職後のたくさんの放課後児童クラブや学校・保育園や専門学校での授業などで子どもたちや仲間の支援員等から学んだことから、子どもの扱い方の手法を提案してみたい。

@   ヴィゴツキーの最近接領域の考え方について
子どもの遊びや活動をありのままに子どもに任せておいても上手くいかないことが多い。自己中心でわがままな上級生に支配されてしまうこともある。また遊びや活動が一定のレベルから上達することがなく、マンネリ化してしまうこともある。
 子どもの発達を考慮すると、子どものレディネスを考えながら子どもの今ではなく子どもの明日につながるようなものを提案することが必要である。(明後日ではないことが大切)ヴィゴツキーはこれを最近接領域と言っている。子どもの活動が次にどのように展開するかを下から見て(=understandして=理解して)いくことが大切である。その意味で小学生を相手にする遊びや活動は奥の深いものである。

A   ユニバーサルデザイン的な遊びや活動を
1.    ユニバーサルデザインの考え方はどんな人でも公平に使えること。(公平な利用)
2.    使う上での柔軟性があること。(利用における柔軟性)
3.    使い方が簡単で自明であること。(単純で直感的な利用)
4.    必要な情報がすぐに分かること。(認知できる情報)
5.    うっかりミスを許容できること。(失敗に対する寛大さ)
6.    身体への過度な負担を必要としないこと。(少ない身体的な努力)
7.    アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されていること(接近や利用のためのサイズと空間)
 となっている。放課後児童クラブは1年生から6年生までの異年齢が同居しているのでユニバーサルデザイン的な遊びや活動が必要となる。しかし年齢別の遊びや活動が多いものである。私たちはユニバーサルデザイン的な遊びや活動を探したり、創作していくことが必要である。ユニバーサル的な遊びや活動としては以下のものがあるように思う。 (アクシビリティをよくすることは、誰でもが上手くアクセスできるようにすることで障害のある子どもたちも含めて上手く遊べるようにするために重要である。)
・ユニット折り紙・ワミー・どうぶつしょうぎ・カプラ・写し絵・オニム・トランプなど

B   ガードナーの多重知能理論の活用
 ガードナーは人間の知能は多重であるという。人間の知能は論理数学的知能・言語的知能・身体運動的知能・音楽的知能・空間的知能・個人内的知能・対人的知能・博物的知能の八つがあり、それぞれ独立して連携して発達しているという。放課後児童クラブや児童館では苦手な知能を補償するのではなくて、得意とするものを伸ばすようにした方が良い。そのためには支援員も学ぶ必要性があるとも言える。また、一つの遊びや活動がユニバーサルデザイン的であるとともに、一つの知能に限定されないでいくつかの知能にアクセスするものであることが大切である。
exみんなで歌う場合にタンバリンを叩く(空間的知能)・声を出す(音楽的知能)・手をつなぐ(対人的知能)・歩きながら歌う(身体運動知能)などいくつかの知能を活用する。

C   偶然性の利用とツーパワースリーパワーの手法
 少子時代になったので負けることを極端に嫌い、勝つことだけに固執する子どもたちが増加している。体力差や知能差がある放課後児童クラブでは、じゃんけん等偶然性がある遊びや活動が必要である。偶然で勝てると楽しいし、負けても悔しさが減少する。また、一人ではなくて二人組・三人組(ツーパワースリーパワー)でやれば勝ったときの喜びは二倍三倍となる。負けた時の悲しさも軽減する。
・ツーパワースリーパワーじゃんけん陣取り・ツーパワースリーパワードッジボール・バックギャモン

D   遊びから活動との考え方へ
 遊びといってしまうと自由で自主的な活動となってしまい。子どもたちの自主性等に依拠してしまってうまくいかないことが多い。私は活動の中に遊びと学びと働きが包含されていると考えている。活動の中で学びが主となるのが学習・働きが主となるのが労働・遊びが主となるのが遊びである。ですから学習や労働の中にも遊びも包含されていることになります。活動の中で働く場面・学ぶ場面・遊ぶ場面にメリハリをつけてやればうまい展開になると私は思います。働きに特化した活動も取り入れてあげれば勤勉性を発達課題とする小学生期には貴重な経験になると思います。
・子どもコンビニ・環境美化活動など

E   地域や自然や変化の状況と合わせて物事を環境依存的に柔軟に
 何を活動するかは柔軟でなければならない。その地域や自然状況や社会の変化に応じて適切な活動が必要である。
・マテバシイのどんぐり・オリコしゃぼん玉・100円ショップの利用

ユニット折り紙でも簡単なものから複雑なものがあり、子どもたちのレディネスに合わせて多様な展開が出来る。