第拾九話

男の戦い

[INTROJECTION]


<あらすじ>

 第13使徒を倒した後、シンジはトウジを殺そうとしたゲンドウに対し釈明を求める。しかし、ゲンドウは取り合わず、シンジを強制的にコクピットから引きずり出す。
 病院のベッドでシンジは綾波の幻影に向かって呟く。父親がわからなくなった、と。しかし綾波はそんな彼を突き放す。シンジはいやなことから逃げ出して何が悪いと叫ぶ。
 シンジは自分の意志でエヴァを降りる。彼を見送るミサトは、いつでも帰って来てくれて構わないというが、シンジはそのつもりがないと答える。
 ホームで待つシンジの目前に現れたのは、列車ではなく第14使徒であった。自分にはもう関係ないことだと呟き、シンジはシェルターへと向かう。
 たった数回の攻撃で特殊装甲をすべて突き破る使徒に対し、ミサトはジオフロント内での迎撃を試みる。ジオフロントに姿を現せた使徒を迎撃する弐号機。しかし、使徒の一撃で両腕を切断されてしまう。なおも突貫するアスカ。ミサトは弐号機の全神経接続をカットを指示、次の瞬間、弐号機は首を落とされその動作を止める。
 左腕を損傷している零号機に変わり、レイは初号機で出撃しようとする。しかし初号機はレイのシンクロを拒否する。ゲンドウはレイを零号機に、初号機はダミープラグでの起動を指示する。しかし初号機は起動を拒否する。
 シンジは損傷したシェルターから避難する。そして彼は、両腕と首を失った弐号機を見る。そんな彼に加持が声をかける。
 シンジは畑に水をまく加持に、自分はもうエヴァには乗らないと答える。加持は使徒が地下のアダムと接触したとき人類は滅びると言われていることを話す。
 彼らの目の前で、N2爆雷を抱えた零号機が使徒に向かって突撃する。ATフィールドを突き破り、N2爆雷を使徒にたたき込む。しかし使徒はこの爆発を跳ね返し、一撃で零号機を沈黙させる。
 加持はシンジに、何をしなければならないかを自分で考え、自分で決めろ、誰も強制はしない、と告げる。
 シンジは小さくうなずくと走り出す。そして彼は初号機のケージで叫ぶ。自分はエヴァのパイロットだ、と。
 メインシャフトの装甲を破壊し、発令所に進入する使徒。初号機は肉弾戦で使徒をジオフロントへと引きずり出すが、止めを刺す前に動力が切れてしまう。なすすべもなく攻撃される初号機。コクピットでシンジは頼むから動いてくれ、と絶叫する。
 そしてエヴァは再起動する。
 襲いかかる使徒の腕を引きちぎり、切り落とされた自分の左腕として再生。右腕の一閃で使徒をATフィールドごと切り裂く。
 エヴァは倒した使徒に這いよると使徒をむさぼり喰う。
 S2器官を取り込んでいるのだと察するリツコ。エヴァは彼らの目前で立ち上がり、自らの力で身にまとう拘束具を引きちぎり、咆哮する。
 もうエヴァを止める手段は無い。しかしゲンドウは、すべてはここから始まると呟いた。


<評価>


<感想とねたばらし>

怒るシンジ
 前回の引きからいきなり数日後とかにせずに、シンジとゲンドウのやり取りをきちんと描いているのは立派。このへんうやむやにしちゃうことって多いですから。

「今度はダメかもしれない、あいつ、立ち直れないわ」
 アスカ、人のことより、自分の心配をしなさいって。この件については後述。

アスカとレイ
 「夢…?」「あんた、見たことないの」 こまったような表情の綾波がグー!
 おそらくレイは夢などみたことは無いでしょう。知識としては知っているが、体験したことはないというところでしょうか。
 なぜならレイの言動には現実に直接対処する以外の要素がほとんど見られないからです。つまり夢は必要ないのです。これは彼女は現実主義であるということではなく、現実以外の要素は(自分自身のことも含めて)不要である考えているということです。彼女の部屋が眠ること(ベッド)と食べること(冷蔵庫)しか無いあたりもこのことを補強すると思います。ただ、シンジとゲンドウについては例外みたいですけどね。こまったような顔も、「夢を見る」シンジを理解できない戸惑いではないでしょうか。

綾波とシンジの会話
 うーむ、第拾六話の幻影との会話に積極的な意味は無いなんて言ったのは誰だ(私だな ^_^;;;)。第拾八のラストから第拾九話の見事な伏線になってましたね。
 拾六話では追求すべきはシンジ自身ということで、子供時代のシンジがいじめ役でしたが、今回はゲンドウを理解できない、ということでレイの幻影が出てきます。これは第五話でひっぱたかれたこととかが影響しているのでしょう。ゲンドウ自身ではなく、代理人というところですか。シンジの主観で会話が進むところからシンジの夢のようですが、トウジも彼の主観でものを言っているのがちょっと気になります。なんかの伏線かなあ。でもそんなに話数残ってないんだが。

今週のらぶこめ
 トウジ、思ったより元気ですね。どぎまぎしているヒカリがいいです。そんな彼女に、「すまんかったなあ、弁当、食えへんで」と答えます。このあたりヒカリの気持ちをずっと知っててはぐらかしてるんじゃないだろかとも思えます。…でもあの熱血筋肉馬鹿がそんなもってまわったことをするとも思えないか。

「僕はもう、エヴァには乗りません」
 ケンスケとミサトがそれぞれシンジに向かって自分の心情を暴露します。しかし今回は第四話とは違い、他人(=父親)のためにエヴァに乗ることはもうしないと決意しているわけですからまるで効果はありません。

今週のレイ、その壱
 「だめなのね、もう」 なんか意味深なセリフです。これはラストのリツコさんの「目覚めたのね、彼女が」 というセリフに現れる「彼女」とレイの関係を推測させます。ゲンドウの「私を拒絶するつもりか」 というのも、初号機ではなく、この「彼女」に拒絶されたと考えます。
 そういえば初号機ってシンクロに失敗しても零号機みたいに錯乱しませんね。

今週のレイ、その弐
 「私が死んでも代わりはいるもの」 何の代わりかで平凡な考えから恐い考えまでいくつか思い付きます。パイロットの代わりというのなら、シンジやアスカ、そして予備であるクラスメイトを指すということでいたって平凡な答になります。レイ自身の変わりと考えると…^^;。
 私としては「レイ人造人間説」というのを考えていたりします。ただのクローンとかではなく、もっと積極的に手の加えられた実験動物。実年齢は4才くらいであの感情のとぼしさは精神年齢と肉体年齢のアンバランスから来るもの、ためらったり試行錯誤したりしないのは、学習というプロセスをふまずに、知識や論理をすりこまれているから、という説です。当然予備がいくつかあって、ダミープラグの中にも意識の無い予備が一つ(ダミープラグってレイのダミーしか無いし)…はずれていたら笑ってください。(余談だが、「アスカ22才説」というのもある^^;)

今週のアスカ
 シンジなんていなくたって、と強がりを言っていますが、ただでさえ最近は壊れてるわ、前回は一撃でやられるわで「もう二度と負けられない」 と口にするほど追いつめられています。両腕を切断されても突貫しますが、結局惨敗。生き残りはしたものの、精神的にはずたぼろでしょう。さあ、あとはとどめを刺すだけだ。(^_^)

今週のレイ、その参
 N2爆雷を抱えての特攻。第六話で初号機の楯になったことに継ぐ目的優先自滅覚悟の行動です。「ATフィールド、全開」 のセリフのところでぐっときたのは私だけではないはずだ。

シンジと加持
 シェルターに直撃した弐号機の首を目前にし、シンジは人の死と使徒の強力な力を見ます。そして外には両腕と首を失った弐号機が。しかしそれでもシンジは加持に向かって「エヴァには乗らない」と答えます。しかしレイの特攻、そして大破を見てようやく自分がなにをしなければいけないのかを自覚します。他人に認められるためではなく、自分自身の大切なもののために、「自分はエヴァのパイロットだ」と叫びます。
 以前かあらしつこく「シンジが自覚するにはアスカがひどい目にあわなければ」と唱えてきましたが、アスカがずたぼろにされてもシンジは動きませんでしたな。第壱話と同じくレイがトリガーとなってシンジはエヴァに乗ります。…アスカってただのやられ役かいな。
 しかし、加持君。今にはじまったことじゃないけど、かっこよすぎ。

初号機対第拾四使徒、その壱
 発令所での殴りあい。シンジ君、目の下に悪者線が入っています。薄々感づいてはいたけど、どんどんデビルマンになってくよなあ。

初号機のコア
 これはちょっと意外でした。コアが無いから外部電源がいるのでは…と思っていたのですが。あ、それだと第拾六話での無動力での再起動が説明できないな。

初号機対第拾四使徒、その弐
 再起動自体はすでにお約束ですが、再起動にいたるプロセスを見るに、第拾八話でダミープラグのコントロールを止めたのはやはりシンジなのでしょう。その影響で今回レイやダミープラグのシンクロが不可能になったのではないでしょうか。

シンクロ率400%
 なんで100%を越えるんだ?というのは波動砲以来の疑問でしょうが、この場合の%は全体に対する割合のことではありません。定格出力を100%として、現在の出力を現しているのです。たとえば工業用交流モータなどは最大で定格出力の200%までは制御可能です。

今週のリツコさん
 「やはり目覚めたのね、彼女が」 をを、意味深な!というほどのこともありませんな。「彼女」と呼ばれる存在で実物の登場していないのはリツコの母と碇ユイの二人です。このうちリツコの母はマギで使用されていますから残りはユイしかありません。第拾六話からもこれは推測できます。

初号機対第拾四使徒、その参
 最強と言われた第拾四使徒ですが、エヴァの腕の一振りでATフィールドごと寸断されてしまったあげくに喰われてしまいます。TVでここまでやるか、とは思いましたが意外性はあまり無し。なぜなら漫画家の米村孝一郎氏が冬コミで出したエヴァ本で「共喰い」というのを見ているから。ちなみにこのエヴァ本は氏の考えたエヴァのラストという漫画でしたが、TVを見ている限りそのラストへ向かって爆進してるよーな気がする。

今週の主役
 シンジ…ではないです。今回の物語を動かす主役、それはエヴァ初号機です。第拾四話でレイとシンクロし、第拾八話でダミープラグを受け入れた初号機も今回はシンジ以外を受け入れません。胸部装甲の内側から現れたコア、内部電源切れの状態での再起動、覚醒、そして解放。再起動後はシンジの出る幕はありません。なぜなら彼はエヴァを動かすキーでしかないからです。
 うーむ、今後の展開でシンジが主役に復権できるかはあやしいなあ。

余談
 本当に30分番組なんだろーか。今回のレポート、書いても書いても全然終わらなかったぞ(^^;)。つまりはお約束シーンの繰り返しを止めて全体のシリーズ構成をしっかりやれば、30分のTV枠にもこれだけの内容をいれられるということですね。
 毎週放映時間の20%を変身シーンと必殺技シーンで消費するような番組に見習ってほしいものです。


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Feb.,20,1996