第弐拾話
心のかたち 人のかたち
[WEAVING A STORY 2:oral stage]
<あらすじ>
第拾四使徒を喰らい、S2機関を体内へと取り込むエヴァ初号機。その事実にゼーレは困惑し、ゲンドウへの不信をあらわにする。
ケイジの中に固定される初号機。しかしその中にはシンジの姿はなく、空のプラグスーツが浮かぶのみであった。
ミサトの中でエヴァへの不信感が増してゆく。
エヴァに取り込まれ、量子状態でLCLと同化したシンジのサルベージが計画される。
シンジはエヴァの中で、自分はなぜ戦うのかを自問する。敵を倒し、自分と自分たちの命を守るためだ。敵とは何か、来襲する使徒と呼ばれる物体、そして父親。
シンジはレイの幻影へと語る。レイがいるから、自分は捨てられたのだと。しかし、レイはシンジが自分で逃げだしたのだと責める。
そしてシンジは思い出す。自分がエヴァを知っていたことに。10年前、自分が父親と母親から逃げだしたことに。
初号機の覚醒から一月後、シンジのサルベージ計画がまとまる。短時間で計画をまとめ上げたことに関心するマヤに、リツコは10年前、同じような事故があったのだと答える。そしてその時はサルベージに失敗したことも。
シンジはエヴァの中でなぜエヴァに乗っているのかを思い出す。自分はエヴァのパイロットとしてのみここにいる、エヴァに乗ると皆が誉めてくれるからエヴァに乗るのだと。自分の意志ではなく、みんなの期待ゆえに戦うのだと。
シンジのサルベージ計画が発動する。エントリープラグ内に自我境界線を形成し、シンジを再構成するのだ。
しかしサルベージは失敗する。まるでシンジ自身が帰りたくないかのように。
エントリープラグは再び暴走状態に、ハッチが開きLCLが溢れ出す。
何を願うのか。シンジはエヴァの中で問いかけられる。
エヴァに乗って戦ってきたという事実は、いまさら消すことはできない。
なぜ彼は再びエヴァに乗ったのか。そして何を願うのか。
シンジは自分のために涙を流したミサトを、盾となって自分を守ったレイを、そして母親を思い出す。
これからの自分をどうするかは自分で決めろ、エヴァはシンジにそれだけを伝える。
エントリープラグから流れ出したプラグスーツを抱きしめて号泣するミサト。
その前で光るコアからシンジが現れる。
シンジが助かった後、加持と密会するミサト。人類補完計画について聞き出そうとするが、はぐらかされてしまう。そんなミサトに加持は一つのカプセルを渡す。
8年ぶりのプレゼントだと、これが最後かもしれないとだけ呟いて。
<評価>
- シナリオ ★★★★☆(トウジが死んでたなら完璧だけどな)
- 演出 ★★★★★(私は好きだ)
- 総合 ★★★★☆
<感想とねたばらし>
- 困惑する委員会
- 視聴者としては人類補完計画がいまいち見えない(だいたいの想像はできるけど)のでそちらで困惑されてもこっちとしてはさらに困惑するしかないぞ。
ゲンドウの「シナリオ」が見えてこればいいんですが。
- 発令所
- 前回第14使徒と初号機の破壊活動によって粉砕された第1発令所は放棄され、第2発令所に移動します。このぶんだとセントラルドグマ最下層には第3発令所があるに違いない。
マヤさんの猫の絵のクッションがグー!でもまさかとは思うがリツコさんのを持たされてたんじゃなかろーな。
- 碇の鈴
- ありゃりゃ、ただのダブルスパイと思っていたらもう一つかけもっていたとわ。これはちょっと思いつかなかったぞ。
- 今週の綾波
- あーよかった。生きてましたね。
包帯の面積が増えていますが、今回の話で31日経過していますから無事に復活しているでしょう。
今回本物のレイの出番はこれだけです。
- 今週のアスカ
- はい、期待通りにぼろぼろです。レイとは違い時間が経てば直る傷ではありません。復活したシンジにどんな顔をして会うのかが楽しみです。
- サルベージ計画
- をを!はーどえすえふだ!
液体に満たされたコクピットでの思考制御というネタは千年女王とかでも使用されていましたが、操縦者と機体との融合というネタを素粒子論にひっかけるというのはみごと。私もアマチュア物書きをやっていたりしますが、今回も「だああ!やられたぁ」です。
ミサトさん、エヴァへの不信感をどんどん強めてゆきます。さあ、伏線だ伏線だ。
- シンジの敵
- 使徒はわかる。ゲンドウについては、やっぱりというところでしょうか。
ちょいと思うところがあるのだが、それについては後述。
- 今週のシンジ その壱
- シンジは、彼の中の綾波に自分が今までなぜエヴァに乗ってきたのかを述懐します。その総てが他動的な理由です。
そして、レイがいるから自分が捨てられたのだと。しかし、シンジに捨てられたゲンドウがレイを造ったようにも思えたりして。
- 「僕はエヴァを知っていた」
- あ、やっぱり。
注目すべきは管制室の中、子供のシンジの後ろの人物です。奥の男性2人はゲンドウと冬月でしょうが、もう一人の女性。ユイさんには見えません。リツコの母親でしょうか。
(とするとケージにあるだろうエヴァの中には…ユイさんだろな)
- サルベージ計画
- 10年前の事故、そして失敗。
そーいえば碇ユイさんの死亡は2004年、遺体は残っていませんでしたなあ。
- 今週の縦線横線
- 1回ならば演出だけど、2回やると絵が間に合わなかったとしか思えないぞ。
でも一瞬映る原画をよく見ると、すべてが使用済みのものばかり。つまり演出らしいですね。
- 「優しくしてるわよ」
- 同人作家の狂喜する姿が以下略。
ミサトは姉、アスカは恋人、レイは…恋人って雰囲気じゃないよな。
胸の一部のディテールの省略はTV局の放送コードかなにかでしょう。ガイナックスがささいな良心で細部のディテールを省略するとは考え辛い。
- サルベージ開始
- リツコさんのセリフ「帰りたくないの?」 そーなんでしょうね。詳しくは後述。
- 何を願うの
- 今回のテーマです。彼はなぜエヴァに再び乗ったのか。そして得られた答えが「これからの自分をどうするかは自分で決めなさい」です。細かいことは後述(今回こればっかやな ^_^;)
- 「男だったらシンジ、女だったらレイと名付ける」
- シンジ、レイ双子説というのは安直すぎて考えていなかった。他の可能性として腹違いの兄弟説もあるか。で、名前は両方ゲンドウが付けた…ちょっと無理があるなあ。
レイはゲンドウの親友の忘れ形見でゲンドウが名付け親…いまさら伏線もなしにこうはこないな。
- シンジ復活
- 背後でコアが光っています。コアってなあドラえもんのポケットか。
しかしこのコアむき出しの初号機、オープニングとかに出てくる第壱使徒そっくり。
- 今週のラジオ放送
- ミサトさんの車の中のラジオ放送。こういった細かい演出て好きだな。
- 今週の18禁(笑)
- ここまでやるか、ガイナックス!
気になるのは「8年ぶりのプレゼント」、薬ではなさそうですが。
レコーダで再生すると、「私はイスカンダルのスターシャ」とか言い出しそうで恐いぞ。
- 今週の主役
- 文句なしにシンジ。第拾六話からこの第弐拾話でワンセットです。
第拾弐話で彼はエヴァに乗る理由を見つけました。しかし第拾六話でその理由を半ば否定されます(というか自分が否定したんだが)。その結果が第拾七話でのシンクロ率の低下となって現れます。そしてトウジと第拾参使徒の一件から、シンジは第拾九話で父親(やその他の他人)のためにエヴァに乗ることを否定します。
しかし第拾九話でシンジは自分とエヴァだけが使徒を倒せることを、使徒を倒さねば自分も、自分の愛する人々も死んでしまうことを思い知ります。(おまけにレイは突撃しか知らんし、アスカは口ばっかだし)
彼は叫びます、「今うごかなければみんな死んでしまう、もうそんなのはいやなんだ」。
ところが、彼の知人はだれも死んでいません。第拾九話で人の死を目の当たりにしますが、見知らぬ他人の死では動機としてはちょっと弱い。
やはり第拾八話でトウジは死ぬべきでした。第弐拾話でシンジはエヴァから出てこようとはしません。それはトウジを傷つけた(殺した)エヴァに再び乗りはした、しかし今後何のためにエヴァに乗るのかをシンジ自身が整理できていないからです。彼は「エヴァのパイロット」としてのみ存在を許されていますが、そのパイロットとしての自覚を持たない以上、エヴァから外へ出たところで彼の居場所は無いわけですから。(ついでにトウジが死んでいたりすると外の世界からの逃避というのがおまけに付きます。母体回帰願望うんぬんは専門外だからパス)
第弐拾話、今回はシンジがこれまでなぜエヴァに乗ってきたのか、そしてこれから何のために乗るのかを考える話でした。
(言うまでもありませんが、この文は私の主観のみで書いています。うかつに信じないよーに)
- 次回
- 色々張りっぱなしの伏線がありますが、とりあえずペンペンの正体をなんとかしてほしいぞ。
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Feb.,25,1996