第弐拾弐話
せめて、人間らしく
[Don't Be]
<あらすじ>
惣流・アスカ・ラングレー。エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット。
彼女も母をE計画を原因として亡くしていた。母の葬儀で彼女は決心する。自分はもう泣かない、自分で考え、自分一人で生きるのだと。
しかし第14使途に敗北し、シンジがいれば自分の存在価値など無いと思い込んだアスカはエヴァとのシンクロ率を低下させてゆく。
そんなおり、ミサトは非公式にエヴァの拾参号機までの建造計画が開始されたことを知る。突然の大量建造計画にミサトは不穏な動きを感じる。
エヴァとのシンクロ限界ぎりぎりまでシンクロ率を低下させるアスカ。リツコはパイロットの変更もやむなしとの見方をする。
心を開かねばエヴァは答えてくれない。レイはそうアスカに忠告する。しかしアスカはエヴァには心など無い、兵器には心など不要と言いきる。それが自分自信の存在をも否定することとは知らずに。
衛星軌道上に第15使途が出現。
ミサトは零号機を前衛、弐号機をバックアップにと命令するが、エヴァのパイロットとしての地位に不安を感じているアスカは命令を無視して出撃する。司令部はこれをアスカへの最後のチャンスと黙認する。
今回失敗すれば弐号機を降ろされる、射程外の使途にあせるアスカ。
しかし第15使途は弐号機の射程外からの光線でアスカの心を侵食する。
精神汚染の危険からミサトはアスカに撤退命令を出す。しかしアスカはそれを無視した。
零号機がポジトロンライフルで超長距離射撃を試みる。しかし使途のATフィ−ルドを貫くには距離が遠過ぎる。
リツコは使途が人の心を知ろうとしているのではと思い当たる。
アスカは閉ざした両親の記憶を掘り起こされる。発狂し、自分を道連れに死のうとした母、他の女の元に走った父。忘れていた辛い記憶を前にアスカの精神はぼろぼろになり、弐号機は活動を停止する。
初号機を使途の精神攻撃にさらすわけにはいかない。ゲンドウはレイにロンギヌスの槍の使用を指示する。
セントラルドグマを降下してゆく零号機。ミサトはアダムとエヴァの接触を危険であると進言するがゲンドウは聞き入れない。ミサトはアダムとの接触がサ−ドインパクトを起こしえないことを直感し、セカンドインパクトの正体を疑う。
冬月は委員会に無断でロンギヌスの槍を使用することを危惧する。しかしゲンドウは今回の事件を口実として使う気だった。
零号機の投擲した槍はATフィ−ルドごと使途を消滅させる。しかし衛星軌道へと飛翔したロンギヌスの槍は回収不能となる。
使途は倒され、アスカは無事に救助される。しかし度重なる失敗と、レイに救われたことでアスカはさらに自分を失ってゆくのだった。
<評価>
- シナリオ ★★★☆☆
- 演出 ★★★★☆
- 総合 ★★★☆☆
<感想とねたばらし>
- 今週のアスカ、その壱
- 子供のころのアスカ(あ、今でも子供か)初登場です。アスカもまたシンジと同じく母親をE計画で亡くしています。もっともこちらは精神崩壊ですんだようですが。
この人形を抱いた狂った母親というのは「風の谷のナウシカ」のクシャナの母にもありましたが、実際になにか症例があるような気がしますね。専門外なんでわからんけど。
しかしアスカの父親がどう見ても外道。妻を心配しているような感じではありませんね。主治医を口説いて後妻とするあたり、方向性は違えどゲンドウに並ぶ外道親父でしょう。こうして見るとアスカとシンジというのは対になったキャラですね。同じような境遇から出発して、自立して前向きに闘ったのがアスカで逃げ出したのがシンジ。
- アスカの母
- SORYU KYOKO ZEPPELIN.一瞬飛行船のツエッペリンを思い出しました。ところがどっこい、こいつはおそらくグラ−フ・ツエッペリンですな。第2次世界大戦中唯一建造されたドイツの正規空母です。日本の赤城の資料を山ほど持っていったにもかかわらず、結局敗戦までに稼働にこぎ着けることができず、自沈にも失敗。ソ連に徴収された後、回航中に自然に沈没したというギャグにしかならんよ−な船です。まあ、就航したとしても、航続距離のろくに無いメッサ−シュミットやスツ−カを積み込んで大西洋なんぞに出撃した日にはひどいことになったでしょうからそれでよかったのかもしれません。
さて、キョウコさんの没年は2005年。しかし、実験失敗後発狂、そして自殺というプロセスですので、原因となった実験は本部でのユイさんの実験と前後して行われた可能性もあります。
ここで出てくるのが「エヴァ母親説」。初号機がユイさんであることはこれまでの状況証拠としてほぼ確実、零号機は実験動物のレイ専用機ということでおいとくとして、弐号機はキョウコさんの実験により、故意か偶然かはわかりませんが、アスカ専用機となったことが考えられます。このあたりの資質がリツコさんのいう「コア」なのでしょう。零号機と初号機は基本的にユイさんを使用しているので互換性があるが、弐号機はそうではないということが某証としてあげられます。レイは肉体的にはユイそのものに近いわけですから、とくに母親という関係でなくとも、零号機と初号機にシンクロ可能なんでないかい?
(トウジについては父親と祖父が研究所つとめで、妹が一人きりになってしまう、という第参話のセリフから、やはり母親がいないことが考えられる。ケンスケにも母親はいないし、姉妹の弁当を一人でつくるヒカリにも母親がいないことが考えられる。チルドレン候補者が集まっているという2年A組全員母親がいないというのは、ちょいと無理があるよ−な気もするが)
- 今週のミサト、その壱
- エヴァ拾参号機までの建造計画ですが、本編中に登場できるかは怪しいでしょうな。ミサトさん、だいぶ知恵を身につけてきました。これで行動が伴えばいいのですが。でもその後、三人での夕食を見るかぎりやっぱり成長の兆しは見られません。
いいんです、もう。ミサトは最後までこ−でしょうから。
- 今週の電話
- 加持さんがいなくなったことをアスカは知りません。てことはもちろんシンジも知らないでしょう。リツコあたりになると諜報部とのパイプがあるようですかたら知っていてもおかしくないですが。
ドイツからの電話。おかしいな、第2外国語はドイツ語だったはずなんだが・・「ヤ−」しかわからん。(;_;)
電話の後でうらやましがるシンジに対して、うわっつらだけの表層的な物と言って退けます。ミサトの家での家族ごっこを揶揄していることを意識しているとは思えませんが。
- 今週のアスカ、その弐
- シンクロ率はどんどん下がり、ついに限界点まで達します。ところでリツコさん、「問題はもっと深層意識にあるのよ」って解ってるならなんか対策しようとは思わんのかね?
「子供なんて絶対いらないのに」 不幸な子供時代を過ごした人にけっこう見られる感情らしいです。専用の心理学用語くらいありそうですが、専門外なのでパス。
- エレベータ
- この作品はこれまでも静寂を効果的に描いてきました(第弐話でシンジが病院で目覚めるところとか)が、今回はそういう点ではちょっと・・です。第弐話の病院のシーンでは遠くのラジオ体操の声がかえってシンジの周囲の静寂を際立たせていましたが、今回のエレベータではそうう対比する物がありませんでしたからね。
しかし視聴者がまだかまだかと次のアクションを待って待って待ちくたびれたところでのレイのセリフ。いやあ、見事なカウンターでした。
まあ、レイに「心を開かなければ」なんて言われれば逆上するのはあたりまえですな。「エヴァの心」をアスカは否定します。しかし弐号機にそれがあるとすればアスカの母親の物である可能性大。初号機はユイで、零号機はレイ自身でしょうか。
レイは「機械人形」と呼ばれて「私は人形じゃない」と答えます。しかしそれに続く会話はどー見ても人間でない物が「私は人間です」と言っているような違和感があります。
さて、「昔からだいっきらいなのよ」というアスカのセリフ。この昔というのはいつのことでしょうか。第八話話では初対面に見えましたが。…伏線かな?
- 今週のアスカ、その参
- 「あなたは私の人形なんだから」っておい。冒頭の人形をあやす母親とだぶって見えます。ちょっと恐いぞ。
- 第15使徒そしてアスカ、その四
- 超長距離からの光線による精神攻撃。賛美歌と天からの光の演出がよいです。
使徒の精神攻撃はアスカの過去の記憶に進入します。
人形をいらないというアスカ。これは人形をあやす狂った母親に対して、人形ではなく自分を見てくれという意志でしょう。しかしその望みはかなわず、アスカは両親を見限らざるを得なくなります。
しかし彼女が一人で生きてゆけるのはエヴァのパイロットとしての地位があればこそです。いくら大学卒業の天才美少女とはいえ、ネルフを放り出されたら親元にかえらざるを得ないでしょう。それは一人で生きてゆこうとしているアスカの意志とは相容れないものです。このことが第九話で彼女に「エヴァに乗るしかない」とまで言わせた原因ではないでしょうか。
この記憶は当然彼女にとって楽しい思い出であるはずはありません。その結果があれだけの衝撃となって蘇ったのでしょう。
さて、毎度のこととなりました文字のフラッシュバックですが全部ドイツ語・・前回の予告が一カットも使われてない・・単語しか解らん(^_^;;)。
- 今週のポジトロンライフル
- 弐号機が持っていたのがネルフ製、零号機のが戦自研の改良版でしょうか。薬室の形状がだいぶ違います。
- ロンギヌスの槍
- 今回の主役でしょうなあ。アダムとエヴァ(&使徒)の接触がサードインパクトの原因と成り得ないことをミサトは感付きます。それと同時にセカンドインパクトの正体にも疑惑が。さて、この線で進めばミサトさんが主役になれますが、それができますかね?
ゲンドウの口ぶりから、「ロンギヌスの槍がじゃまである」もしくは「衛星軌道に槍を配置したかった」とかの理由が思い付きます。使徒を一撃で倒せるってことはエヴァをも一撃で倒せるでしょうから。ゼーレの側のエヴァ(伍号機以降)に使用されることを恐れているのかも。
- 今週の雲
- 弐号機、零号機の射撃、ロンギヌス槍の吹き飛ばす雲の描写が最高。今回の見所の一つだよな。
- 今週のアスカ、その伍
- はい、完璧にぶっこわれました。弐号機ともシンクロできなくなったようです。
しかし私としてはちょいと食い足りない。興味があるのは壊れたアスカがどう行動するか、なのです。座り込んで駄々をこねているだくではちょっと・・・第拾九話冒頭のシンジに匹敵する切れかたを期待します。
立ち入り禁止のリボン、そのままアスカの心情をあらわしていてグー。細かい演出がうまいね。
- 今週のシンジ
- 脇役が板についてきました。いーのか?こんなんで。
- 今週の予告編
- ちょっと待てぇ!まだレイが退場するには早すぎるぞ!!
レイはこのエヴァンゲリオンのおそらくはすべての鍵となるキャラです。それがこんなに早く退場とは・・・おそらく、真面目にガジェットも謎も収束させるつもりでしょう。キャラの話だけならレイの退場は第弐拾伍話後半か第弐拾六話前半に持ってくるでしょうから。(というか、私ならそーする)
しかし、レイにはリツコの母に殺された一人とかダミープラグにおそらく入ってる一つとか、けっこう予備がありそうで恐い。第拾九話のレポートで提唱した「レイ人造人間説」、当たったら当たったでちょっとイヤだ。
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Mar.,10,1996