第弐拾四話

最後のシ者

[The Beginning and the End,or "Knockin' on Heaven's Door" ]


<あらすじ>

 第3新東京市が消失して7日。アスカは廃虚の中のバスタブに体を沈めていた。
 思い出すのはセカンドチルドレンとして選ばれた日のこと、そして母親の死んだ日のことだった。彼女は弐号機とはシンクロできない今の自分を自嘲する。
 そんな彼女をネルフの諜報部が保護する。
 ミサトはフィフスチルドレン到着の報告と同時にアスカを保護したことを伝えられる。しかしこのタイミングに彼女は作為を感じる。
 シンジはタ−ミナルドグマの光景を思い出していた。そしてレイから感じたものの正体に思い当たる。シンジはゲンドウの行動に疑問を持つ。
 ダミ−システムを破壊したリツコはゲンドウにその理由を詰問される。リツコはゲンドウが好きでなくなったとだけ告げる。そして破壊したのはダミ−ではなく、綾波だとも。ゲンドウはリツコに失望したと告げる。望みも、期待も、そして愛も自分には与えられなかった。そう言い捨ててリツコは崩れ落ちる。ただ母を呼びながら。
 元は第三新東京市であった湖のほとりに立つシンジ。レイやアスカに会う勇気もなく、級友も疎開していった今、彼は孤独だった。
 そのときシンジは自分の名を呼ばれる。フィフスチルドレン、渚カヲルだった。
 委員会から直接送り込まれたカヲルの過去のデ−タはすべて抹消済み。唯一残された情報である生年月日はセカンドインパクトと同一日であった。その事実にミサトと日向はカヲルの正体に不穏なものを感じる。
 シンクロテストでカヲルはコアの変換も無しに弐号機とのシンクロをはたす。その高いシンクロ率にマヤはありえないことだと言う。
 カヲルはシンジと共に風炉へ行く。人との接触を怖がるシンジに、それでは傷つくこともないが、寂しさを忘れることもできない。しかしカヲルはそんなシンジを称賛し、好意を告げる。
 ゲンドウ初号機に向かってユイの名を呼ぶ。残る使途は1体。望みのかなう時は近いと。
 レイは考えていた。どうしてここにいるのか、なぜまた生きているのか、そして自分と同じ感じのするカヲルのことを。
 アスカは病院に、シンジは帰らない。ミサトは保護者失格ねと肩を落とす。彼女のマンションとペンペンは先の戦闘でも無事だった。しかし次の保証が無いことから、ミサトはペンペンをヒカリの家へ預けることにする。
 シンジはカヲルの部屋にいた。話を促すカヲルに、シンジは自分の昔の話をする。そのころ自分が父親を嫌っていたことも。そしてそんなことまで話してしまう自分の心に不安を覚える。
 ミサトは日向からカヲルの資料を渡される。そしてその資料の確認のため拘束されているリツコに会う。リツコはそんなミサトに、カヲルが最後のシ者だとだけ答える。
 カヲルはエヴァ弐号機を外部から操り、アダムへと向かう。発令所では彼を使途であると判定する。アダムとの接触、エヴァとの融合、そのどちらもが世界にとっての致命傷となる。追撃を命じられたシンジは嘘だと叫ぶが、ミサトは冷徹に事実を受け止めるようせまる。
 カヲルに追いついた初号機に弐号機が襲いかかる。流れたプログレッシブナイフがカヲルを襲う。しかし彼はそれをATフィ−ルドで受け止める。彼はシンジに自分がエヴァと同じアダムから造られたものであることを告げる。
 発令所でミサトは日向に自爆の準備をさせる。済まないというミサトに、日向はあなたと一緒ならばかまわないとだけ答えた。
 弐号機に阻まれる初号機をおいて、カヲルはヘブンズドアを開く。そのとき新たなATフィ−ルドの発生が確認される。そこにはレイがいた。
 カヲルはアダムを前にして、それの正体がリリスであることに気づく。そしてすべてを悟る。
 弐号機を倒した初号機の腕がカヲルを捕える。
 カヲルはシンジに向かって静かに遺言を告げる。自分が消えなければ君達が消えることになる。そして君は死ぬべきではない。君に会えてうれしかった。
 そしてカヲルの首が落ちる。
 シンジはカヲルと出会った場所にいた。傍らのミサトに、死ぬのは自分だったのではないかとつぶやく。ミサトはそんなシンジに、生き残るのは生きる意志をもった物だけだと答える。
 冷たいね。それだけをシンジはミサトに答えた。


<評価>


<感想とねたばらし>

 今回はかなり辛い点を付けています。理由は、第弐拾弐、弐拾参話との連続性が見えない雑な脚本、演出です。なんかラストにつなげるために無理矢理という感じがします。ほったらかしの伏線も多いし、当然語られるべきことが語られないのも不満です。

今週のアスカ、その壱
 だあああああ、こわれてる!!!
 廃墟のバスタブに体を沈めるアスカ、傍らにはきちんと折り畳まれた服がおいてあります。過度の神経衰弱ですね。もう自殺する気力もないほどだと思います。
 廃墟はおそらくヒカリの家でしょう。他にアスカが行けるところなんかありませんから。
 しかし、壊れたあげくに腐っていくだけっていうのはなあ。今後ちゃんとストーリーに絡んでくることを期待。

今週の無責任女、その壱
 諜報部からのアスカ保護の連絡を受けて、7日もロストしていた諜報部を毒突きます。で、あんたはその7日間なーにをしてたのよ。アスカ保護の連絡を受けた時の態度は仮にも保護者の態度じゃないぞ。アスカが飛び出して返ってこなかったにはミサトがちゃんとケアできなかったからでしょが。
 ま、このあたりはミサトのぼんくらぶりもありますが、演出もちょっと荒すぎるんじゃないかという気がします。

今週のリツコ、その壱
 結局やっていることは母親とおんなじですね。
 しかし特筆すべきはゲンドウの外道ぶり。二人の会話から、最初はゲンドウが無理矢理関係を持ったようにしか聞こえません。ここまで同人誌通りのキャラも珍しいなあ。
 アスカに引き続き今後が心配です。自ら死を選ぶとしても、「ただ死ぬだけ」というわけにはいかないでしょう。アスカ共々一騒動を期待。

今週のシンジ、その壱
 「どこにいったんだろう、アスカ」ってなあ、探しにいけよ。主役としての自覚がないぞ!
 どうも第弐拾話で復活してから鈍感ぶりに磨きがかかってきました。アスカの件もですが、前回レイ(2)が自分のために死んだことをちゃんと理解しているのでしょうか。
「綾波には会えない。どんな顔をすればいいのかわからない」このセリフは第六話ラストの綾波の「どんな顔をしたらいいのかわからないの」というセリフの引っ掛けでしょう。小技は効いているんですけどね。
「僕はどうすればいい」って、主人公の自覚をもてばいいんだって。

今週の2年A組
 いきなりみんないなくなってしまいました。いくらなんでもこれは雑でないかい?

5thチルドレン、その壱
 いきなり湖の彫像の上で口笛を吹く渚カヲル。このセンスはいいなあ。(^_^)
 「渚」は「シ者」ですね。名前については海…でしょうか。船関連では思い付きません。「君と同じしくまれた子供」、シンジ、意味わかっているんだろうな。

今週の日向君、その壱
 今回の名脇役ですね。ミサトの小姓としてカヲルの資料を収拾し、諜報部に対してハッキングを試みます。リツコさんの居場所を見つけたのはお手柄ですね。

5thチルドレン、その弐
 委員会から直接に送り込まれたカヲル。諜報部がアスカを7日間ロスト(したふり)をしていたのは弐号機をカヲルに明け渡すためにアスカを確実に壊しておく必要があったからでしょう。
 そしてその弐号機とあっさりシンクロ。マヤさんに理論的にありえないと言わしめます。つまりマヤさんはカヲルの正体を知らないんですね。

5thチルドレン&firstチルドレン
 をを、そっくり!カヲル君も兎だったのか!
 ちょっと思うことがあるのですが、最後にしましょう。

5thチルドレン&3rdチルドレン、その壱
 はっはっは、全国の同人作家が以下省略。外道親父もそうだけど、ガイナックスわかってやってるんだろうなあ。このへんちょいと深読みすると、制作側のそーいった同人誌に対する考えが浮かんできて楽しい。(推奨している、なんて言うつもりはないぞ。念のため)
 カヲルにどぎまぎするシンジ。カヲルとレイの類似性をここまででもっと強調しておけばさらに効果的だったでしょう。ちょっともったいない。
 しかしカヲル、口がうまいな。加持君の正当な後継者か。

今週の外道親父
 初号機に対してユイの名を呼びます。そりゃわかってたけどさ、ちょっとこれは演出が雑でないかい?
 しかしゲンドウ、全人類と自分の妻を秤にかけて妻をとった、というだけの人とは。ちょっと捻りがなさすぎ。(いや、まだ解らんぞ)
 ロンギヌスの槍はただ捨てただけでしょうか?それなら最初から話に出す必要は無いわけです。なんか役目があるのは間違いないと思う。

今週のレイ、その壱
 自分が三人めであることは知っている。そして二人めの記憶は持っていない。(弐拾参話でシンジを「あなた」と呼んでいる。レイ(2)なら「碇君」と呼ぶはずである)
 それでなぜ「また生きているの」という言葉が出てくるのでしょうか。このレイ(2)とレイ(3)の関連がきちんと描けているとはいえませんね。演出が荒いぞ!と言いたいところですが、これは第弐拾伍、六話への伏線の可能性あり。

今週のペンペン
 万が一を考えてヒカリのところへ里子に出されます。と、いうことは本編で彼のことが語られることは無いのか?ただのマスコットだったのか?第六話でのあの存在感はなんだったんだあ!!(漫画では第2巻のラストでうまい使われかたしてるんですけどねえ)

5thチルドレン&3rdチルドレン、その弐
 細々とした会話をしていますが、風呂からこっち二人が友人となってゆくプロセスを丁寧に描いています。
 このあたりの演出はうまいです。

今週のリツコ、その弐
 5thチルドレンについてミサトに尋ねられ、「最後のシ者」とだけ答えます。
 これもちょっとひどいなあ。なんのかんの言っても結局人に頼るしか無いミサトというのはいいんですが、リツコさんの答えがわけわからん。

今週の第17使徒
 さて、カヲル君が弐号機を従えてアダムへ向かって侵攻を開始します。
 人型の使徒っていうのは最後にふさわしいですな。
 弐号機の心について語りますが、この心というのはアスカ自身のことでしょう。
 エヴァについていろいろ蘊蓄をかたってくれますが、今回は保留。だって考える材料が無いんだもん。総て次回以降への伏線でしょう。(でなきゃ怒るぞ)

今週のゼーレ
 第17使徒を待つのがめんどくさくなったらしく、自らカヲルを造って送り込みます。ここで疑問になるのはもれまでの使徒とゼーレの関係です。まさか全部の使徒をゼーレが造ったとは思えません。とすると、オリジナルの第17使徒は??
 必要とされるのは物理的な使徒の存在ではなく、使徒が存在したという事実だけなのでしょうか?
 使徒の正体が解らないとどーしようもないですね。

今週のシンジ
 「裏切ったな、僕の気持ちを裏切ったな」、いるんだこーゆーやつ。一人で盛り上がって一人で裏切られたと思い込むやつ。相手の気持ちなどぜんぜんお構いなしである。
 第弐拾話以降ただ鈍感になっただけに見えるぞ。

今週の日向君、その弐
 自爆の準備を指示するミサト。「すまないわね」というミサトに「いいですよ、あなたといっしょなら」。
 うーむ、これは盲点だった。思い付く伏線は第弐拾話くらいです。こうもってくるなら、加持に対する日向のさりげないアクションがほしかったですね(靴に画鋲を入れるとか、階段から付き落とすとか ^^;)。見落としているだけかな?
 ミサトがたぶらかすような甲斐性を持っているとは思えません。美人上司に惹かれる部下という構図ですね。

今週のレイ、その弐
 ATフィールド発生っておい!生身でそんなことできるなら第弐拾参話で零号機といっしょに自爆する必要ないじゃないか!!(脱出して外部からATフィールドで押さえこめばよかったのである)
 これはちょっとひどい。おまけになんのためのATフィールドかも解らず終い。話の流れから言えば、レイはあそこにいればよいのであって、アクションをおこす必要があったとは思えません。

今週のアダム
 リリス。エヴァの前のアダムの妻、そして悪魔たちとの間にリリンと呼ばれる子供を造った呪われた女。黙視録に記された大淫婦。
 のこり弐話で新しい伏線出すか普通?あ、普通じゃないのか。

今週のカヲル、その壱
 アダムと思った物がリリスであることを知り、人の考えを知って自らの死を選ぶカヲル。
「弐号機は君にとめておいてもらいたかった。そうしなければ彼女といきつづけたかもしれないからね」
 この彼女は弐号機のことでしょう。
 「未来を与えられる生命体は一つ」、人と、もう一つはなんなんでしょう。これは明確に伏線ですね。
 シンジと、そしてレイに対して、君達には未来が必要だ、と言い残します。彼が自分の分身たるレイに何をたくしたのか。彼女の役割はなんなのか。このあたりは残りに2話に期待しましょう。

今週のシンジとミサト
 これはひどいよなあ。前半あれだけ友人になるプロセスを描いておきながら、カヲルを殺した後淡々とそのことを語るシンジ。前半はなんだったの?遠い日の過ちみたいな口調で言うなよ。
 ミサトもミサトだ。「あなたが生きていてくれてうれしい」とでも言えばまだくさいなりに落ちがついたのに。
 とりあえずこのシーンは見なかったことにしよう。

今週のカヲル、その弐
 外見はレイそっくりで、第弐拾弐、弐拾参話があることから、カヲルはレイとアスカから造られていると見るのは自然なことでしょう。しかし、外見そっくりなレイはともかく彼を通してアスカは見えてきません。第弐十弐話が関連無しということだとあの話自身の存在価値というものが薄くなってきます。
 このあたりも演出として継続性が無いなあ、と思います。

 第弐十話以降だんだんと演出が荒くなってきています。後の回でフォローされるだろう、と思っていたのですが・・
今回を見ていると実は「なにも考えていない」んじゃねーか?という疑惑がふつふつと・・(-_-;;)
 このマイナス評価はそのまま次回第弐拾伍話の期待値に加算することにしよう。


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Mar.,27,1996