第弐拾伍話

終わる世界

[Do you love me?]


<あらすじ>

 カヲルを殺したことをシンジは悔やむ。なぜ彼を殺したのか。
 シンジの中の綾波は自分と同じ物をなぜ殺したのかと彼に尋ねる。
 彼は使途だった、彼を殺さねば自分が、自分達が死んでしまう。しかたがなかったのだとシンジは信じようとする。
 シンジはカヲルが生き残るべきだったとミサトにつぶやく。しかしミサトはシンジは間違っていないと告げた。
 シンジはその答えに確信を持てないでいた。本当にそうなのか、自分は間違ってはいないのか。そして、なぜエヴァに乗るのか。好きな人を殺してまでも。
 父親に嫌われないため、そしてみんなのためだ。
 しかしそれは結局自分のためだ。シンジがそこにいてもよい条件。そして彼はそこで人から幸せを与えられることを待っているだけだ。シンジに向かって、彼の中のアスカはそう告げる。
 アスカはエヴァ弐号機に乗っている夢をみていた。動かない弐号機のコクピットでひざを抱えるアスカ。
 どこからかレイが彼女に話しかける。一人になるのが恐いのか、他人と別れることで自分が消えてしまうと思っているのだと。
 しかしアスカはその声を拒絶する。
 レイは自分達と向かっていた。零号機のレイ、赤木博士に殺されたレイ1st、零号機と共に消えたレイ2nd、そしてレイ3rd。
 レイ3rdは自分は自分だと言う。しかしレイ1stは自分達は人のまねをしている物体にすぎないと答える。ゲンドウに与えられた、偽りの魂を持つ物であると。
 レイ3rdは否定する。私は私になったのだ、人との触れ合いと時の流れが自分の心を変えていくのだと。
 レイ1stは今のレイが自分の本質でないと言う。自分達は自分がなくなることが恐いのだ、本当の自分がヒトでないことを知るのが恐いでしょうと問う。
 しかしレイ3rdの望みは絶望。自分が消えること、無へと返ること。ゲンドウがそれを望まないかぎり適えられない望みと知りながら。
 ずっとその日を願っていた。そのはずなのに今のレイはそれを恐ろしいと感じていた。
 ゲンドウがレイを迎えに来る。今日、この日のためにレイはいたのだと言って。
 そして――――
 人類の補完が始まる。

 人々が失っているもの、喪失したもの、心の隙間。その心と魂を一つとして永遠の安らぎを得る。全てを虚無へと還す、あるいは全てを始まりへと戻すための。
 人々の補完が始まった。

 ミサトは何を願うのか。
 父に嫌われないこと、人に好かれること、必要とされること、孤独でないこと。
 しかし認められているのは認められようと演じている自分。
 これは幸せなんかじゃない、私の望んだものはこんなものじゃない。

 アスカは何を望むのか。
 一人で生きること、泣かないこと、必要をされること、孤独でないこと。
 父親も、母親も自分を守ってくれない、だから、私は一人で生きる。
 しかしだれも一緒にいてくれない、さみしいの、一人はいや。

 僕を見捨てないで。
 私を捨てないで。
 私を殺さないで。
 シンジは舞台の上のシンジ、ミサト、アスカを見ていた。
 彼は小さな講堂の中心にいた。シンジの傍らに立つ彼の中のミサトが言う。これが人類補完計画、その一部だと。
 そしてシンジの中の人々が次々と彼に聞かせる。この小さな世界が、舞台の上の誰も救われない、破滅した世界が、これが彼の望んだ世界であることを。
 閉鎖された自分だけが心地いい世界、自分を守るだけの閉塞された世界、嫌いなものを排除し、より孤独な世界、シンジの願った世界。
 そして導き出されたのがこの小さな安らぎの、他人が生きてゆくことができない世界。
 この形も、終局のなかの一つ。
 シンジ自身が導いたこの世の終末。
 そして、補完への道は、続く。


<評価>


<感想とねたばらし>

今週のシンジ
 カヲルを殺したことを必死に正当化しようとします。
 前回のラストを酷評しましたが、まさにこれが足りなかった。たしかに難しいシーンですが頑張って欲しかったですね。
 しかしなあ、第拾六話から第弐拾話があってこれかい?

今週のアスカ
 第弐拾弐話のくり返しです。
 そんだけ。

今週のミサト
 第拾弐話と第拾伍話と第弐拾壱話のくり返し。
 そんだけ。

今週のレイ
 レイ勢揃い。壮観ですなあ。
 でも第六話と第拾四話と第弐拾参話のくり返し。
 そんだけ。

今回の話
 見終った時、脳裏を駆け巡ったのは「2001年宇宙の旅」「地球幼年期の終わり」「ブラッドミュージック」「ビューティフルドリーマー」「ハレーションゴースト」「紅い眼鏡」「トーキングヘッド」「風の谷のナウシカ」えとせとらえとせとら……
 とりあえずここへ来るまでにキャラクターが次々と壊れて来たことには納得。ここへ健康的でまっすぐな人間を持ってきてもつまらんわな。
 しかし、第弐拾話があってなんで今更という気もかなりします。
 でもなあ……ま、最終的な評価は最終回待ちですね。
 ただ「この形も、終局のなかの一つ」と逃げとも言えるセリフが出てくるのが気になる。私の見当違いの深読みであることを期待。

人類補完計画
 やりたいことは<補完機構>と同じですね。人類全体が一つになって進化の次のステージへ…というのはSFではすでに古典となったテーマで、「地球幼年期の終わり」「ブラッドミュージック」という傑作がありますな。
 「ハレーションゴースト」もこのテーマと言えばこのテーマだよなあ、メインは違うと思うけど。

劇場空間
 シンジの心の作り出した講堂とその舞台。オシイスト大爆笑。
 こういった劇場空間というと「紅い眼鏡」「トーキングヘッド」の全編、そして「ビューティフルドリーマー」のラス前、無邪鬼の造り出す小世界を髣髴とさせます。
 ところでこの3編、全部バッドエンドなんだよねぇ。こまったもんだ。
 あと「風の谷のナウシカ」の最後に出てくる集合意識とヒドラの管理する庭園、あんまり関係ないけどなぜか連想。
 あとは進化に至る小部屋ということで「2001年宇宙の旅」。HALの叛乱話がラストでいきなり一見無関係な話になるあたりエヴァも構造を同じにします。この場合モノリスはエヴァンゲリオン初号機ですね。

次回・「世界の中心でアイを叫んだけもの」
 アイ・愛・逢い・哀・会い・I…
 どーなることやら。

 後半に入ったあたりから、膨大な聖書関係のガジェットは実はメインテーマとぜんぜんからんでこないんじゃないのか?という予感はしていましたが…ここまでとはなあ。(^_^;;)
 とりあえずとにかく来週に期待。(伏線?あきらめた ^^;)


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Mar.,31,1996