§8  XYZ Files


「すみません。僕はEBIの捜査官なんですが、訊きたいことがあるんですけど」
 誠はEBI特別捜査官の身分証明を見せながら言う。
「何ですか?」
「このあたりにUFOが出たって話なんですけど、それについて何かご存じじゃあ
りませんでしょうか?」
「いえ。私は存じません」
「そうですか。ありがとうございます」
 誠は相手に軽く会釈する。
 相手はあまり関り合いになりたくないのか、逃げるように去ってしまった。
「ふぅー。なかなか難しいですねえ」
「根気どす。根気良く続けていれば、成果はあがります」
「そうですね。頑張ります」
 EBI(エルハザード捜査局:El-Hazard Bureau of Investigation)の特別捜査官、
アフラと誠は聞き込みを続行した。
 聞き込みの内容は、最近この近辺に現れ、シェーラ・シェーラという女性の他幾
人を誘拐したというUFOについてだった。
「しかし、UFOは何の目的でこの女性を誘拐したんでしょうかね」
「さあ。分かりまへん。だいいち、UFOが本当に現れたのかさえ定かじゃありま
へんからな」
「そうですね。まあ、聞き込みを続けましょう」
 こうして聞き込みの結果、二人はUFOが現れたという場所を知ることに成功し
た。

 人気のない山の中。あたりはしんと静まり返り、動くものも、音をたてるものも
何一つ存在しない。
「ここが最後にUFOが現れたという箇所でっか」
 アフラはあたりを見回して言った。
「はい。聞き込みによれば、そうです」
「じゃあ、あたりを探索してみまひょ」
「そうですね」
 アフラと誠はそれぞれ別々に歩き始めた。と、その刹那----
 ゴゥオォォォ………
「な、なんどす!?」
 地響きのような不思議な物音に、アフラはとっさに身構える。
 次の瞬間、天から膨大な量の光が降ってきた。
「うわあああぁぁっ!!」
「きゃああぁぁっ!!」
 ----何か巨大なものが空に浮いている。
 それだけ知覚できた所で、記憶はとぎれた。

「……ん…。うぅん…」
 頭ががんがんする。心臓の鼓動が耳にやかましい。しかしそれは同時に、自分が
生きているということを認識させた。
「…うーん……」
 もう少し寝ていたい気もするが、仕方なく目をゆっくりと開く。最初に目に入っ
てきたのは“白”だった。
 あたり一面を白が覆っている。しばらくして、それが白い部屋だと気づいた。そ
して、隣で誠が気絶している。
 誠と一緒だということが分かると、急にほっとした。
 誠はすやすやと眠っている。アフラは誠の髪をそっとかきあげてやった。
「ぅうん…。
 あ、アフラさん。僕たちどうなったんですか?」
「分かりまへん。ただ、どうやらUFOに捕まったみたいどすえ。ここは宇宙船の
中みたいどすな」
 アフラは肩をすくめてみせる。
 確かに、部屋に唯一ある出口らしきものは得体の知れないバリアのようなもので
塞がれていた。
「そうですか…。すみません。僕がしっかりしていないばかりに…」
 誠は頭(コウベ)を垂れる。アフラはそれを見て、微笑んだ。
「別に誠はんのせいやおまへん。気にしなさるな」
「はあ…。それにしても、僕たちこれからどうなるんでしょう…」
「こういう時は、EBI捜査官心得を読んで、気を落ち着けるんどす」
「はあ。そうですね」
 アフラと誠はEBI特別捜査官の手帳を取り出すと、開いた。捜査官心得を読む。
「『EBI捜査官たるもの、冷静沈着、質実剛健、公明正大、天地無用、才色兼美
にありて候。なお、死して屍拾う者無し。死して屍拾う者無し』」
 読んでいる途中から、声が上擦ってくる。
「…変な心得ですね」
「EBI捜査官たるもの、いついかなる状況においても、臆することなく、真実を
求めて歩き続けなければならないんどす」
 アフラは手帳の捜査官心得のページを破くと、丸めて捨てた。
「はあ。そっちの方が分かりやすいです」
「それにしても、うちらを捕まえた奴等は現れへんのどすかなあ」
「そうですね。捕まえた以上、出てきてもよさそうなものなんですけど…」

 結局、アフラたちを捕らえた連中は彼女らが目覚めてから数時間経過しても現れ
なかった。
 アフラは額から脂汗をだらだら垂らし、身体中の筋肉を硬直させていた。
「アフラさん、どうしたんですか? 脂汗かいてますよ」
「な、なんでもないんどす。心配せんでおくれやす」
「はあ…」
 アフラは誠と顔を合わせないようにし、部屋の隅に縮こまる。
(くぅぅ〜〜。ままままずいどす。このままだと、漏らしてしまいそうどす…)
 アフラは尿意に苦しんでいた。
 さらに数10分経過。
(だだだ駄目どす! もう限界! あと数分で確実に漏らしてしまうどすぅ!)
 膀胱がきりきりと痛む。アフラは誠と一緒の状態で、この状況をどうやって打開
するか必死に考えていた。が、何も思いつかない。
「アフラさんどうしたんですか? 体が震えてますよ」
「ままままま誠はん」
 歯の根の合わない声で喋るアフラ。
「何ですか?」
「頼むから、うちの方を見ないで、あっちを向いててくれまへんか?」
「は、はあ…」
 誠は言われるがままに、後ろを向く。
 と----
「あれが新しく捕まえた人間たちか」
「はい」
 バリアの向こうの通路から声が聞こえてきた。人影らしきものも見える。
「あっ、人や!」
 誠は身構える。アフラはいまいち動けない。
 人影はすぐに誰か識別できるまでになった。
「ご機嫌よう。地球人の諸君」
「あんたらは…?」
「ふ。名乗るほどの者ではない」
「ストレルバウ博士じゃないですか」
 誠の指摘に、ストレルバウは一時沈黙する。
「…そういう名前もあるが、今はどうでもよい」
「あんたら宇宙人どすな!」
 アフラはかなり差し迫った表情で訊く。
「はい。この世界ではそういうことになってますぅ」
 宇宙人その2(アレーレ)が答える。
「うちらをどうするつもりどす!?」
「きみらには、わしらが地球を征服するための礎になってもらう」
「な、なんですと!?」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。きみらはわしらの科学技術によって、改造されてしま
うのだよ」
「なんやってえ!?」
 アフラと誠は驚愕する。
 と、その時新たな人影が現れた。
「シェ、シェーラやおまへんか!」
「はん。てめえに復讐するために、やって来たぜ。覚悟しな、アフラ!」
「くううぅぅ…」
「シェーラさん、捕まったんじゃないんですか?」
「あたいはアフラに復讐するために、こいつらの仲間になったのよ」
「アフラさん、シェーラさんに何かやったんですか?」
「ま、まあ色々とやってはおりますが、復讐されるほどのことは…」
「てめえ、本気で言ってるのか!?」
 シェーラはアフラを睨みつける。そこへストレルバウが割って入った。
「ふぉっ、ふぉっ。ではさっそく改造してしまうよ。牢から出てもらおう」
「よし。出るんだ、アフラ」
 シェーラは牢を開けると、アフラの腕を引っ掴む。
「くううぅぅ…」
 アフラは膀胱が痛くて、抵抗できない。
「アフラさん!」
「誠はん…。耐えるんどす」
 アフラと誠は別々に牢から出された。二人はそれぞれ違う場所へ連れられていく。
 アフラは誠の姿が見えなくなってしばらくすると、がばっとシェーラにとりつい
た。
「な、なんだよアフラ!?」
「たたた頼みますから、トイレに行かせておくれやす!」
 かなり差し迫った様子でシェーラに迫るアフラ。
「あん? トイレ?」
「お願いどすぅ…」
「ほほー。トイレねえ…」
 シェーラの顔が悪魔的な笑みを浮かべる。それを見て、アフラはぞっとした。
「お、お願いどすから、いじわるせんでおくれやす…」
 アフラは目に涙をためながらいやいやをし、精一杯同情をひこうとする。
「いじわるねえ…」
 笑みは崩さぬまま、アフラの肩に手を掛けるシェーラ。
「ひっ。ひいっ!」
 シェーラは腕に力を入れる。アフラは倒されそうになって、か細い悲鳴をあげた。
 口の端で笑うシェーラ。
「おやおや。可哀想にねえ」
「ううぅ……」
 アフラは恨めしそうな顔でシェーラを見ることしかできなかった。

 アフラは手術台の上に載せられていた。結局シェーラにさんざん弄ばれた挙げ句、
なんとかトイレには行かさしてもらっていた。彼女は未だに半べそをかいている。
「なるほど。失禁しそうになったか」
「少しだけ漏らしちまったみたいだがな」
 シェーラはご満悦の様子だ。
「うううぅぅ…」
「ま、とにかく手術してしまおう」
 宇宙人その3(ファトラ)はメスを取り出すと、アフラに近寄った。
「な、何をするんどすか!?」
 メスを見て、戦慄するアフラ。
「なにって、改造手術じゃ」
 それに対して、ファトラはしれっと言った。
「か、改造手術!?」
「というわけで、ゆくぞ」
「ちょ、ちょっと待ちなはれ! 誠はんはどないなっとるんどすか?」
「ああ。誠なら、ストレルバウが手術しておるはずじゃが…」
「な、なんですとぉ!?」
「とにかく、そなたを手術する。じっとしておれ」
 ファトラは左手でアフラの体を押さえると、右手に持っているメスを近づける。
「や、やめるんどす!」
 アフラはファトラの腕を掴んで止める。
「ええい、放さんか。シェーラ、アフラを押さえてくれ」
「よしきた」
 シェーラはアフラの両腕を押さえた。
「シェ、シェーラ! やめるんどす!」
「はん。片腹いてえぜ」
「よし。ではいくぞ」
 ファトラは再びアフラにメスを近づける。
「いやや! いややぁー!」
 アフラは足をばたつかせて抵抗する。
「ええい! じっとしておらんか!」
「ファトラ、あたいが押さえてるから、早くやれ!」
「ではいくぞ!
 ----えい」
「ひあああぁぁ!」
 ファトラのメスがアフラを襲う。
 次の瞬間、メスは肉を切り裂いた。
「く…。くくく……。くぅぅぅぅ……。……いたああぁぁーーーいぃっっ!」
 ファトラはもんどりうって床に転がる。
 メスはファトラの尻にぶっさり突き刺さっていた。アフラがメスを足で蹴ったた
め、目標がずれたのだ。
「あ! てめえよけやがったな!」
「ええい! 放しまへんか!」
「うわっ!」
 アフラは力任せにシェーラを振り払った。
「痛い! 痛い! いたぁぁぃぃぃ……」
 ファトラは目から大粒の涙をぽろぽろとこぼして痛がっている。
 アフラは脱兎の如く逃げ出した。
「あ! 待ちやがれ!」
 それを追うシェーラ。後にはえぐえぐとべそをかいているファトラだけが残った。

 アフラは宇宙船の中を必死に走っていた。
「早く逃げないと。でも、その前に誠はんを助けんと!」
 アフラは誠を探して、通路を走っていく。ある部屋に入った。
 と----
「ま、誠はん!」
 果たして誠はいた。焦点の合ってない目をして、突っ立っている。
「むう! 貴様、逃げてきおったな!」
 ストレルバウも一緒にいる。
「誠はんを返しなはれ!」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。残念ながら、間に合わなかったようじゃな」
「な、なんですと!?」
「誠の改造手術はすでに完了した! 誠はすでに誠ではないのだぁ!」
「ま、誠はん!」
「…………」
 アフラは誠に駆け寄る。誠はボディースーツのような、変な服装をしていた。そ
れに加えて、なにやら機械のようなものがついている。
「誠はん! 誠はん! うちどす! アフラどす! 分かりますか?」
「…………」
 アフラは必死に誠に声をかける。が、誠はちっとも反応しない。
「無駄じゃ。以前の記憶は総て消されておる!」
「なんということを…」
 アフラはがっくりと膝を落とす。
「ふぉっ、ふぉっ。誠はすでに人間兵器じゃて。彼は最強の鬼神として生まれ変わ
ったのだぁ!」
「き、鬼神!?」
「そう! 神の目に次ぐ最終兵器、鬼神じゃあ!」
「鬼神…。最終兵器…」
 アフラの頭の中で、それらの言葉がぐるぐると回る。
「アフラ! 追い詰めたぜ!」
 そこへシェーラが駆け込んできた。彼女は誠が鬼神に改造されているのを見つけ
る。
「誠。鬼神になったのか…」
 ストレルバウはアフラのそばに歩み寄った。
「さあ、君も改造させてもらうよ。なに、改造されてしまえば、記憶は総て消され
る。そうすれば、悲しくもなくなるじゃて」
 アフラは何か気づいて、ばっと立ち上がる。
「そ、そうどす! 鬼神なら、ゼンマイがあるはずどす! ゼンマイはどうなって
いるんどすか?」
「ゼンマイなら、ここにある。これを持ったものは誠の主人となるのじゃ」
 ストレルバウは誇らしげにゼンマイを取り出すと、アフラに見せる。
「ほほー」
 アフラはすたすたとストレルバウに近寄ると、問答無用で殴り倒す。
「ぐぎゃあ!」
 ストレルバウは一撃で昏倒した。アフラは彼からゼンマイを奪う。
「あ! てめえ誠の主人になるつもりだな!」
 アフラの企みを看破し、彼女に詰め寄るシェーラ。アフラは一人、ポーズなどと
ってみせる。
「これは誠はんの思い出にうちが頂いておきます。
 というわけで----」
 アフラは誠に近寄り、ゼンマイを差し込む穴を探し始めた。
「てめえ、誠に言うことを聞かさせるつもりだろ! そうはさせねえぜ!」
 シェーラはアフラからゼンマイをひったくる。
「あ! 何するんどすか!?」
「これはあたいが頂いておくぜ」
「そないなこと言って、誠はんを自分のものにする気どすな!」
「ふ。あたいは改造されちまった誠が今まで通りでいられるようにゼンマイを管理
するだけだ」
 シェーラは誠にゼンマイを差し込もうとする。
「そないなこと信用できますかいな! ゼンマイを渡しいや!」
 アフラはシェーラに飛び掛かった。
「てめえ、やる気か!? 今度は負けねえぞ!」
 アフラとシェーラはゼンマイを取り合って、喧嘩を始めた。
 二人は方術を使って、お互いを狙撃しようとする。

「うううむむ…。あいたたたた…。小娘め、いきなり殴りおってからに…」
 ストレルバウは腹を押さえながらよろよろと立ち上がった。そして、あたりの光
景を見て、息を飲む。
「ななな何をしておるのじゃ二人とも!? 宇宙船の中で方術など使ったら、宇宙
船が壊れてしまうぞ!」
 ストレルバウの絶叫むなしく、すでに宇宙船はダメージを受けており、非常警報
を知らせるアラームが鳴り始めていた。
「や、やめんか! 早く修理せんと、墜落してしまうぞ!」

             ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

「おのれえ、アフラの奴め、わらわの尻にメスを突き刺すとは。必ず仕返ししてや
る…」
「大丈夫ですか、ファトラ様?」
 ファトラはアレーレに傷の手当をしてもらい、松葉杖をつきながら歩いていた。
向かうはアフラたちのいる部屋だ。
 ファトラはアフラたちのいる部屋に到着した。
「おや、なんじゃ? どうも様子が変じゃな」
「なんか、ゼンマイを取り合いしてますね」
 怪訝な顔をするファトラ。
 ストレルバウはファトラたちが来ているのに気づいた。
「おお、ファトラ姫にアレーレ! アフラ殿とシェーラ殿がゼンマイを取り合って
喧嘩しているのです。何とか止めて頂けませんか? 早くしないと、宇宙船が墜落
してしまいます!」
 確かに、宇宙船は軽く揺れ始めていた。エルハザードの重力に捕まったのだ。
「あのゼンマイは誠のものか?」
「はい」
「ほほう」
 ファトラは鬼神誠とゼンマイをしばらく見比べていたが、やがてあることを思い
ついた。
「アレーレ、ゼンマイを取ってこい」
「わっかりましたぁ!」
 アレーレはアフラとシェーラに近づくと、身軽な動作でゼンマイを奪い取った。
「ああっ!」
「あっ! ゼンマイを返しやす!」
「はい。ファトラ様」
「うむ」
 アレーレはファトラにゼンマイを渡す。
 ファトラは素早い動作で誠にゼンマイを突っ込むと、コマのようにしてくるくる
と回した。
 アフラたちが止める間もなく、誠の体が細かく震えだす。
「ああー! なんちゅうことを!」
 ほどなくして、鬼神誠が覚醒した。アフラとシェーラは呆然とそれを見守る。
「僕のご主人は君やね?」
 鬼神誠はファトラに向かって訊く。
「うむ。そうじゃ」
「じゃあ、命令をどうぞ」
「よし。それではそこの黒髪の女の尻にこのメスを刺すから、女を取り押さえろ」
 ファトラは誠にメスを見せながら言う。
「分かりました」
 誠はアフラに近寄る。
「え? え?」
 何がなんだか分からず、うろたえるアフラ。
「じゃあ、失礼します」
「え?
 きゃっ、きゃああああぁぁぁーーーーっっ!!」
 誠はいきなりアフラを床に押し倒した。
「誠! てめえ何やってんだよ!!」
 顔を赤くして叫ぶシェーラ。が、誠は気にもしない。
「ま、誠はん! やめて! やめておくんなまし!」
 アフラは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「すみません。命令ですから」
「いやあああぁぁーーーーっっ!!」
 アフラは全力で抵抗する。しかし相手は鬼神だけあって、全く歯が立たない。
「誠ぉ! やめやがれ!」
 シェーラは誠をアフラから引き剥がしにかかる。が、やはり歯が立たない。
「すみません。やめてもらえますか?」
「誠ぉ! 正気に返りやがれぇぇ!!」
 シェーラはさっきにも増して強い力で誠を引き剥がそうとする。
「やめてもらえないなら、ちょっとすみません」
 誠は片腕でアフラを押さえつつ、もう片腕をシェーラに延ばした。
「え? う、うわああぁっ!」
 誠はシェーラも押し倒した。
「誠! 誠! やめてくれえっ!!」
「すみません。邪魔されると困るんです」
 誠はアフラとシェーラを一緒に床に押さえつける。
「いやあああぁぁっっ!!」
 シェーラは半べそをかき始めた。
「さ、取り押さえましたよ」
「うむ」
 ファトラはさっそくアフラに近寄ると、メスを構えた。
 と----
「だ、だめじゃああぁ! 墜落するうぅぅ!!」
 ストレルバウが絶望的な叫びをあげる。床は大きく揺れ始めていた。
「アフラ! わらわの尻にメスを突き刺した仕返し、させてもらうぞ!」
 ファトラがメスを振り上げ、振り下げる。
 メスがアフラの尻に刺さるのと、宇宙船が墜落するのは同時だった。
「んきゃああああぁぁっ!」
「うぎゃああああっっ!!」
「ひいいいいいっ!」
「うわあああっ!」
「ひええええぇぇーーーっ!!」

 エルハザードの地表。そこにもうもうと黒煙をあげているものがあった。言わず
もがな、アフラたちの乗っていた宇宙船である。
 あたりにはボロボロになったアフラたちがぶっ倒れていた。
「はあ……。シリアスだったら、みんな死んでいた所ですね…」


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