§12  責任とってね


「ふぅー。やっとこ我が家やな」
 ここは地球。誠はほっとしながら家のドアを開けた。
「おかえり、誠ちゃん!」
 玄関で待ち構えていた菜々美が誠に飛び付く。
「な、菜々美ちゃん!? なんで僕の家におるんや?」
「なんでって、誠ちゃんがいない間、私がずっと誠ちゃんの家の留守を守っていた
んじゃない。もうばっちり留守番したわよ! NHKには1円も払ってないし、新
聞の勧誘は景品だけ取って追い返したし、訪問販売も全部追い払ったわ! もう完
璧よ!(ハァト)」
「はあ…」
「でね…でね、誠ちゃん…」
 誠にしなだれかかる菜々美。
「ん、なんや?」
「私ねーー実はーー」
「どうしたんや?」
「実は…私ね……その……。私のお腹には、誠ちゃんの子供がいるのぉ!」
「ええぇっ!?」
 驚く誠。菜々美は片手で誠の腕を自分の胸に抱き、もう片手を自分の下腹にあて
た。
「誠ちゃんの子供が産めるなんて…。私、幸せ」
「はあ…」
 誠は必死で自分の記憶をまぜっかえす。
(うーん、おかしい! おかしいでぇ! そないなことぜんぜん記憶にないはず…。
ないような…。あれっ? 記憶にないはずなのに、身に覚えがあるような…。そん
なはずは…おかしいでぇ! やったことないはずなのに、やった気がする! なん
でやあ!?)
 刹那、突然の声の乱入により、誠の思考は中断された。
「ちょっと待てえ! 誠! あたいの腹にも誠の子がいるぜ!」
 どこからかシェーラが現れ、菜々美と同じように誠に抱きつく。
「ええーーっ!!」
「ちょっと誠ちゃん! シェーラも妊娠させてたの!?」
「いやあ、そんなはずはあるようなないような…」
 と、再び別の声。
「ちょっと待ちいな! うちも誠はんと契りましたで!」
「ええーーっ!?」
「おい誠! なんでアフラまで妊娠してんだよ!?」
「そないなこと言われてもー……」
 と----
「まあ、私も誠様の子を孕んでますわよ」
「おや、私だけじゃなかったんですね。お姉様方全員を妊娠させていたなんで、誠
様も隅に置けませんね」
「あー! なんで私までぇ! 藤沢様ぁ! 私のこと嫌いにならないで下さいまし
ねえ!」
「ちょちょちょちょっとおお!」
 絶叫する誠。
「ふーん。誠はみんな妊娠させておったのか」
 ファトラが何か食べながら現れた。
「あ、ひょっとしてファトラ姫も妊娠してるの?」
「食べるか? うまいぞ」
 ファトラは菜々美に向かって包みを差し出す。
「何これ?」
 菜々美は包みの中から塊を一つ取り出すと、口に含む。
「人工流産剤」
「ぶぅーーっ!」
 菜々美は口に含んだ物をすぐに吐き出した。
「汚いな」
「……あー誠ちゃん! じゃあみんな妊娠させていたのね! なんて酷い人なの!」
「誠ぉ! てめえは女の敵だぁ!」
「だだだだぁかぁらぁー!」
「問答無用よぉ!」
「ぎええええぇぇっ!!」
 こうして誠はめったうちにされた。
「ふう…。虚しいぜ…」
「そうね…。この世界だけとはいえ、虚しいわ…」


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