§16  泥レス


「はい! 今回はSSのテーマからは外れて、エルハザード女性キャラ対抗泥レス
水原誠争奪杯を執り行いたいと思います! なお、優勝賞品の誠様は実行委員会に
よってすでに捕獲されております!」
 リング手前でアレーレが元気よく司会をする。
「なんでやぁ〜! なんでなんやぁ〜!? 僕が何をしたぁー!」
 十字架にくくりつけられた誠は力の限り抗議を発していた。が、もちろん全て無
視されている。
「はい。それでは第1試合、菜々美お姉様対シェーラお姉様でぇーす!」
 水着姿の菜々美とシェーラがリングにあがる。
「解説はファトラ様とストレルバウ博士が行います」
「ハプニングが起こることを期待します」
「では、第1試合、始め!」
 カーーン☆
「たりゃあああぁぁっ!!」
 菜々美はシェーラに掴み掛る。
「はあっ!」
 どべっ!
「おおーーっと! シェーラお姉様、菜々美お姉様を一撃で転ばせました!」
 泥塗れになった菜々美はゆるゆると立ち上がった。
「うーむ、胸元が泥で隠れているのがなんともそそりますなあ…」
「さすがに大神官とシビリアンとでは戦闘能力にかなりの差があるようです。大丈
夫でしょうか!?」
「なぁーんの! 腕力でだめなら、暴力で勝負よ!」
 再びシェーラに向かう菜々美。
「とわああぁぁっ!!」
 暴力で勝負というわけで、シェーラの顔面めがけてパンチを放つ。
「たあっ!!」
「ああっと! シェーラお姉様、菜々美お姉様を投げ飛ばしたぁっ!」
「なんのなんの! 暴力でだめならスーパー暴力にパワーアップして勝負よ!」
 シェーラに向かって構える菜々美。
「はあっ!」
「ぎゃふんっ!!」
 が、結局シェーラの正拳が菜々美の顔面にヒットし、菜々美は泥の中に沈んだ。
「この勝負、シェーラお姉様の勝ちです!」

「では第2試合、菜々美お姉様対アフラお姉様です。
 第2試合、始め!」
 カーーン☆
「「たあああああっ!!」」
 菜々美とアフラは取っ組み合う。すぐに泥の中に倒れ込んだ。
「おおっ! チチの揺れが素晴らしい! 芸術的ですな!」
「ああっと、菜々美お姉様、アフラお姉様のブラに手を……おおーーっと、アフラ
お姉様のブラが取れましたぁーーっ!!」
「きゃあああぁぁっ!!」
 アフラは両手で胸を隠す。ここぞとばかりに菜々美は攻撃に出た。
「アフラお姉様は片手で胸を隠しつつ、もう片手で攻撃を防いでいますね」
「アフラ殿! 片手では不利ですぞ! 両手で戦うのです!!」
「じゃかあしい!」
 ストレルバウの忠告に、泥塗れのアフラは剣幕で答えた。
「だああっ!!」
「きゃああっ!」
「おおーーっと、菜々美お姉様、アフラお姉様のおみ足を抱え、アフラお姉様を転
ばせましたぁーーっ!!」
 菜々美はアフラを取り押さえにかかる。
「一瞬ですが、腕が胸から浮きましたな!」
「カウントを数えます! ワン、ツー、スリー……」
 アフラは胸を隠すのに手一杯で、抵抗できない。
 かくして、菜々美の勝利。

「続きまして、第3試合。アフラお姉様対シェーラお姉様の試合です!
 では、始め!」
 カーーン☆
「だああっ!」
「たああぁ!!」
「うわっ!」
「ああっと、アフラお姉様、シェーラお姉様の足を引っ掛けて転ばせましたぁ!」
「さぁー、シェーラぁー。さっさとやられるんどすぅ」
「なんだとぉ!」
 結局、シェーラは負けてしまった。

「3人とも1勝1敗ですので、次は3人いっぺんに戦って頂きます。
 では、第4試合、始め!」
 カーーン☆
「たあああぁぁっ!!」
「だああっ!」
「むーーん…」
 3人とも取っ組み合った状態となり、動きがとれなくなってしまった。
「むぅー、微妙に歪んだバストが素晴らしい…」
 と----
「とわあっ!!」
 突如として水着姿の謎の影がリングに飛び込んだ。
「ああーーっと、乱入です! 乱入者が現れましたぁーっ!!」
「あ! ファトラ姫じゃない! なんなのよ!」
「わらわも混ぜてくれい!」
 ファトラはてきとうに掴み掛る。
「きゃああっ! へんなとこ触らんといておくれやす!」
「おおーーっと、ファトラ様、なんて羨ましいことを!」
「くぅーーっ! わしも乱入したいぃっ!」
 ストレルバウは机を叩いて歯ぎしりする。
「ええーーい! そんなに混ぜて欲しけりゃ、混ぜてやります!」
 アフラはファトラに掴み掛ると、水着に手を掛ける。
「あっ! なにをするか!?」
「あっ、それ私もやるぅ!」
 アフラに菜々美とシェーラも加勢する。
「ひやああぁぁっ!」
 ファトラの甲高い悲鳴があがり、彼女の水着は剥ぎ取られた。
「あー、ファトラ様、逃げていきますね」
「むぅー、素晴らしいシーンの連続ですな!」
「それにしてもアフラお姉様、ちょっと楽しんでらっしゃいましたね」
「さあ勝負よシェーラ!」
「おう!」
 と----
「ああっ! 再び乱入者です! こんどは誰でしょうか!?」
 リングサイドに現れた乱入者はおずおずと菜々美たちに近寄る。
「こんどは誰どすか!?」
 アフラは乱入者に向かって振り向き、その瞬間目を見張った。
「ああーーっ! ルーン王女様ぁーーっ!!」
 菜々美の絶叫が会場に響く。
「げげえっ! なんであんたが乱入するんだよ!?」
「あんさん正気どすかぁ!?」
「私もぜひ混ぜて下さいな。お手柔らかにお願いしますね」
「おおーーっ! ルーン王女様が乱入なさいましたぁっ! これは予想外の展開で
す! 果たしてどんな戦いを見せてくれるのでしょうか!?」
「では、いきますわよ」
 ルーンはおずおずと菜々美の腕をとると、関節を極めた。
「あいたたたっ!」
 菜々美は泥の中に膝をついてしまう。
「シェーラ、どうします?」
 アフラはシェーラに声をかける。
「ど、どうするって、どうしよう…」
「こっちもなんとか反撃しないと、やられてしまいますえ!」
「だ、だけどよ…。さすがにこれは…」
 そう言っている間にも、ルーンはにこにこしながら菜々美の関節に力を入れる。
菜々美はひいひい言いながら、反撃の糸口を掴めずにいた。
「菜々美様。これくらいの力がよろしいですか? それとももっと強い方がいいで
すか?」
「あああぁぁ……。ギ、ギブアップ! ギブアップ!!」
「菜々美お姉様、ギブアップです」
「あら残念」
 ルーンは菜々美の腕を放した。
「では次はシェーラ様とアフラ様ですわね」
 アフラたちの方へ歩いてくるルーン。
「え、ええい! こうなれば…」
 アフラはルーンの方へ駆け寄ると、その体へ手を伸ばした。
「くすぐってやります!」
 アフラはルーンの体を力の限りくすぐる。
「あら。では私も…」
 ルーンもくすぐりを始める。
「あ、ああん…。…うぅん……。あ…そこはだめどすぅ…」
「ここがよろしいですか? じゃあ、もうちょっと強く…」
「あぁっ!」
 ほどなくして、アフラは切ない声をあげまくっていた。
「アフラお姉様、気持ち良さそうですねー。別に単にくすぐっているだけですよ」
「あー、あきまへん! 降参します!」
「アフラお姉様、ギブアップです」
 ルーンに放されると、アフラはそのままずるずると泥の中へ沈んだ。
「ふにゃああぁぁ……」
「では、次はシェーラ様ですわね」
「あ、あたいかい?」
「そうですわ」
 にっこりと微笑むルーン。対するシェーラは後ずさりしていく。
「あ、あたいはそのお…。ギ、ギブアップ!」
「おや、なぜですか?」
「だ、だって王女様が相手じゃ戦えないじゃねえかよ。それにだいいちこんな戦い
で誠が本当に手に入るとも思えねえしな」
「そうですか」
「この勝負、ルーン王女様の勝ちです。そこで優勝賞品の授与といきたい所なんで
すが…。すみません。誠様に逃げられちゃいました」
 アレーレは誠が逃げていった方向を指差す。指差した先では誠が一目散に逃げて
いた。
「あら、誠様。逃げては嫌ですわ…」


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