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 カオス理論は放送大学の地球環境科学という授業で話していたのを聴いて知った。言葉は今までも聴いたことがあったが、たんに混沌としたものとの感じを抱いていた。しかしながらカオス理論は非常に単純な数式で表されることが結果として予測が非常に難しい(長期天気予報や積雪予報など)結果になったり、極端なバラつきになることを理論的に解明した理論であるという。
 子どもの集団的発展なども一緒である。同じような素質同じような数の集団に同じような指導をしてもとても成果があがる時と極端にうまくいかない時がある。それはたぶんちょっとしたバランスなのである。このバランスの具合をうまく調節することが大きな変動を生むということを知っていれば、子どもの指導もずいぶんとうまくなれるし、また、思わぬ結果が出たとしてもその結果を反省につなぐことができると考えた。
 今、私は児童館の有料化・登録化の運動に取り組んでいる。これは日本社会が安全で安心でない社会になったことによる。安全・安心のために児童の登録化をすること、また学校週休二日制に伴って児童館の閉館時間を午後7時までに引っ張ろうとしているのである。このためには有料化・登録化や保護者の協力が必要である。この運動がなかなかうまく軌道にのらない。原因の一つは塾や習い事には費用を惜しまないが児童館や児童クラブは安価もしくは無料であるとの保護者の考え方もある。また子ども自身が好き勝手なほうが良いとの考えもある。私としては児童館児童クラブ活動の内容の充実と遊びの選択肢を増やすことを考えて対処している。こんなことを考えながらカオス理論的に単純なことの組み合わせで大きな変動を作ることができるかをチャレンジしてみたいと思っている。そのためにカオス理論を学びたいと思っている。
 以下は。ネットで検索したものである。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

カオス理論(カオスりろん)は、決定論的な動的システムの一部に見られる、予測できない複雑かつ不規則な様子を示す現象を扱う理論である(ここで言う予測できないとは、現在人間の持っている数値計算手段ではという意味で、例えのことである)。カオスの定義は、研究者ごとに違い、統一的な見解は得られていないが、およそ以下の性質を持つものとされている。

  1. 周期性を持たない
  2. リアプノフ指数が正
  3. 何らかのポアンカレ写像により、テント写像が確認できる(後述するローレンツカオスの場合)

また、カオスには以下の特徴が現れる。

  • 自己相似
  • 単純な数式から、ランダムに見える複雑な振る舞いが発生する
  • 初期値のごくわずかなずれが、将来の結果に甚大な差を生み出す(バタフライ効果
  • 過去の観測データから将来の長期予測が困難となる

一部のシステムが複雑な振る舞いをするのは、その振る舞いを表す方程式非線形性が原因である(後述するローレンツカオスの場合、テント写像により引き起こされる)。自然界において観察できるシステム(大気プレートテクトニクス)や、社会的なシステム(経済人口増加)などは、カオス的振る舞いを示すものが多い。

目次

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カオス研究の歴史

19世紀における一般的な非線形微分方程式の解法手法は、ハミルトン等の成果に代表される積分法(積分、代数変換の有限回の組み合わせ)による求解と、微小なずれを補正する摂動法である。この積分法による解が得られる系を、リュービル可積分系と呼んだ。その条件は、保存量の数が方程式の数(自由度)と一致することであった。

1892年から1899年、ポアンカレは、3体問題では保存量が不足し積分法による解析解が得られないことを証明した(このような系を非可積分系と呼ぶ)。彼は、この場合に軌道が複雑となることを示唆している。ただし、この時点では、その実態は認識されていなかった。

コルモゴロフチリコフ等は、このハミルトン力学系(例えば、多体問題といった散逸項の無いエネルギーが保存される系)のカオス研究を進めた。大自由度ハミルトニアン系カオスは、統計力学の根源にも結びつくものでもあるが、その定義すら困難であり今後の研究が期待される。

テント写像により引き起こされるカオスについて、1963年ローレンツ・アトラクタで有名なエドワード・ローレンツ(Edward Lorenz)により提唱された。このタイプのカオスは、ローレンツカオスと呼ばれる(後述するカオスの例)。

京都大学工学部の上田睆亮は、1961年に既に、非線形常微分方程式を解析する電気回路で発生したカオスを物理現象として観測し、不規則遷移現象と称してカオスの基本的性質を明らかにしていた。しかし、日本の学会ではその重要性が認識されず長い間日の目を見なかった。この上田の発見は、ジャパニーズアトラクターとして海外で評価されている。

これらの複雑な軌道の概念は1975年、ヨークリーによりカオスと呼ばれるようになった。また、マンデルブロ集合で有名なブノワ・マンデルブロなどにより研究が進んだ。

一方では、非線形方程式の中にはソリトン(浅水波のモデル)のように無限の保存量を持ち、安定した波形を保ち将来予測の可能な、解析的な振る舞いが明らかになっているものもあり、カオスとは対極にある存在である。しかし、ソリトンと言えども、連続無限自由度を扱うような特殊な場合で可積分系が破れることがあり、その場合カオスになることが指摘された。

カオスの例(ローレンツカオス)

  • ロジスティック写像
二次方程式を用いた写像
X_{n+1}=aX_n(1-X_n) : 0 \le a \le 4, 0 \le X_0 \le 1
ロジスティック写像と呼ぶ。もともとロジスティック方程式という連続時間の微分方程式として、19世紀から知られていたが、写像として時間を離散的にすることで、極めて複雑な振舞いをすることが1976年ロバート・メイによって明らかにされた。
ロジスティック写像は生物の個体数が世代を重ねることでどのように変動していくのかのモデルとして説明される。ここでa(下図の横軸)が繁殖率、Xn(下図の縦軸)がn世代目の個体数を表している。
*繁殖率a<3のとき 個体数Xnはある一定の値に収束する。
*3≤a≤3.56995のとき Xnが2つの値を繰り返す様になる。さらにaを増やすとXnのとる値が4つ、8つと増加していく。この周期逓倍点の間隔は一定の比率ファイゲンバウム定数で縮まる。
*3.56995<aのとき Xnのとる値に規則性が見られなくなる。この境界値3.56995をファイゲンバウム点と呼ぶ。周期逓倍点の間隔が0に収束し、周期が無限大に発散したのである。
この様に単純な二次方程式から複雑な振る舞いが発生し、またa=4付近では初期値X0のわずかな違い(例えば0.1と0.1000001)が将来の値Xnに決定的な違いをもたらしている。
横軸はaを、縦軸はXn収束する値を表している。a=3で2値の振動へと分岐し、更に分岐を繰り返していくことが分かる。
  • 実際の個体数の変動
a=3の場合。2値の振動に収束する。
画像:Chaos(a3).png
a=3.9の場合。規則性のない変動となる。
画像:Chaos(a3.9).png

カオスの判定

カオスにはその必要十分条件が与えられていないことから、カオスの判定は複数の定義の共通を持って、カオス性があるという判定以外に方法が無い。このため、カオスの判定とは必要条件という性質を持つ。多くは、スペクトルの連続性、ストレンジアトラクタ、リアプノフ指数、分岐などを持ってカオスと判定している。

しかしながら、只のランダムノイズであっても、リアプノフ指数が正になるといった事例が指摘され、こういった面よりノイズとカオスは区別はつかない(また、カオスより擬似乱数を発生させることはできる)。 そのため、例えばリアプノフ指数や、何をもってストレンジアトラクタと見なすかの指標をそのまま信用してカオスと判定して良いかという問題が起きる。

そういった意味で、1992年ノイズか決定論的システムから作成されたデータかどうかを検定する「サロゲート法」が提案された。サロゲート法は基本的には統計学における仮説検定にもとづく手法であるため、与えられたデータが検定にパスした場合でも、そのデータについて「仮定したノイズであるとは言いがたい」という主張はできるが、「カオスである」という断定をすることはできず、その意味で決定的な検定方法ではない。以下サロゲート法の概要について説明する。

  • サロゲート法

サロゲート法には様々な方法がある。代表的な「フーリエ変換型サロゲート法」について述べる。

帰無仮説:元時系列は、(予め仮定する)ノイズである

有意水準をαとする
  1. 元時系列のパワースペクトルを計算
  2. パワースペクトルを元時系列とし、位相をランダムに設定した新スペクトルをN個作成
  3. 新スペクトルをフーリエ逆変換して、新時系列をN個作成(これらをサロゲートデータと呼ぶ)
  4. 元の時系列の統計値<N個の新時系列の統計値の下α/2を与える値 または N個の新時系列の統計値の上α/2を与える値<元の時系列の統計値 → 帰無仮説棄却(ノイズとは言えない)



酒巻 久著『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』
祥伝社、2005.8.51400円(税別)、
<高収益を生む企業体質の作り方>
【お勧め度】  ★★★★☆


 本書は、書店でタイトルと、著者がキヤノン電子の社長であることに惹かれて読んみた。タイトルの意外性と、日本的経営のキヤノンの好業績の秘密がわかるのではないかと思ったわけである。本の中で、著者も「椅子とパソコンをなくす」ことは、皆さんに興味を引かれるが、改革はそれだけではないことを強調していた。
  本書を読んでみて、椅子にしろ、パソコン(で遊んでいる時間)にしろ、なくして、質の高いコミュニケーションを実現することの重要性は説得力のあるものであった。一読を勧めます。以下、私の気になった点(賛成している点ではないものもあるが)列挙します。 
 まえがき
・徹底した「会社の垢すり」を行えば、ほとんどすべての会社は黒字化するし、利益はぐんと伸びる。「会社の垢すり」というのは、長い間に組織や社員に染みついてしまった、非効率な動き、ムダを徹底的にそぎ落とすことだ。
・私がキヤノンの子会社であるキヤノン電子で実践した「垢すり」のなかで効果的だったのは、「椅子とパソコン(で遊んでいる時間)をなくしたこと」である。
・工場や工場の管理部門、会議などから椅子をなくしたことで、生産効率はあっという間に当初の2倍になり、さらにいまでは8倍に近づきつつある。
・椅子をなくすことにより、フットワークが良くなり、その結果、社員同士のコミュニケーションが密になったことが、生産性を押し上げた一番の要因である。コミュニケーション不足は、実はムダを生む大きな原因の一つなのだ。
・社員がパソコンで遊んでいる無駄な時間を一掃し、パソコン使用のルールを明確にしたことで、生産性の大幅な改善とともに情報漏洩対策などのセキュリティアップにもつながった。
・驚くべきデータを一つ紹介すれば、実はどこの会社でも社員の多くは、パソコンに向かっている時間のうち約4割は仕事をしていない。その間、何をしているかと言えば、インターネットでニュースを見たり、ゲームをしたりして遊んでいるの
だ。
1章 赤字部署、赤字会社の建て直しを命じられたときには
――
私がキヤノン電子を世界レベルの高収益企業にするためにまずしたこと・黒字の部署や会社より、赤字のほうがずっと面白いし、やり甲斐があるのだ。しかも、今度は、管理職や役員の立場ではなく、社長として自由に、好きなように腕を揮うことができる。
・着任してから6年間、売上高はそれほど伸びていない。それでも利益率が大きく伸びたのは、とことんムダを省いて、利益の出る仕組みをつくったからだ。その結果、99年に比べて工場スペースが約7割も減ったほか、電気料、水道使用料、CO2排出量についても、それぞれ5割前後の大幅削減に成功している。
・会社の究極の目標は「利益を出し、税金を払って社会に貢献する」ことであり、それが首尾よく達成できるかは、ひとえに「人の動き」にかかっている。赤字の部署や会社というのは、要するに人の動きが悪いのだ。
・指示は「明確」かつ「具体的」でなければならない。私がキヤノン電子へ赴任し、最初に言ったのは、次の二つだけである。

(1)世界のトップレベルの高収益企業になろう
(2)
そのためにすべてを半分にしよう
 (「TSS1/2」 TSS=Time Space & Saving
 ・一見、実現不可能な目標も、数値化することによって、社員は結果や成果を大切にする明確な「当事者意識」を持つことができ、目標に向かって自分の仕事を効率よく進めることができるようになる。
・人間の知恵は無限である。目標を数値化し、知恵を働かせて行動することで、一見、不可能に思えることも実現可能となるのだ。
・最初の一年は人事に手をつけず、人物観察と赤字の原因究明に徹することである。組織の改革、立て直しにはスピードが求められるが、最初の一年は周りも目をつぶって許してくれるし、待ってくれる。急がば回れで、勝負は二年目と心得るべきだ。
・人間観察で私が特に注意を払っているのは、「後ろ姿」である。人間は人に背中を見せているときが、一番無防備で、その人の内面が表出しやすい。人は元気なときは肩を張って歩いているが、悩んでいるときなどは肩を落としてとぼとぼと歩いたりするものだ。
・人間の善し悪しは何で判断すればいいか。これにはいろいろなモノサシがあるが、私が一番重視しているのは、「丸投げ体質かどうか」である。
・丸投げ体質の人が力を持つ会社は、だいたい赤字になる。丸投げ体質は非常に危険であり、会社をダメにする最大の元凶の一つなのだ。
・一年じっくり人物観察を行い、丸投げ体質に象徴されるような、手をつけるべき人物や課題が浮き彫りになったら、いよいよ人事異動を発令したり工場の閉鎖を発表したりする。改革の反対派を抑えるためには、やるべきことがわかったら間髪入れずに断行するのが肝要である。そうやってたまりにたまった組織の膿を一気に出す。その場合の膿は、「上(役員、管理職)」から徹底的に搾り出す必要がある。人事は上から手をつけないといけない。
・儲かっている会社かどうかは、規律の有無と密接に関係しているのだ。
・「大事は軽く、小事は重く」。小事こそ大事であり、疎かにしてはいけないのだ。小さいことをキチンとできない人間に、大きなことができるはずはないのである。
・前向き駐車の例もそうだが、同じミスを3回も繰り返すような学習効果がない人間は、基本的にダメである。同じようなミスをするかどうかは、頭の善し悪しとは何の関係もない。当事者意識と責任感さえあれば、普通は学習効果が働き、「二度と同じヘマはしないように気をつけよう」と注意するし、努力もする。このため同じようなミスは防げるはずなのだ。
・赤字をつくるのは古い人間である。古い人間とは新しいことを受け入れない人間のことだ。だからキヤノン電子でもたまった膿を一掃するため上の人間から降格人事に手をつけた。それを不満として辞めた人間もいるが、一般社員ではそうしたケースはほとんどない。
2章 なぜ会社から「椅子」をなくしたのか
――
仕事の効率を高める最もシンプルな方法
2000年から会議の時間短縮と活性化をめざして、それまで椅子に座ってやっていた会議を立ったまま行うようにした。いまでは課長代理から部課長級、役員会議に至るまで、社内の会議はすべて立ちっぱなし。全員が「立ち会議」である。そのためにすべての会議室から椅子を撤去し、テーブルの脚には社員手製の約30センチの「ゲタ」を履かせ、立って使うのに丁度いいような高さを1メートルほどにした。
・会議の効率化と創造性の発揮のために2つの仕掛けを施した。1つは「自分の意思のない意見は厳禁」というルールをつくったことだ。具体的には、「?だろう」「?だと思う」「?と担当者が言っています」などの表現を禁じた。
・もう一つの仕掛けは、自分の意見を促すために資料の持ち込みと配布を禁止したことだ。手元に資料があると、どうしてもそれを目で追い、ただ棒読みするだけになってしまう。そこで必要な資料は会議室に設置したスクリーンに投影し、それを見ながら会議を進めるようにしている。大事なことは必要に応じて自分でメモを取ればいいのである。
・何よりもいつまでも立ちっぱなしは嫌だから、意見も質問も活発になる。率直に議論し合い、素早く結論を出す――。立ち会議にしたことで、俄然、集中力が高まったのだ。その証拠に議事録を調べると、会議時間は大幅に短縮しているのに、発言数は着席方式のときと変わらないか、むしろ増えていることがわかる。
・座り癖があると、椅子がないと会議ができないし、会議室を取る、という行為も億劫だから、なかなか決まった会議以外は開かれることがない。これではミスのない素早い意思決定などできるはずもない。会社のいたるところに、ゲタ履きのテーブルとホワイトボードを置くだけで、社内のコミュニケーションはあっという間に密になるのだ。
・トップがすべきは、改革の「目的」を明示することであり、それを実現するための「手段」は部下に考えさせないといけない。改革するときに手段まで命じてしまうと、部下はそれ以外の改善策を考えなくなる。何より「上からやらされている」と思ってしまい、主体的に取り組む意欲を持たなくなってしまう。社員の自主性を喚起するには、改革のための手段は自分たちで考えさせる必要があるのだ。
・立つのは、あくまで生産効率の改善のためである。椅子をなくするのが目的ではない。立ったほうが効率がいい部署だけ立てばいいのである。
・長時間立ち続けるには、背筋をピンと伸ばした正しい姿勢を取る必要がある。背中を丸めるように立っていたら辛くてしょうがない。立っていて楽な姿勢は、イコール正しい姿勢なのだ。そして人は無意識のうちに正しい姿勢を取ろうとする。そうすることで自然と骨格の歪みが修整され、積年の苦痛を取り去ってくれたのではないかと思う。
・「どうしてそうなの?」「どうして、あれじゃなくてこれなの?」と何度も何度も質問を繰り返し、相手が自分で気づくように導くのだ。人材の育成というのは教えるというよりも、そうやって自分で気がつかせせるように導くのが基本であり、鉄則なのである。
・上司たるもの、部下を上手に失敗させてやることも大事なことだ。上司の目配りのきく範囲であれば、失敗してもたいていは軽症ですむ。そうした軽い痛みを味わうことで自分の間違いに気づかせるのである。
・《挨拶をしないコミュニケーション不足不良品の発生》という悪循環に陥るのである。挨拶をするしないは、それだけ見れば、取るに足りないようなことのように思えるが、実は不良品の温床であり、組織を危うくする蟻の一穴のような存在なのだ。
3章 「パソコン」は惰性の隠れ蓑
――
パソコンとうまくつき合うにはルール作りが欠かせない・キヤノン電子情報セキュリティ研究所のデータによれば、利益率が1?5パーセント程度の会社ではパソコンの業務外利用が全社平均で3?4割に達している。つまり、全社員を平均すると、パソコンに向かっている時間の3?4割は仕事をしないで遊んでいるのである。
・「Sep」の履歴機能はパソコンの操作履歴をすべて記録するもので、その効果としては、(1)業務改善、(2)不正防止、の2つが期待できる。具体的には、すべてのファイルに対するアクセス状況、メール操作の状況、アプリケーションの稼働状況、ネットの閲覧状況を記録することで、ムダなパソコン使用を炙り出すとともに、社員の不正を心理的に抑止するのである。
・「Sep」というソフトは、言うまでもなく市販用だが、もともとはキヤノン電子の社員の勤務実態を把握するために作ったものだ。
・そもそもメールで来るような用件は、もともとたいしたものではない。ほんとうに大事な用件であれば、必ず電話がかかってくるし、それこそ緊急であれば、メールの返事を待たずに先方から朝イチで会社まですっ飛んでくるはずだ。「メールが来たら即レスしなきゃ」などとバカなことは考えなくていいのである。
・設計者の生産性は、キーボードのタイプ数とバグの関係を調べることでおおよその把握が可能なことを知った。そして、このとき作ったソフトこそ、後の「Sep」の原型になったのである。
・パソコンの使い方一つで「怠惰の隠れ蓑」になる――。そのことを熟知していた私は、キヤノン電子の社長に就任してすぐに、すべての社員のパソコンの操作履歴を時系列にとって分析してみたが、案の定、業務外利用がボロボロ出てきた。わけても衝撃的であったのは、「キヤノン電子で一番優秀」と評判の女性が、実に勤務時間の9割をパソコンで遊んでいたのが発覚したことだった。
・優秀な女性が遊んでいる会社は、利益率が1パーセントを切るような儲かっていない会社が多い。それはつまり、優秀な女性を使いこなせないような無能な管理職しかいない証拠なのだ。人材をムダに飼い殺しにするような会社に、儲かる経営などできるはずがないのである。
・部下が遊んでいるかどうかは上司の管理能力次第である。したがってパソコンの操作履歴で職制の高い人間の働きぶりを調べれば、そこの部署が遊んでいるかどうかは、すぐに見当がつく。上司が遊んでいる部署は、部下も必ず遊んでいる。
・パソコンの操作履歴のチェックは、監視が目的ではない。社員の怠け癖を排除し、やるべき仕事に集中してもらい、生産性を上げ、利益率の高い会社にするのが目的である。
・俗に犯罪者の9割は無職と言われる。将来に希望が持てないから悪事に手を染めるのだ。これは会社でも同じで、情報漏洩などの社内犯罪に関係するのは、そのほとんどが将来に希望を持てない社内失業者である。具体的には、処遇などの不満から会社を辞めたがっている人間などである。
・人心の荒廃は犯罪の温床である。こうした不満分子にはパソコンを持たせてはいけないし、重要な情報にも触れさせないことである。ただし一番のセキュリティ対策は、実は「愛社精神」なのだ。社員の仕事内容を正確に把握して、働いた分をきちんと評価する。そうすれば、社員は一生懸命会社のために働くようになり、悪さをしよいうなどとは考えなくなる。能力にふさわしい仕事を与えられれば、それこそ悪事を考える暇もないだろう。
・情報漏洩は、内部犯行がその大半を占める。その意味では社内失業者をなくし、不満分子を育てないことが何よりのセキュリティ対策なのである。
・言葉は悪いが、いまの若い設計者には「設計バカ」が多い。自分の得意とする専門技術には秀でているが、それ以外のことはからきしダメというスペシャリスト型の人間が目につく。よく「ゼネラリストよりスペシャリストをめざせ」と言うが、こと設計に限って言えば、それは逆である。スペシャリストではなくゼネラリストをめざさないといけない。設計というのは全人格の投影であり、幅広い教養がないといい設計はできない。
・パソコンは鉛筆と同じで、たんなる道具にすぎない。その力を100パーセント活用するには、使う側がクリエイティブになる必要がある。幅広い教養を身につけ、創造的に使いこなすことで、初めてそのパワーを全開にして引き出すことができるのだ。
・最近は「ナレッジマネジメント」などと言って、そうしたノウハウをデジタル情報としてデータベース化する企業もあるが、そのデータベースを有効に活用できる人は少ない。それより口伝と紙で残すほうが、はるかに伝承性は高い。
・そもそもメールというものは、自分の伝えたいことのせいぜい10パーセント程度しか伝えられない。対面していれば、声のトーンや顔の表情、身振り手振りなどで言葉以上の情報を伝達できるが、メールではそうした情報はいっさい添付不能である。
・「話があるなら電話を使いなさい。近くにいるなら直接会って話しなさい。そうやって対人コミュニケーションの回数を増やして、意思の疎通をはかって下さい」。そして、ムダメールの象徴である「同じフロアでのメールのやり取り」(=ワンフロア・メール)を禁止した。
・このワンフロア・メールの禁止に違反した場合は降格のペナルティが待っている。アホメールを一掃するには、ルールと罰則を作るに限る。それがメールバカにつける一番の薬である。
4章 今日から始められる「会社の垢すり」教えます
――
溜まった垢を落とすだけで、ほとんどすべての企業は黒字化する
5章 社員の「自主性」を育てる仕組みづくり
――
社員のやる気を最大限に引き出すことが、会社を最も強くする
6章 リーダーに求められる資質
――
会社を伸ばす上司、潰す上司

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