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 レスポンド行動は一般的にパブロフに代表される一定の条件刺激によって機械的に喚起された行動であるとスキナーは述べている。条件付け操作による機械的受動的な行動の形成をレスポンド行動の理論は説明することができるが、生体自らが行う自発行動すなわちオペラント行動を理解することができないとスキナーは主張している。

 レスポンド行動においては一定の刺激に対して生体がどのように行動するかそしてその行動をどのように理解するかが問題になる。オペラント行動においては機会刺激―オペラント行動―強化の随伴性が三項関係をなしていて、機会刺激によってオペラント行動がなされるだけではなくて、ある環境において生体が自らどのような自発行動(=オペラント行動)を行い、その後どのような結果がもたらされたかということが「強化の随伴性」となり、次の機会刺激(=弁別刺激)において、生体がどのようなオペラント行動をとるかを規定するといった関係性を持ってくる。

 

 私自身は最近、増加している注意欠陥症候群の子どもの行動療法のためにオペラント行動を学びたいと考えている。注意欠陥症候群の子どもの多くは、じっとしていられないー先生や親に叱られるーなお子どもは騒ぐー適当に先生や親も妥協する(反対に強く叱る)等の悪循環に陥っている場合が多い。スキナーのオペラント行動の行動療法の理論を活用することによって、注意欠陥症候群の子どもたちの社会への適応力を高めることができたらと考えている。

 オペラント行動の考え方からいえば注意欠陥症候群の子どもたちには「スモールステップの原理」を活用することが大切であると思う。子どもの自発オペラント行動を的確な強化随伴性を活用して一定の段階まで導くことが大切と考える。最初からきちんと長い間着席していることは無理な子どもの場合、少なくとも集団の中で多少の奇声をあげたとしても危険な行為をしなければ褒めてあげる。次に奇声をあげても特別な対応をしなければ、負の強化子となり奇声をあげることが少なくなってくる。その時に正の強化として「今日は大声をあげることが少なくなったね」と褒めてあげよう。次第に子どもは少しの間着席してみんなと同じ行動がとれるようになってくる。そのご褒美として「今日はとても頑張ってやったから、おやつはなんとケーキにしよう」と時には一次性強化子を使うことも必要であろうし、母親に「今日は頑張ったですよ」と子どもの前で伝えることと母親にも褒めてもらうようにして二次性強化子を活用することも必要となろう。

 時に子どもは頑張ればいつでもケーキがもらえると勘違いすることも出てくる。ケーキが出てこなければ着席して学習しようという意欲がなくなるような場合もある。これではケーキと学習がたんなる条件反射のような=レスポンド行動のようなものになってしまう。現場ではこういった事態に陥ることが多い。強化のスケジュールにおいてたんに定率・定間隔の強化だけでなく不定率の強化・不定間隔強化なども活用することも大切であると思う。またケーキなどの食物・ジュースなどの飲み物・お休みなどの一次性強化子だけでなくて、「がんばったね」などのほめ言葉・子どもの仲間の中での一定の評価が高まるなどの二次性強化子なども必要であると思われる。

 注意欠陥症候群の子どもだけではなくて子どもというのはお調子者でもある。ほめてばかりいると調子にのってとんでもないことをやらかすこともある。正の強化だけでなくてときには罰が与えられることも必要な場合もある。罰には嫌悪刺激などの一次性の罰と悪口・小言・嫌味・無視などの二次性の罰があるといわれている。罰を活用することよりもうまく負の強化を活用していくことが大切でないかと私は思う。

 

 オペラント行動を子どもたちの遊びの現場において活用していきたいと私は考えている。子どもというのはまず行動ありきである。これはもう生体としての本能であるように感じる。広いところにいけば走り回るし、棒があれば振り回す、石があれば投げるし、土のあるところでは穴を掘り始める。ある刺激があってそれに反応するのではなくて、ある環境があり、それに自発行動が起こる。その行動に対して、「叱られる」「ほめられる」「運よく楽しく遊べる」「けんかになる」「けがをする」「昆虫がとれる」などの結果が出る。この結果によって次の子どもの自発的な行動の方向性が決まってくる。弁別刺激―オペラント行動―強化の随伴性といった三項関係の中で子どもたちの行動は悪くもなり、良くもなる。子どもたちの生活がより良いものになるようにオペラント心理学における行動療法を有効に活用していきたいと考えている。

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