グループワークの中でヴァイラントの適応的心的防衛機制の展開を考える(平成30年4月1日)
                            児童健全育成指導士  田中 純一

 
   ヴァイラントのこと
 平成29年放送大学院の成人発達心理学(2017年星薫放送大学教授担当)を学んだ。成人発達心理学の中でヴァイラントのAging wellのことを知った。ヴァイラントは『健全な老い』をもたらす7つの要因と『健全な老い』とは関係ない6つの要因を、1940年ころから2000年ころまでの60年間にわたる3つの違ったコホート(ハーバード大学コホート・スラム地区コホート・IQ平均が150以上の女性コホート)の前向き研究から導き出した。(前向き研究とは過去の現象を研究するのではなく、これから起きる現象を追跡調査していくことであるという)
 『健全な老い』をもたらす7つの要因とは@非喫煙者か、若いころに喫煙をやめていることA適応的対処方法(成熟した防衛機制)Bアルコール依存症のないことC健康的体重D安定した結婚生活E適度な運動F高学歴である。『健全な老い』とは関係ない6つの要因とは@先祖代々の寿命AコレステロールBストレスC両親の特質D子どものころの気質E活力と社会的関係における全般的な落ち着きだという。
 

   ハーバード大学
コホート
 スラム地区
コホート
 ターマンの女性
コホート
 出生年(平均)  1921年  1930年 1911年 
 調査開始年 1939〜42年  1940〜44年   1920〜22年
 被験者数 268名   456名  682名
 最終調査年  1999年 2000年   1988年
 最終調査時点での
死亡者率
 38%  37%  37%
 アンケート頻度  隔年   隔年 4〜5年ごと 
 検診記録提出の頻度 5年ごと   5年ごと 未提出 
 白人の割合 100%   99%  99%
 IQ  約130〜135  95  151
 大多数の社会階級  T〜V V〜X U〜W 
 大学院学位の保有率 76%   2% 23% 
 70歳までの死亡率  23% 37%  約20% 
 50歳時の平均年収
(現行ドル)
 10万5000ドル  3万5000ドル 3万5000ドル 

 参照文献 50歳までに「生き生きした老い」を準備する ハーバード大学医学部教授 ジョージ・E・バァイラント著 米田隆訳 ファーストプレス発行

 ヴァイラントの研究は、多大な費用・多くの人たちの継続的調査・被験者の献身的調査協力によって成り立っている。調査対象も異なった集団(コホート)であり、学ぶことが多くあると思う。私は養護学校の教員・小学校の教諭・児童館職員・専門学校講師などの仕事をして、乳児から幼児・小学生・中高校生・学生・大人と多くの子ども達や仲間と出会った。教員時代に出会った子どもたちも中学・高校・大学生を持つ親となっている。児童センター時代の乳幼児も高校生や大人になっている。多数の子ども達との出会いで経験的に学んだことがヴァイラントの調査結果と類似している点を感じている。ヴァイラントの言う『健全な老い』は子ども達の現在及び将来の『健全な生活』ともある程度は一致するであろう。
 『健全な老い』と関係なかった@先祖代々の寿命AコレステロールBストレスC両親の特質D子どものころの気質E活力と社会的関係における全般的な落ち着きの6つの要因は子ども時代とその後発達ともあまり関係が無いように私も思う。小さい時の気難しかいとか自己中心的だとかを気にするよりは、ポジティブに繊細なことが出来るとかみんなとも仲良く遊べるようにするとかになっていけばよい。親類の寿命や両親との関係性が将来を決定的なものとするわけでもない。子ども時代のストレスなどがずっとトラウマになるわけではないなどと考えていくことが必要である。
 『健全な老い』と関係あった@非喫煙者か、若いころに喫煙をやめていることA適応的対処方法(成熟した防衛機制)Bアルコール依存症のないことC健康的体重D安定した結婚生活E適度な運動F高学歴7つの要因を考えてみよう。子どもは煙草を吸わない・酒を飲まないことが良い。成人になっても煙草やアルコールをコントロールできる教育が大切と思う。運動を通して健康的な体重維持することは大人も子どもも必要である。安定的した結婚生活とのことは、子どもではより良い仲間関係を作ることと読み替えることが出来るだろう。高学歴は向学心を持つことだと思う。成熟した防衛機制は子どもの発達段階に応じて高めていく必要性がある。
 『健全な老い』のためにヴァイラントはA適応的対処方法(成熟した防衛機制)をあげている。問題が生じた時や危機的な場面で人間は無意識の心的防衛機制を行うが、心的防衛機制には不適応的心的防衛機制適応的心的防衛機制があるという。不適応的な心的防衛機制には投影・解離・幻想・心気症・行動化・消極的攻撃などがあり、適応的心的防衛機制にはユーモア・愛他主義・昇華・予期・抑制がある。
 子どもたちの場合で考えてみよう。カプラ(積み木でも良い)で自分の身長より高く積んでみようとのチャレンジをしていて、身長近くなって崩れてしまった場合で考えてみよう。不適応的心的防衛機制では以下のようになる。
投影      カプラが崩れたのは誰かが床を揺らしたからだと憤る。
解離      カプラ以外なら自分は全能で何でもできるのだと思い込む。
幻想      実際にはカプラの高さは身長より低かったのだが高かったと思い込み吹聴する。
心気症    何をやってもダメだと落ち込む。
行動化    他人のカプラを壊して回る。
消極的攻撃 カプラをしたくなかったのだが、先生が無理にやらそうとしてのだと泣く。
 適応的心的防衛機制では以下のようになると思う。
ユーモア   カプラは良い音がして崩れたね。みんな僕の失敗を真似しないでね。
愛他主義  友達に崩れたカプラを使ってもらおう。
昇華     カプラは苦手だが虫のこと得意。虫の研究をして友達にも認めてもらおう
予期     最後の積み重ねに崩れる可能性が高いから、とくに注意して頑張ろう。崩れても自分は我慢ができる。
抑制     今日は失敗したが明日また頑張ろうと我慢をする。
 カプラが壊れたとのケースで考えてみたが、もっと重篤な事態はたくさんある。重篤な事態が起きたとしても適応的心的防衛機制が出来るようになることで重篤なことを軽減することが出来る可能性が高くなる。逆に重篤なことでなくても、不適応的心的防衛機制しかできないと、重篤な事態に陥ることとなる。カプラが崩れたので怒ってカプラを他人に向けて投げたら、他の人の眼に当たってけがをさせることになることもある。

 ヴァイラントの『健全な老い』と関係あったものを『健全な生活』と考えて、児童館・児童クラブ等におけるグループワークでの活動を通して充実したものにと私は考えてみたいと思う。とくに不適応心的防衛機制適応的心的防衛機制に変えていくためのグループワークの援助手法を展開してみたいと思う。

   グループワークにおけつ小集団の原則
 人格的協同志向型の小集団は、明らかに人格的発達志向型集団として位置づけることができる。ドイッチはこのような小集団の特徴を次のようにあげている。
@集団の仕事をしようという意欲が高く、メンバーが互いに責任を感じあうことが多い。
A成員間の分掌と協力の度が大きい。
B成員間のコミュニケーションがより効果的で、より多くの意見が出され、理解の度も受容の度も高い。
C友情があつく、他人に対する尊敬も高い。

       小関康之著 児童グループワークより(ミネルヴァ書房)
 ヴァイラントは『健全な老い』の中でD安定した結婚生活をあげているが、子ども達の現在及び将来の『健全な生活』を考えると、安定した人間関係とアナロジーさせることが出来るのではないかと思う。グループワークを通じてより良い友達関係を作り上げていくことは現在から将来に向けて楽しい生活を送るために必要なことである。グループワークの中で小集団を形成する中でより良い仲間関係を作っていくことは大切であると私は思う。

  グループワークの諸原則

@受容の原則

 グループワーカーは、先ず一人ひとりを一個の人格を持った人として尊重することが基本原則である。小さな子どもといえども尊重するという基本的態度を身につければならない。ワーカーの好みや、個人的な好き嫌いもあろうが、グループの中の一人ひとりを理解していくことが受容につながる。

A個人差の尊重の原則

 グループワーカーは、自分と接する子ども一人ひとりが独自の存在であることを頭で判っていても、すべてのメンバーについて、つい平均的な姿を求めがちである。子どもの長所・短所、言葉使いや行動、そして発達段階(エリクソンのいう)に応じての知識だけで子ども理解をするのでなく、発達の差や、性格、考え方にも個人の違いがあることを十分に知り、個性を持つことを忘れてはならない。

B援助目的の明確化の原則

 グループワーカーは、子どもをなぜグループに参加させるのか、それはどんな内容のグループなのか、グループはその子どもの成長にどんな意味をもつのかを明らかにすれば、メンバーを容易に受け入れることができよう。

C自己決定尊重の原則

 グループワーカーは、メンバーの自主的な人間としての成長を促す役目をするものであるから、グループの中で一人ひとりが自分の「責任」を果たすということを自覚させ、自立心を強めさせることが必要となる。

 また他のメンバーに対する尊重の気持ちを自覚させよう。そのため、ワーカーが自分の好きなプログラムを実施しようとしたり、自分の希望でグループを指導することは危険である。あくまでも子どもたちのメンバーが自分で選択し、自分で決定する雰囲気作りをしなければならない。自分たちで決定できることが、自主的なグループを育て、人間を育てていくことになるのであるから。

D成就の経験と喜びの原則

 自分たちの決めたことを達成した喜びは、他人が決めたことの達成より幾倍も大きいことは誰でも経験していよう。グループで協力し合うことは、達成までに多少時間がかかっても、社会的能力を高めていくことになり、その経験を積み重ねることで、個人もグループも成長していく。

Eメンバーの相互作用の効果の原則

 グループワーカーは、メンバー同士の働きによる影響が深まるように援助することが大切である。協力し、互いに自分の足りないところを補ったり、援助したりすることで相互作用が深まり、「わたし」から「わたしたち」感情が深まって自発的活動を促し、まとまりあるグループに発展していく。

F融通性のある運営と活動の原則

 グループワークの過程で、メンバーのニーズや変化に応じて融通性のあるグループであることが望ましい。グループワーカーはプログラム活動についても、メンバーの能力や発達に応じた変更や修正を行っての活動や運営ができるようにする。(社会福祉援助技術総論より)

  グループワークの諸原則と適応的心的防衛機制の手法を獲得するためのワーカーや支援員の援助の仕方
@受容の原則
 
ヴァイラントの心的防衛機制は無意識的オートマチックなものであると考えられている。不適応的心的防衛機制であっても無意識的なものである。『なんでそんなことをするの?』などと批判されても答えることが出来ないことが多い。危険なことはやらせないようにするけれど、批判や非難の必要性はないであろう。その意味で受容することは必要である。安易な共感も不要である。不適応的心的防衛機制の原因もわかりもしないで共感することは私は危険であると思う。『面白くないとのあなたの気持ちはわかったけれど、殴ったりするのは私は認められない。殴らなくなったあなたは良い子だね』くらいが良いと思う。
A個人差尊重の原則
 子どもも大人もいろいろである。場面においてどのような心的防衛機制をするかもいろいろである。失敗したらすぐに傷ついて何もやらなくなる人もいるし、粘り強くやり続ける人もいる。どれが良いとは決めつけられない。粘り強すぎて時間内に終わらないで他人を困らせる人もいる。いろいろな心的防衛機制があると知っていると対応が上手くなる。
B援助目的の明確化
 グループワークの目的が良い友達関係を構築し、より良い適応的心的防衛機制を獲得し、程よい運動経験があり、学びと遊びが充実したものになると考えて、子どもたちの実年齢・実能力年齢・可能性年齢を伸ばすための活動と捉えていくことが必要であると思う。
C自己決定の原則
 グループワークの活動において折り紙・ボール遊び・カプラ・工作・ゲームなど何をするかの方向性をワーカーが決定し用意することは、小学低学年を相手にする場合は必要である。同時に内容は可塑性を持ち、自己表現の機会を出来るだけ多く提供することが必要である。基本原則の説明は簡潔に要領よくやって、子どもたちの活動時間を出来るだけ長くなるようにすることが大切である。子どもたちがルールの中で自己決定し自己表現をすれば、『このやり方は面白いね』『これは素晴らしい』などと褒めてあげることが支援員やワーカーの仕事になる。子ども達は褒められることによって次第に適応的心的防衛機制が出来るようになっていく。失敗したこともポジティブに受け止め、『もうひと頑張りするか』とチャレンジを続けるようになる。各小グループ同士でお互いのグループの良い点を学び合ってより良いものにしていくことを奨励することはとても大切である。
D成就の経験と喜びの原則
 グループワークで助け合って活動をすると喜びは3人で活動すれば3倍になり、悲しみは3分の1に縮小することがある。カプラなどの活動をしていて途中で作品が壊れても悔しい気持ちを抑制して、『良い音がしたね。今度は最後の積み上げを注意しよう。そうだカラーカプラを上に積み上げるとしっかりするかもしれない』などと適応的心的防衛機制を強めることが必要である。他のグループが悪いと批判をするよりも『時間が少なくなったから、隣のグループと合体しよう』などとの愛他主義の考え方を提案してより良いグループ関係を作るように支援員やワーカーは働きかけることが必要である。元気がなくなってふてくされている子どもには最後の崩しの時に活躍の機会を与えるようにして、あっちの世界からこっちの世界に戻ってきてもらうことも必要である。ショックで元気がなくなった子どもには時間という薬が効いてくるのを待ちましょう。(心気症解離を防ぐ)
Eメンバーの相互作用の効果の原則
  私はグループワークの中に環境整備等の活動を入れるように提案している。草取り・清掃活動・ゴミ拾い活動・花植え活動などである。子ども達に愛他主義の考えを培うためには利己的行為と利他的行為が一致する活動が大切であるからだ。雑草を抜いたり、花を植えたり、石を拾ったりする活動は自分のためにもなり他人のためにもなる。また一生懸命草取りをして褒められたとしても僻む人は少ないであろう。 子どもの年齢を考えてみると実際の満年齢と実際の能力年齢と可能性年齢があると私は思っている。小学3年生でも実年齢は8歳・実能力年齢は9歳・可能性年齢は11歳の子どももいる。同時に小学1年生でも実年齢は6歳・実能力年齢は5歳・可能性年齢は6歳との子どももいる。この子どもたちを上手く小グループの中に配置し、草取り活動をする。実能力年齢5歳小学1年生の子どもも、小学3年生の手助けがあれば小学校1年生の仕事を十分にこなすことが出来る。この時に大切なことは小学校3年生の子どもは小学1年生の助けをすることで、可能性年齢を11歳まで引き上げているのである。グループワークは異年齢が一緒でも子どもたち相互の可能性年齢を活用することで素晴らしい効果を生み出す。
F融通性のある運営と活動の原則
 融通性のある運営は難しいものである。私自身の経験からグループワーク等の活動をやる場合は出来るだけ一人でやらないで複数でやることを提案している。3人くらいのワーカーで40人〜50人を相手にするのが良いと思う。グループワークの上手い年長の人の実践に若い人が学ぶこともある。逆に慣れている人がスーパーバイザーとしてお手伝いする手法もある。ADHD傾向の子どもは7%くらいいるとのことだ。50人子どもがいれば2〜3人の問題行動をする子どもがいることになる。複数のワーカーがいて、問題行動(=不適応的心的防衛機制行動)が生じた時に1人はケースワークをして全体としてのグループワークを継続することも必要である。

   グループワークをする時の考え方
@放課後児童クラブなどにおけるグループワーク
 公民館や児童館などで工作・料理などの自発的グループにおけるグループワークと放課後児童クラブなどにおけるグループワークの違いを認識しておくことが必要である。自発的グループはそもそもその活動をしたくて集まってグループである。同じ目的性を持っているから活動をしやすいものである。放課後児童クラブ等のグループは極端な話、クラブに来たくないが、親の都合で来ている子どももいる。これを一緒の考えでやることは出来ない。放課後児童クラブ等で活動をする時、最初からみんなが参加してくれるとは限らないことを前提にしてやることが良いと思う。同時に小学校低学年までの子どもは他の子どもたちが楽しく活動していると仲間になりたい傾向が強い。途中からでも仲間に入れてあげるように考えておいたほうが良い。折紙i飛行機などを作っていて最後の最後の飛ばす場面になってからの登場もありうる。 
  
A利他的行為と利己的行為が一致する活動を入れる
 小学生期は利己的な考え方だけではなくて利他的な考え方も芽生えてくる時期である。ボランティア活動・環境美化活動などの活動を入れて愛他主義の考え方を定着することが必要である。  
B適応的心的防衛機制を助長する活動を
 抑制・ユーモア・愛他主義・昇華・予期などの適応的心的防衛機制を上手く最初から活動に盛り込んでおくことが必要である。放課後児童クラブなどでやりたくない子どもに無理に最初から参加させなくても良いが、参加するならば、暴行罪(刑法208条)・傷害罪(刑法204条)・名誉棄損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)・器物損壊罪(刑法261条)などの行為をしてはいけないことをあらかじめ教えておく必要がある。グループワークの活動をする結果、悪いことをするのならばグループワークに参加しない自由が子どもにはある。しかしその子どもは一人静か遊びに限定しておくことが必要である。職員がその子どもに1対1で遊び相手をすることは不要である。グループワークに参加しない子どもが3人でも、3人それぞれが一人静か遊びをして、1人の職員が見ている。暴力や暴言・暴行をしないという抑制が出来ることが必要と私は思う。活動においては失敗はつきもので、失敗は恥ずかしいことではないことを常にアピールすることが大切である。失敗がありうることをあらかじめ予期させておくことは大切である。失敗の見本をみせて『あれ先生もやっちゃった』などとユニークな対応が出来ることも必要である。またワーカーが予想できなかったようなことを子どもたちがやって時は、そのユニークさを褒めてあげよう。ユニークはユーモアに発展していく。
 不適応的心的防衛機制が出てくることも予め想定しておくことが必要である。かっとなって暴行的な行為を予想しておく。切れそうになった時は別室に連れていってクールダウンをさせる。くどくどと説教をしないで、深呼吸・ラムネ・水飲み・頸動脈を冷やすなどする。落ち着いたら何もなかったかのように仲間に入れる。失敗から立ち直れない子どもには時間という薬が効いてくるまでじっと待ってあげよう。(心気症解離消極的攻撃行動化などをしないようにする)同時に失敗を茶化すような言動を他の子どもにさせないで、逆に自分たちの仲間に入れて立ち直りを助けるような活動を奨励しよう。(愛他主義
   
Cグループワークに運動的な要素を必ず入れる
 小学生期の子どもは活動的なものである。じっと工作をするとか話し合いをするとか草取りをちゃんとやるなどの活動は無理である。折り紙を折る時でも身体を動かす要素を必ず入れておく必要がある。草取りや石拾いを10分やってから、みんなで手つなぎ鬼で思い切って身体を動かす。多重知能理論との考えがあります。人間の知能は論理数学的知能・言語的知能・音楽的知能・対人的知能・個人内知能・身体運動的知能・空間把握知能・博識的知能など八つの知能が独立して有機的な関連をしているとのことです。活動を一つの知能に限定しないことが必要です。歌を唄いながら身体を動かし、太鼓をたたいたり鈴を鳴らしたりする、仲間と一緒に踊るなどの複合的な活動が大切と思います。
   
D全ての活動が表現活動を伴う活動であること
 グループワークの活動でけでなくて放課後児童クラブの活動や小学校の授業でも表現活動を必ず内包させておくことが必要であると私は考えています。 
 
表現遊びということ  表現遊びとは、子どもが自己表現することを楽しめるようなあそびということです。ここではまず、表現ということを考えてみましょう。表現とは「オモテにアラワス」と書きます。表にあらわすためには、内なる何かがあるはずです。自分の内面にあるイメージの世界を具体的な形象として外にあらわすことが表現なのです。

日本古典の「徒然草」にも「おぼしきことを言わぬは、げにぞ腹ふくるる心地しける」とありますが、自分の思っていることを外へ表現するということは、昔から変わらぬ人間の本質的な欲求であることが分かります。 人間が成長発達し、社会のために役立つ人として働けるようになるためには、多くの知識や行動様式を知り、身につけていかなければなりません。特に情報化時代といわれる今日では過去の時代とはまるで比較にならぬほど多量の情報の獲得が必要となってきています。しかし、人間はたえず空気を吸ったり吐いたり呼吸して生きているように、他から知識を教えられ受け入れることと、自分の内なる思考や感情を外へ発揮することとが適度なバランスを保っていることが必要なのです。教えこまれ、やらされることばかりでは息が詰まって苦しくなるでしょうが、一方適度に自己を表現する場があり、外へ自分を発揮することができればストレスは解消され、心の安定が得られます。 そのへんのことを充電(チャージ)と放電(ディスチャージ)にたとえる人もいますが、教えられたことを覚え、身につけていくことが子どもにとって必要なチャージであるならば、自由にあそんだり、思ったこと感じたことを外にむかって思いきり発散してみることは子どもにとって、生命の放電ともいうべき不可欠な活動なのです。(玉川大学元教授故岡田陽先生の言葉)
 表現する要素がないと、子どもたちも鬱積して反抗的になり、問題行動を起こします。私はいろいろな児童館や放課後児童クラブを訪れますが、時に問題行動を作っているのは支援員ではないかと感じることがあります。活動の中に子どもたちが表現することを意図的に入れておく必要があります。表現が汚いものであったり、人を傷つけるようなものであるならば、活動自体がそうした内容を持っているのかもしれません。
 ロールプレーを使って子どもを先生役にして正しい言葉使いで『先生。赤い折り紙をください』『ありがとうございます』などの見本を示してあげれば小学生期の子どもはしっかりした言葉使いが出来るものです。 
E子どもの気質や両親の特質
 ヴァイラントの長期的前向き研究によるとストレスや子どもの気質や両親の特質は『健全な老い』と無関係とのことであった。私も小さいころからの子どもの発達をみていて、子どもたちのストレス・両親の特質・子どもの気質はその後の『健全な生活』と直接的関係が無いように感じている。小さい時に気難しかった子どもが暖かい気持ちの子どもになるし、必ずしも恵まれない家庭環境の子どもがそれをばねにして頑張ることも多い。両親の離婚等のストレスもきちんと乗り越えていくことが多い。そのわりに支援員や教員の間では子ども達のストレス・両親の特質・子どもの気質が原因で問題を起こしていると陰で語られていることが多いように感じる。子どもの時の環境や気質や両親の特質などは変えることが出来ないことである。環境・両親の特質・子どもの気質を考慮してより良い適応的心的防衛機制が出来るようになるためにはどのような働きかけが必要かを予期的に考えて活動することが必要である。 
F子どもへの対応ABCDEFGHでグループワークを充実したものに
Aはアンダースタンド 鳥の眼・虫の眼・仲間の眼で、
Bはbeすべきこと 事前注意義務・活動中注意義務・事後処理義務を果たし、
Cはコントロール 活動の中に働き・学び・遊びのメリハリをつけ、
Dはデスカバリーで 子どもの実年齢・実能力年齢・可能性年齢を考慮して、
Eはエコロジーで 防災活動・環境美化活動・表現活動を、
Fは古きからの日本の教え 三つ心・六つ躾・九つ言葉の発達段階を考慮して、
Gはグループワークで グループワーク・ケースワーク・コミュニティワークの手法を活用して活動しよう。
Hは高い適応的心的防衛機制で 抑制・ユーモア・愛他主義・昇華・予期

 □ホーム □詳細インデックス
 □折紙・カプラのグループワーク(ヴァイラントの適応的心的防衛機制を利用して)