ヴァイラントの適応的心的防衛機制を活用したグループワークの実際 (平成30年4月1日)
                            児童健全育成指導士  田中 純一

   A ユニット折り紙を使ったグループワーク 
 
ヴァイラントの心的防衛機制には適応的なものと不適応的なものがある。適応的心的防衛機制としては、ユーモア・愛他主義昇華予期抑制があり、不適応的心的防衛機制としては、投影解離幻想心気症・行動化消極的攻撃などがある。折り紙活動を通して、子ども達に不適応的心的防衛機制適応的心的防衛機制になるような働きかけして、グループワークの目的をより上手くやる手法を考えてみたい。
   くすだまユニット折り紙を使ってグループワークの展開を考えてみよう。

@折り紙を始める前に
 くすだまユニット折り紙は左端の基本折りを使って、4枚・7枚・12枚などといろいろなものが作ることが出来ます。くすだまユニットだと折り紙の好きな子どもは複雑なものを、得意でない子どもは簡単なものを作ることが出来ます。ユニバーサルデザイン的であると思います。折り紙を配る係を実能力年齢が低い子どもにやってもらうことで、働きの要素を強め、愛他主義の考え方をしっかりとしておくことが必要です。折り紙の色の選択は子ども達の自由に任せることで表現遊びの要素を入れておくと子どもたちはやりたがるものです。『折り紙をするけれど、赤・青・黄色・緑のどの色がいいかな』と提案すると小学低学年はやりたがるものです。
 やりたくない子どもやナイーブで食いついてこない子どももいます。放課後児童クラブ等での活動では、無理にさせないでやりたい子ども達から始めるのが良いと思います。楽しくやっていれば仲間になってくるものです。その時に『最初からやればよかったのに』とか『途中からではだめ』みたいなやり方は子どもを傷つけることになるのでやめましょう。
 折り紙をやる時は『作れなくても良いのだよ』とか『失敗しても良いよ』と最初から話しておけば、失敗を嫌がらないものです。失敗を嫌う子どもの中には実際には出来ないのに自分は作れると幻想していて、他の子どもたちに批判されたり、馬鹿にされて、自尊心を傷つけている子どもも多いものです、折紙だけでなく他の活動でも『失敗は成功の基』とか『失敗から学ぶことが大切』などと失敗を予期して恐れない適応的心的防衛機制を獲得できるようにと思います。
A折り紙を始める
 まずは基本的な折り方で半分にしっかりアイロンをかけて折ります。折ったら床の上においてジャンプ100回などと運動遊びを入れながらやると良いと私は思っています。これをアクション折り紙と呼んでいます。半分に折った中心線に向かって長□合わせ折りをやりアイロンをかけます。この後に右手で持って足を通して左手に移すなどのアクションをして遊びます。折り紙活動にも必ず運動遊びを入れることで、上手く折れない子どものサポートをしながら、全員をしっかりと基本折りが出来るようにします。
B40人くらいの子どもたちを5人くらいの小グループにします。5人グループが8チーム出来ます。クラブの発達段階にもよりますが、男女別・男女混合・学年別・学年混合・自由グループの結成などいろいろなやり方があります。小グループでイの基本折りをみんなで作ることを提案します。イの基本折りが4枚でロのダイヤモンドユニットが出来ます。出来たらその中にチョコやラムネなどを入れてあげると喜んでくれます。
C子ども達が作品を作っていくといろいろな工夫をするものです。そのユニークさを取り上げていくと、ますます楽しいものを考えるものです。こんな流れになると失敗をユ―モアで克服することもできます。すると失敗してもすぐに怒り出したり(行動化)、すねて泣いたり(消極的攻撃)、やる気をなくしたり(心気症)、友達や支援員のせいにしたり(投影)しないで行動を抑制出来るようになります。
D放課後児童クラブは大きな子どもや折り紙の得意な子どももいます。ロが出来たら、ハ、二、ホ、へなど難しいものへの挑戦を提案します。挑戦をする子どももいますが、『先生、他の折り紙をやっていいですか』と聴きにくるものです。男の子はたいてい紙飛行機です。『良いよ』とどんどん自主的にやらせることが大切です。同時にワーカーとしてはよく飛ぶ紙飛行機(とっぴゅーんSドリーム飛行機73式飛行機など)が作れることが必要です。ユニット折り紙が30分で紙飛行機が45分やっていたなどもあります。グループワークの運営は融通を大切にすることが必要です。放課後児童クラブでの夏休みなどは90分くらい一緒に活動することもあるものです。楽しくて身体を動かして、表現する活動であれば小学校低学年でも90分は長く感じないものです。90分くらい子どもたちが楽しい時間を過ごせるようにと私は思います。
Eくすだまユニット折り紙のグループワークから、融通性を駆使して、紙飛行機や防災ボックスなどへ発展させることは大切です。くすだまユニットは上手くいかないけれど『飛行機つくりなら僕は上手いよ』と違った方向に頑張ることは昇華という適応的心的防衛機制の手法を獲得できるようになる可能性があります。もちろん折り紙でなくてボール遊び・ブロック・カプラ・カードゲーム・草取り・学習などいろいろな活動が昇華の対象となります。
F活動途中に疲れたり、友達とのトラブルからあっちの世界に行ってしまうこともあります。こうした状況(解離的な状況)では時間という薬しかないと私は感じています。別室で静かに休み、水を飲む、アイラップに氷と水を入れた魔法の手で冷やしてあげるなどのクールダウンをすることが良いと思います。落ち着いてあっちの世界から戻ってきたら、何事もなかったように活動を再開すれば良いと思います。途中から入ってくる仲間をいつでも受け入れられる小グループを作っておくことが大切と思います。
  

  B カプラを使ったグループワーク
@カプラを始める前に
 カプラを始める前に、カプラを投げてはいけない・裸足もしくは靴下でやる(内履きや外履きを使用しない)・カプラを汚くしないとの三原則をしっかりと説明しておきます。子どもたちの見本となる支援員等もこのルールをしっかりと守ることが大切です。実際のやり方はロールプレーなどできちんと教えることが必要です。カプラを投げない・内履き使わない・汚くしないなどのルールをしっかりと確認しておけば、失敗した時も行動を抑制することが出来ます。子どもたちは上手くいかないとカプラを投げる、踏みつけるなどの行為を無意識でやるからです。
 カプラは壊れることがあっても怒ることの無いようにして、逆に崩れたら『良い音がしたね』とのポジティブ思考をするように提案しておきます。カプラが崩れると本能的に筋肉が硬直し、アドレナリンが分泌して『あ』等の声があがります。この時に怒りとかの感情はまだ芽生えていません。崩れた瞬間に『良い音がしたね』と声かけをしてあげれば、事態をポジティブなものと把握します。『残念だったね』などの慰めのことばはマイナスとなります。残念とは念が残るネガティブなことです。ネガティブな事態が起きたこと(カプラが崩れたこと)の理由が自分にあると思えば、もうカプラをしない(心気症)とか完成してないのに完成したと思い込む(幻想)などになります。自分ではなくて他人の性だと思うと、他人が壊した(投影)と思って、他の子どもに暴行暴言をしたり(行動化)、先生の教え方のせいだと泣き出したり(消極的攻撃)をしたりします。崩れた時に『良い音がしたね』との手法を獲得しておくことは効果的です。崩れそうだなあと思う時は崩れて子どもたちが切れる前に声かけの準備をしておくことが必要です。
Aカプラ活動を始める
 カプラの活動はケースワークとグループワークとコミュニティワークを上手く結合したものとなるのが良いと私は考えています。最初は一人に10枚くらいのカプラでカプラの寝る・起きる・立つのカプラの使い方を教えます。その上で三原則(投げない・踏まない・汚くしない)を守って自由に作ってみようと提案します。カプラは1・3・15の黄金比率の1枚の板ですが、バリエーションは無限です。子どもたちの作品は10枚でも本当にいろいろです。そのユニークさを褒めてあげれば、他の子どもたちの作品に触発されていろいろなものへと発展させます。ユニークさはユーモアにも通じます。子どもたちは『先生見て。見て。』とやってくるものです。
  
Bケースワークからグループワークへ
 一人ひとりで作るよりも仲間になったほうが楽しいものです。子どもたちは一人で作らないで『仲間と一緒にやってよいですか』と訊きにくることがあります。もちろん『どうぞご自由に』と言います。同時に尋ねてくる回数が多くなってきたら、『グループを作ってやってみようか?1グループ1箱(300ピース入っている)使ってみてください』と話をすると自然とグループワークになるものです。もちろん一人で続ける子どももいますが、それはそれで良いと思っています。一人でやっていてみんなとやりたくなったら上手く仲間に入れてあげる(愛他主義)精神を伸ばしていくことが大切です。グループで作っていると崩れそうになることがあります。崩れた時は『良い音がしたね』の声かけで行動化を抑制し、くじけないでまたチャレンジしてどうしたら上手くいくかと思うが、カプラは必ず崩れることがあると予期しておくことも大切です。
Cグループワークからケースワークへ
 カプラ活動が進み、50分ほどするとだいぶ完成してきます。完成した作品は壊さないでバリアーを作ったり、他のグループと線路や道路を作ったりして、ケースワークへと発展させていきます。1年生グループなどは途中で崩してしまう場合も多々あります。『上級生のグループに寄付をしてあげよう』とポジティブな方向性にもっていくことが必要です。上級生グループには『下級生がカプラを持ってきたら、ありがとうと言って、自分たちの仲間に入れてあげるんだよ』と話しておいて愛他主義の輪を広げていくことが必要です。
Dカプラ活動の終了
 小学生でのカプラの活動は概ね90分くらいです。最後の後片付けも子どもたちとやります。勤勉性を培い、利他主義と利己主義が一致する活動が必要です。終了10分前くらいになったら、記念撮影をして、みんなで壊す作業に入ります。それまで一回もカプラ活動をしなくて一人で遊んでいるか、周囲をうろうろしていた子どもの出番がここであります。『○○ちゃん。ナイアガラを崩すから一緒にやって』と言えば喜ぶ子どもが多いものです。『○○ちゃんだけずるい』との声が上がればその子ども達も崩す係にしてあげましょう。みんなでカウントダウンをして楽しく崩してみましょう。最初は参加できなかった子どもも2回目3回目からはスムーズに参加できるようになっていくものです。
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