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 観察に基づく活動の展開 (2015年9月12日) □児童健全育成の観察の手法

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児童健全育成の活動と観察

 児童健全育成士 田中 純一

      3 活動の展開前
 児童健全育成の場合でも介護の場合でも手法手技の獲得は必要であるが、それ以前にきちんとした観察が出来なければ、せっかく手法を使ったとしても、逆に悪くなることもある。しっかりした観察眼を持たない看護師はいない方がよいとナイチンゲールも書いているが、児童健全育成の現場でも同じであると私は思います。しっかりとした観察の仕方を獲得するために児童健全育成の手法と観察1において、私自身が子どもや仲間や放送大学院等で学んだことをまとめてみました。しっかりした観察はアセスメントをしっかりすること一緒であると思います。
     活動の展開前の留意点1 子どもの発達段階
 しっかりした観察(≒アセスメント)に基づいて、いくつかの活動を展開することになりますが、この場合に子どもの発達段階を考慮した活動が必要であるのが留意点であると思います。子どもの発達段階とレディネスを考慮しないと無理な課題設定や簡易すぎるものになってしまうからです。子どもの発達段階については、ピアジェとエリクソンの考え方が私は良いのではないかと思っています。江戸期の子どもに対する考え方がピアジェ・エリクソンと同じであることに気づいたので、一覧表にしてみました。
 子どもの自主性が大切だと言って、全てを子どもの自由にさせるとの考え方がありますが、小学校低学年までは他律的な面が強いものです。他律的な段階で自由にやらせてしまうと、実際は力の強い子どもに暴君的に権力を振るわせてしまう結果になることがあります。子どもの発達段階を考えての活動内容のコントロールが実際には必要となります。

年齢区分における考え方について

満年齢

出生前

0歳

1歳

2歳

3歳

4歳

5歳

6歳

7歳

8歳

9歳

10歳

11歳

12歳

13歳

14歳

15歳

16歳

17歳

18歳

19歳

20歳超

児童福祉法

乳児

幼児

少年

保育園・学校等

未満児

園児

学童

生徒(中学・高校)

学生

小児区分

新生児・乳児

幼児

学童

青年

医療機関

「周産期」とは、妊娠22週から生後満7日未満までの期間 新生児は生後28日以内 小児科は新生児から中学卒業くらいまで  

少年法

少年法の適応(刑事責任に問われない)

少年院送致

刑事責任有

刑事裁判有

成人扱い有

民法刑法上

事理弁識能力が充分でない(保育の段階)

責任弁識能力が充分でない

賠償責任能力が充分でない

公職選挙法

選挙権無

選挙権有

数え年

一つ

二つ

三つ

四つ

五つ

六つ

七つ

八つ

九つ

十一

十二

十三

十四

十五

十六

十七

十八

十九

二十

三つ子も魂百までもの誤解  
   「つ」がつくまでが大切  

江戸期の教え

三つ心

六つ躾

九つ言葉

十二文

十五理

たとえ

肌を離さず

手を離さず

眼を離さず

  心を離さず

道徳感の発達

欲求希求思考 道徳的互恵、快楽主義 他者への同調、良い子思考 法と秩序の維持 社会契約、法律の尊重と個人の権利思考 普遍的権利思考

ピアジェ

感覚運動期

前操作期

具体的操作期

  形式的操作期

エリクソン

乳児期

幼児期

幼児後期

児童期

青年期 

基本的信頼

自律性

積極性

勤勉性

同一性 

  活動の展開前の留意点2 ケースワークとグループワーク
  観察やアセスメントは一般的には個人を対象として、ケースワークと考えることが多いものです。児童の健全育成の場合は、観察対象を集団とする場合も考慮することが必要です。むしろ集団を観察することの必要性がある場合が多いかもしれません。基本的に児童館・放課後児童クラブ・保育園や幼稚園そして学校は集団の力を上手く利用して活動するからです。ですから、個人の観察とともに、集団の中の小グループの観察・全体としての集団の観察が必要です。小集団や集団全体としての様相をしっかり観察することで、どのような活動をするかが決定されることになります。観察の結果に基づいて、実際に活動する場合はケースワークとグループワークを意図的に一緒にしてやることが必要となることが多い。ケースワーク対象の児童をグループワークの活動の中に取り込み、グループワーク自体も質的に高いものにしていく必要性がある。障がい児加配職員とは障がい児を抱える集団・クラブ・クラスに対する加配であって、障がい児個人に対する加配とすべきではない。もし、障がい児童加配職員が障がい児個人に対する加配であるならば、集団の中で障がい児をみないで、全く別の環境を用意して、障がい児と大人だけで健全育成をやれば良いことになる。加配職員が障がい児にのみついて、結果的に障がい児の自立を妨げていることが多々ある。
※集団における集団の発達段階を見極める必要性もあります。個人的には良い人が多くても、集団としては問題を抱えていることが多くあるものです。集団として団結力もあり、排他的でなく、民主的で、集団の発達が個人の発達にも良い影響を与えているような段階の集団もあります。集団の団結力もなく、まったくバラバラで個人個人が勝手放題との集団もあります。集団の団結力はあるのですが、ボスが支配をしていて、排他的で、個々人の個性をつぶす集団もあります。個人・小集団・集団がどのような状況にあるかを見極めるための観察はとても重要です。
 活動の展開前の留意点3 年間予定計画等と活動内容
 児童館・放課後児童クラブ・保育園や幼稚園はある程度年間のカリキュラムが子どもの発達段階を考慮して設定されています。学校はもっとはっきりしていて、学校教育法施行規則で教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科(以下この節において「各教科」という。)、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間並びに特別活動によつて編成するものとする。とされている。そうではあるけれど、実際の子どもの個人・小集団・集団・地域の実状に応じて臨機応変に活動を展開する必要性がある。とくに児童館や放課後児童クラブなどでは、活動内容に大幅な許容範囲があるから、活動する内容は観察に基づいて必要なことをしっかりと実施する必要性があると言える。しかしながら、児童厚生員・支援員等が今までのやり方を踏襲することに拘ることが多いのも事実である。児童数も増えて、とてもお昼寝などが出来る状態でないのにもかかわらず、お昼寝に固執し、『寝なさい。寝なさい』との支援員の声がうるさくて、ゆっくり静養できなかったりする子どもがいたりするものです。状況が変容したのだから、お昼寝タイムを静かタイムにして、マンガ読み、ごろごろしている、折り紙などの静か遊びなら良しとする。もとろん昼寝をしたい子どもがいたら出来るようにするくらいに変容させていくことが必要である。
  活動の展開前の留意点4 活動は働く・学ぶ・遊ぶが包含されている
  西欧的な科学的な考え方が正しいと言われている。科学の知は客観性・普遍性・論理性によって成立している。しかし、物事は主観性・個別性・宇宙性によっても動いている。これを臨床の知と言うが、科学の知と臨床の知は敵対しないで相互依存関係であるべきと私は思う。西欧的な科学の知はきちんと分類することが基本である。そこで、働く・学ぶ・遊ぶの活動が分離されることが多い。学校は学ぶ、児童館や放課後児童クラブは遊ぶ、会社は働くという感じで分離されてしまっている。しかし本来的に全ての活動の中に働く・学ぶ・遊ぶが包含されている。場面的に主に働く・主に学ぶ・主に遊ぶというようにメリハリがあると考えることが出来るのではないかと私は思う。ドッジボールの活動をする場合に、遊戯室を片づけて、ボールを用意するのは働きの活動である。ルールを確認し、チーム編成をして、危険なく活動するための注意をしっかり聴くのは学びである。実際にゲームが始まればそれは遊びである。最後に整列して挨拶をして、ルールを守れたかなどの確認は学びである。後片付けをするのは働きである。働くは人のために動くとの意味であるから、みんなのためになることをしっかりやる。学びでは真摯でなければならない。遊びは自由闊達になるようにしなければならない。働く・学ぶ・遊ぶのメリハリがしっかりしていて、全体としてまとまっていることが、子どもたちの健全育成の基本である。  

     児童健全育成のために活動の展開の実際 
 児童館や放課後児童クラブにおける活動は基本的にケースワークを包含したグループワークを通して、活動することが基本となる。ケースワーク(個別援助活動)もグループワークの中で展開されることが基本である。もし、ケースワークとして個別に実施するのであれば、児童館や放課後児童クラブの集団の中でやる必要性はないからである。また、ケースワークは特別な子どもに必要なだけではなくて、全ての子どもにとって、ある意味では必要である。活動はケースワークを主とする時とグループワークを主とする場面があるが、それらを上手く組み合わせて実施することが必要である。さてグループワークの原則をまずに列挙しておく。
@受容の原則
 グループワーカーは、先ず一人ひとりを一個の人格を持った人として尊重することが基本原則である。小さな子どもといえども尊重するという基本的態度を身につければならない。ワーカーの好みや、個人的な好き嫌いもあろうが、グループの中の一人ひとりを理解していくことが受容につながる。
A個人差の尊重の原則
 
グループワーカーは、自分と接する子ども一人ひとりが独自の存在であることを頭で判っていても、すべてのメンバーについて、つい平均的な姿を求めがちである。子どもの長所・短所、言葉使いや行動、そして発達段階(エリクソンのいう)に応じての知識だけで子ども理解をするのでなく、発達の差や、性格、考え方にも個人の違いがあることを十分に知り、個性を持つことを忘れてはならない。
B援助目的の明確化の原則
 グループワーカーは、子どもをなぜグループに参加させるのか、それはどんな内容のグループなのか、グループはその子どもの成長にどんな意味をもつのかを明らかにすれば、メンバーを容易に受け入れることができよう。メンバーの子どもも、それなりの意味がわかればワーカーに対しての信頼や喜びをもつことができる。
C自己決定尊重の原則
 グループワーカーは、メンバーの自主的な人間としての成長を促す役目をするものであるから、グループの中で一人ひとりが自分の「責任」を果たすということを自覚させ、自立心を強めさせることが必要となる。また他のメンバーに対する尊重の気持ちを自覚させよう。そのため、ワーカーが自分の好きなプログラムを実施しようとしたり、自分の希望でグループを指導することは危険である。あくまでも子どもたちのメンバーが自分で選択し、自分で決定する雰囲気作りをしなければならない。自分たちで決定できることが、自主的なグループを育て、人間を育てていくことになるのであるから。
D成就の経験と喜びの原則
 自分たちの決めたことを達成した喜びは、他人が決めたことの達成より幾倍も大きいことは誰でも経験していよう。グループで協力し合うことは、達成までに多少時間がかかっても、社会的能力を高めていくことになり、その経験を積み重ねることで、個人もグループも成長していく。
Eメンバーの相互作用の効果の原則
 グループワーカーは、メンバー同士の働きによる影響が深まるように援助することが大切である。協力し、互いに自分の足りないところを補ったり、援助したりすることで相互作用が深まり、「わたし」から「わたしたち」感情が深まって自発的活動を促し、まとまりあるグループに発展していく。
F融通性のある運営と活動の原則
 グループワークの過程で、メンバーのニーズや変化に応じて融通性のあるグループであることが望ましい。グループワーカーはプログラム活動についても、メンバーの能力や発達に応じた変更や修正を行っての活動や運営ができるようにする。(社会福祉援助技術総論より)


 a受容と個人差の尊重について
 しっかりした観察に基づいて@受容の原則・A個人差尊重の原則が適応されることになる。ワーカーが自分の判断で子どもの状態を推測しても受容したことにはならない。また子どもの発する言葉で判断することも難しいものである。観察のいくつかの手法を用いて、個人や小集団や集団全体の在り方を理解し、受容して尊重することが大切である。
 b援助目的の明確化
 観察(アセスメント)に基づいてB援助目的を明確化することになる。集団がてんでバラバラ、自己中心でルールが守られていないようであれば、ルールを守って活動することが、みんなが楽しく遊べることにつながることを学習することが目的となる。折り紙の場合であれば、折れ線をしっかり折ることが折り目正しい生活につながることを提起する。また、カプラの場合であれば。カプラを投げない、素足もしくは靴下でカプラを使う。崩れたら『良い音がしたね』などの声掛けをするとの基本的なルールを守ることが大切となる。簡単で面白い活動に限定して、ルールを守ることが活動の大きな目的となる。
 個々の子どもが基本的な躾が出来ていて、集団としての活動がまだ充分でなければ、基本的なルール確認は手早くやることが必要である。ケースワーク的にくすだまユニットの基本折りを学習する。その上でグループを組んで大きな作品を作れば、個々人でやるよりはもっとすごいことが出来ることを学んでいくことが必要である。
 c自己決定尊重
 基本的なルールを守ることが主な目的となるのか、集団での創造的活動が目的となるかで手法は違ったものになる。Bの援助目的を明確にしたうえでC自己決定の尊重の原則が適応される。この場合に子どもの自由な活動を保障するみたいな考えは上手くいかないこともある。折り紙をやろうとの提案に、ドッジボールをやりたいとの子どもの考えは両立しないことがある。小学生期の子どもは発達段階的に他律的な段階もある。子どものみの自主性のみを尊重すると、一部強い子どもが弱い子どもを支配することになることもある。援助目的を明確化して、活動の内容を提示し、活動内容の中で子どもの自己決定尊重の原則を上手く使うことが必要となる。折り紙で考えてみる。『折り紙をやりますが、赤・青・黄色・緑のどの折り紙を使いますか?』のような選択肢を用意しておくことで、子ども自身が自分で決めたのだとの自覚を促すことが必要である。集団でカプラをやる場合に援助目的が明確化されていれば、作品完成のみに拘る必要性がないとわかることがある。一般的にカプラを集団で作ると一定時間にある程度のものを作らせたいとワーカーは考えてしまう。グル―プワークの目的は仲間関係を作っていくことが大切であるから、結果的に途中で作品が完成しなくても拘る必要性がない。またカプラは壊れるときに良い音がするので、きれいな音を聴いたことでポジティブ思考となることが出来る。
 d成就の経験と喜びの原則
 成功体験が頑張りを上手く伸ばしていくことになります。子どもたちのレディネス(準備性)に応じたものを子どもたちの今日出来ることではなくて、明日に出来そうなことを提供していくことが必要であるとヴィゴツキーは最近接領域の中で提案しています。児童館や放課後児童クラブでは異年齢異世代を対象とすることが多いものです。同年齢ではないので、どのようなものを提供するかが難しいものです。折り紙などでも難しくても駄目だし、簡単すぎても面白くないものです。そこで折り紙であるならばユニット折り紙のようにユニバーサルデザイン的なものが活動には必要であると思います。ユニットの単体なら年中児でも作れる子どももいる。3枚ダイアモンドユニットなら保育園の年長児でも作れる。6枚や12枚だと小学生の低学年(1年〜3年)、30枚ユニットは高学年や大人まで、60枚ユニットや90枚ユニットはかなり高度な技能がないと作ることは出来ない。カプラも含めてユニバーサルデザイン的なものを提供すれば、同じ活動をしているが、子どもたちのレディネスに応じた活動を展開できるものである。
  異年齢異世代を同時に指導することは(活動させることは)同じことをやっても違った成就の経験と喜びを味わうことが出来ることでもある。例えば襞つきテトラを作る場合で考えてみよう。襞つきテトラはクリスマスの飾りに使うことが出来る。概ね小学2年生くらいならなんとか自分の力で出来るであろう。5年生や6年生には簡単かもしれない。そこで5年生6年生には自分で作るだけではなくて、1年生で出来ない子どものお手伝いをするように働きかける。1年生の子どもはお兄さんお姉さんに教えてもらって作れるようになり成就の経験となる。5年生や6年生の上級生は下級生に教えることで、教える能力を身に着け、優しさを学ぶことになる。テーチング イズ ラーニングと言われるように自分が出来ることと人に教えられるようになることは異質である。同じ活動をしても、違った成就の経験と喜びを味わえるように働きかけることが大切である。
 eメンバーの相互作用の効果の原則
 児童グループワークは通常5人〜6人のface to faceの関係になれる小集団が7グループ〜8グループあって、30人〜45人くらいの人数で実施されることが多い。また私の経験からは、やりやすい人数である。人数がこれ以上多くなると参加者の把握がしにくくなる。少なすぎると子ども同士の関係性が少なすぎる。5人〜6人の小集団の中で互いに我々感情を作りあげていく。同時に7〜8のグループ間においても切磋琢磨と助け合うことが大切です。カプラや折り紙などをやっていると他のグループには秘密にして見せないなどの意地悪をするケースがある。お互いに良いものを出し合う関係性でありたいものだ。小グループの中での互いの子ども同士の相互作用も大切ですが、小グループ同士のよりよい関係も大切です。小グループ同士を争い合う関係ではなくて、競い合うのだけれど助け合う関係性を作っていきたいものです。
 各グループ内に自己中心的で独裁的な子どもがいると、みんなの成長が妨げられることがあります。観察の段階で子どもの段階をしっかりと見極めておいて、グループ編成においてはグループの作り方を計画的に行うことが必要である。
 小関康之さんは著書児童グループワークの中で以下のように述べている。
 一般にグループワークは自然発生的集団や、団体や施設が意図的に作った人為的集団を対象とするが、グループワークが、それぞれの団体や施設あるいはサークル活動において努力しなければならないことは、対象となる集団が、人為的集団であれ自然発生的集団であれ、グループ活動の過程にあって、小集団=人格的協同集団的性格をもった集団へと変容することである。
 たとえば、自然発生的集団である近隣の子どもたちのあそび集団に対して、グループワーク的アプローチを試みても、子どもの自然発生的集団=あそび集団のもつ排他的性格を、人格的協同集団としての性格に変えながら、より多くの子どもがグループワークの対象になるように、試みがなされなければ、グループワークは、自然発生的集団の内的凝集性を高めるだけの効果しかなくなり、結果的には、排他性を高めること以外になんら効果をもたないことになる。すなわちグループワークは、自然発生的集団をもその対象として扱うが、それは、あくまでも自然発生的集団を、小集団づくりの核として活用することであり、自然発生的集団を民主的、人格的な開かれた小集団として変容発展させていく過程を整える援助をすることに、大きな役割を見いだすべきである。
(小関康之著「児童グループワーク」より)
 ADHD傾向の児童で、特別な個別援助が職員の力でなされなければならない場合でも、メンバーの相互作用の効果を使うことが原則である。障がい加配職員は、個人に対する加配ではなくて、障がい児を抱えるクラブに対する加配である。クラブの中でより良いグループワークを通して子どもたちの健全育成がなされるようにするためである。障がいを抱える子どものみに加配職員が専念すると障がいを逆に助長する結果となることも多々ある。
 グループワークにおける小グループを作る場合には適切な配慮が必要である。35人でグループワークをする場合で考えてみたい。まずジャンケンゲーム等で1番から順番に並べる。(5人にジャンケンで勝ったら並ぶ。ジャンケンの途中でも並ぶ。)上からもしくは下から1・2・3・4・5・6・7の番号を打ち、同じ番号の人がチームを作る。この時の同じグループにさせない方がよい子どもがいたら、1・2・3・4・5・6・7・7・6・5・4・3・2・1と番号をふるとか、1・1・2・2・3・3・4・4のように番号をふるとかして、子どもに気づかれないように小グループを編成することが必要である。この他、前もってワーカーが小グループを作っておくこともあるし、子どもたちが自由に作ることもある。グループワークの目的と子どもと子どもたちの観察に基づくレディネスを見極めた小グループ編成が必要である。また複数のワーカーで実施することが多いので、ワーカー自身が上手く連携をして活動することが一番大切である。職員同士が相手の行動をある程度予測して助け合いが出来なければ、子どもたちも同じように自己中心で排他的な関係を作っていくものである。
  f融通性のある運営と活動の原則
 児童館と放課後児童クラブでは、グループの作り方がずいぶんと違うと思う。児童館では自由来館が多いので、特別なキャンプや料理教室・工作教室などでは小グループを作って、意図的にグループワークをやることが多い。また自由遊び等の場面においてはグループワークではなくて、個々の子どもに個別に職員が対応することが多い。放課後児童クラブでは班編成をして、班編成のもとにおやつや後片付け、整列、工作などをやることが多いようだ。

 私は児童センターの体育指導員として勤務を始めたが、その後、放課後児童クラブの担当を命ぜられ、30年間仕事をしていた。児童館運営の良い面と放課後児童クラブ運営の良い面をミックスして、融通性のある運営と活動を実施することが子どもたちの健全育成のためになると思う。
 グループワークにおける小グループの編成は児童館においてもすべての活動において活用することが大切であると思う。子どもは指導員や支援員との関係性で成長するものではなく、子どもたちの関係性の中で成長するからである。カプラや折り紙なども含めて全ての児童館における活動に小グループ編成を意図的に行うことが必要であると私は思います。折り紙をやる時に、最初は職員が全体説明をする。これは子ども対職員の一斉の個別指導であると言える。次に出来た子どもが、まだ出来ない子どもに教えるという子ども同士の教え合いへと意図的に発展させていく。これは小さなグループワークである。次第に小グループを職員が意図的に(子どもには無意識的に)形成させていき、小集団でのグループワークでユニット折り紙などを作っていく。このような展開をすれば児童館における自由来館児童中心の活動でもグループラワーク的展開が出来ることになる。
 放課後児童クラブにおいては一般的に上級生と下級生を一緒にした班編成や学年別のグループ編成で効率的な(効率的であるかどうかは疑問な要素もあるが)運営がなされることがある。しかし、班編成や学年別男女別編成などが固定化されてしまっている傾向もある。健全育成のためのグループワークにおいて、きちんとした観察のもとに援助目的を明確化して活動することが必要である。援助目的にあった活動によって、当然、小グループの在り様はいろいろであらねばならないだろう。子ども時代においていろいろな仲間経験やグループ経験をしておくことは、将来のために役立つ。ある時は異年齢との混合グループ、同年齢とのグループ、最初から決められてグループ、自分たちで自由に作るグループ、2〜3人のグループ、4人〜6人のグループ、7人〜10人くらいのグループなどいろいろな小グループを臨機応変に経験することはとても大切なことだと私は思う。

  修行とSPDCA
 高野誠鮮さんが修行とは、行いながら進み修正していくことだとおっしゃられている。私は日本語にも適切な言葉がたくさんあるのに、舶来ものに頼っている傾向があるなあと思う。
 一般的に計画・実行・修正・再実行をプラン・ドゥ・チェック・アクションのPDCAサイクルと言っている。現場では年間計画とか全体計画などのプランが最初からしっかりとたてられ、それに固執してしまうケースが多く私には見受けられた。そこで小さな一歩・やる・反省再び実行とのことでスモールプラン・ドゥ・チェック・アクションのSPDCAを2006年3月に提案した。  http://www.na.rim.or.jp/~tomoyan/syuhou/spdca.html
 その後アクションリサーチという看護学の考え方を学んだ。あるアクションを起こして、そのアクションの結果でリサーチ(検索)して、次の行動を考えるというものである。SPDCAとアクションリサーチと修行の考えをうまく生かしていきたいと思う。
 考えてみると人生は暗闇の中を歩いていくことにも似ている。とりあえず小さな一歩で周囲の状況を把握して、適切な道を探っていきたいと思う。もちろんこれは臆病になるということとは違う。観念的にいろいろ考えるよりもとりあえず何かをしてみることだと思う。下手な考え休むに似たりともいう。また、逃げるべきか、戦うべきかのときに日和見的な行動で逡巡していると全滅することもある。
  人生を修行と考えて、とにかくやってみることが大切と思います。