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j児童館運営におけるSPDCA(スモールステッププラン・ドゥー・チェック・アクション) 2006年3月22日 

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 児童館運営の手法の問題点
 児童館や児童クラブの運営において新たな運営方法の手法が開発されても良いのではないかと私は考えている。その一つの理由が児童館・児童クラブの運営が硬直化をしていることにもある。また、実際に汗を流す人ではなくて、プランをたてる人が中心になってしまい、観念論に終始してしまうことが多いからである。結果として計画は立派だが中身がないことが多いものだ。
 第2に世の中の急激な変容は今までどおりの運営ではたちいかなくなっていることが多い。にもかかわらず既存のパターンでの対応に追われ、子どもの安全すら守れないことも多くなっている。
 そこでj従来の計画をたて、実施し、反省会をするパターンの見直しを考えてみようというものである。通常の場合、立派な計画をたてることが重要視される。したがって机上の計画=計画書が立派であることが必要とされる。しかしながら実際の現場は計画ですべて把握できるものではない。把握できないものを把握したとするのだから頭の中の「知識」をたくさん持ったものが優位になる。しかも立派な計画をたてるとその計画に逆に振り回され、目的が忘れられて計画実行が目的になってしまうことも多くあるのである。計画そのものが問題とされるよりも、計画通りになぜいかないかが問題とされるのである。

 具体例で考えてみよう。
 児童館で子ども秋祭りを計画するとする。ポスターを20枚・チラシを2000枚配布すると決める。そうなると20枚のポスターを立派に作ることに精力をつぎ込むことになる。実はポスターは現実的には10枚でよい場合もあるが、20枚と決定しているのでそれにこだわってしまう。そして精力をつぎ込んで秋祭りの1週間前に立派に完成したポスターも貼られない事もあるのである。またチラシ作りも頑張ったが、近隣の小学校は500人弱・配られないチラシはゴミとなってしまうのである。これはポスター・チラシのことばかりではなくて、このようなパターンのことが多くの部署(人集め・ボランティアの手配・企業等の協賛・共催団体や後援依頼・駐車場の確保・昼食の手配・祭でのステージ発表・工作コーナー・ゲームコーナー・フリーマーケットコーナー・ゴミの処理などなど)において実際になされているのである。計画をたて、実行し、反省するとパターンのやり方はかなり効率が悪く、ときには本来の目的が忘れ去られて計画を実行することが目的となってしまうことがあるのである。
 秋祭りの例で言えば以下のようになる。秋祭りは子どもたちが自らの力で日頃の活動の成果をステージで発表することが目的だったとする。ところが次第にステージでの発表自体が目的となり、発表を成功させるために日頃の活動ができなくなったり、子どものためのステージから児童厚生員のためのステージ練習となってしまい、子どもたちの不満が募ることはよくあることだ。

 児童館運営の手法としてSPDCA(smallstep plan do check action)
 行事等における問題点を解決し、より良い運営を実現するために私はSPDCAの手法を提案したいと思う。児童健全育成推進財団の事故防止マニュアル作成委員かが編集した「児童館における安全対策ハンドブック」P10に事故検証の項にPDCAサイクルの実行が大切とある。SPDCAというのはこれをさらに発展させ、行事や日常活動にも取り入れようとしたもので、スモールステッププラン・ドゥー・チェック・アクションを略したものである。スモールステップの考え方は平成17年度の保育園児のローラースケート指導において指導回数を2倍にし(月に1回を2回にし)一回あたりの時間を短くしてやってみたら成果があったのでそれを利用した。
 まず、開催日・開催内容・開催目的などの大まかな計画をたてる。その上で計画実施までを4〜5回(もしくはそれ以上の)スモールステップに分解し、第1次スモールステッププランをたて、ドゥー(実行)し、チェック(検証)する。この検証の上に再度プランの練り直しを図り次のアクションにつないでいくというものだ。
 秋祭りの例で考えてみよう。まず3ヶ月前くらい(7月)に子どもの表現遊び発表の機会として秋祭りを10月14日土曜日の午後1時から3時まで児童センターで開催するとだけを決定する。この決定に基づいて発表のグループ募集・企業の協賛・町内会や大学や専門学校のボランティアが可能かを探る・老人ホームからの参加ができるかを検討する。保育園児の参加を探る・工作やフリーマーケット・駄菓子屋さんなどができるかを考えるなどのスモールステッププランを実際に1週間から2週間をかけて調べてみる。2週間後の概ねの参加予想や協力体制をチェックしなおし、再プランをたてる。保育園児の鼓笛発表・小学校の合唱部の参加・大正琴グループの演奏・マジックショーのグループなどが参加してきたので、2時間では終わらないとの予想から午前10時〜午後3時までに変更とする。昼食はそれぞれ各自持参ということになるが、地域組織活動の補助金を活用してトン汁サービスをできるとのことになり、学生ボランティアの募集もやりやすくなる。8月になり概要が決定され、フリーマーケットの募集・学生ボランティアの募集を地元の新聞社やテレビ局などにお願いすると共に、子どもたちの遊び広場への企業等の寄付のお願いを始めることとなる。9月、ボランティアの人数が50名程度となり、そのうち20名は近くの老人ホームの車椅子を押すボランティアに頼むこととする。30名は企業からいただいたチラシを使ってのユニット折り紙作りや風船プールなどの運営に回ってもらうことにする。10月になり、フリーマーケットの募集が思ったよりも少ないので子ども会やサッカー少年団・野球部・ボーイスカウト・ガールスカウト・近隣の単独運営の児童クラブにも呼びかける。学生のボランティアが多くなり、自家用車で来たいとの希望が多い。協賛企業であるスーパーマーケットに駐車場の使用をお願いする。そのかわりではないけれど地域組織活動のトン汁材料の購入と学生ボランティア及び希望者のおにぎりをスーパーにお願いすることにする。
 一週間前となり、台風が近づいて来て、開催が危ぶまれる。気象条件が悪い時はフリーマーケットを中止し、老人ホーム及び保育園の参加は無しとの予定にする。予定通り・午前10時開催で午後1時半終了・最悪中止の三案でいくことにする。
 このような形でスモールステッププランをたて、実行し、反省して、その反省の上に再プラン化をしていく円循環的活動をしていくことが必要である。このSPDCA(スモールステッププラン・ドゥー・チェック・アクション)のやり方で行えば目標を見失うことが少なくなる。なぜならばチェックの時点で目標に沿っているかきちんとチェックされ再アクションされるからである。また現実の変容の中で柔軟な対処と次のプランが組める。計画段階にはなかった参加者を巻き込むことができる。突発的事態への対処も容易である。
 
 SPDCAのやり方で活動する場合、いわゆる古株の常連さんの意見がまかり通るという悪しき弊害の脱却からの可能性もある。というのはスモールステッププランされたことが有意義であったかどうかは即座に検証されるからである。ポスターが20枚必要とのプランをたてたとしても実際に貼ってくれるところを調べなくてはいけない。自分で調べれば実態がわかる。また他のメンバーもポスターの掲示場所を探すであろう。この実際の積算がポスターの数となる。したがってSPDCAの場合はポスター20枚の計画は2週間程度でチェックできるのである。この展開により、(たとえ古株の人学歴の高い人がたてたプランでも)有用でないプランは淘汰される。(一般的なPDCのように最後の反省までチェックがないと、貼られなかったポスターはプランをたてた人の問題ではなくて、ポスターを貼ることを依頼する係の人へと責任転嫁がなされる。このためポスター係はうまくポスターを処分することが責任転嫁をされないために必要となる)

 SPDCAということを考えたのは臨床心理学から学んだことに大きな影響を受けている。人間の心の中はよくわかっていないというのが臨床心理学の大前提である。そして、問題を抱えたクライエントに対してとりあえず臨床心理士には仮の見立てというものが必要であるという。見立てには固執しないがその見立てに基づいてとりあえずやってみる。そうした模索が必要だというのである。もちろん臨床心理士もきちんと精神医学から心理学など多くの学習をする。それでもなおかつ模索が絶対に必要なのだという。
 児童館における活動でも様々なグループワーク・ケースワーク・コミュニティーワーク・アクションプランなどのソーシャルワークの学習や地域作りの手法の学習・子どもの発達心理学・安全管理・遊びやゲームの指導方法・児童福祉などなど学ばなければならないことが多い。しかしながら学ぶことを前提としても実際の運営は手探りそのものでなければならない。大上段に計画をたて、実施し、反省し、また1年後の考えるというパターンではなくて、日々スモールステッププランを練って見立てをし、実行し、反省して、反省を元に再アクションを起こしていくことが大切である。
 SPDCAはその意味で行事活動も含めて児童館・児童クラブでの活動のやり方の手法になるのではないかと思い提案をしたみた。

 補助金等との関係とSPDCA
 補助金を活用して事業を行う場合は最初にかなりきちんとした計画書の提出が必要である。また計画書どおりの執行が求められる。補助金活用の事業とSPDCAの関係を考えてみよう。
 まず必要なことは行事そのものが補助金があればとてもうまくいくがなくても何とかやれるというパターンにしておくことが必要である。前例の地域組織活動のトン汁サービスなどがそれである。トン汁はなくても秋祭りができるが、あったらなお良いということである。けれど地域組織活動の報告には秋祭りの人数がカウントされることになる。
 次に児童福祉週間60周年記念事業「全国児童館フェスタ2006」のような委託事業の場合について考えてみよう。完全委託のような事業では私はできるだけ新しい可能性を探るようにしている。カプラ研修かがそれである。カプラ研修会を実施するためには東京から講師を呼ぶ必要がある。その講師の謝金と交通費をこの事業費では使っている。また子どもたちの元気な写真展を開くことにしている。この写真のプリント代の費用も事業費からのものである。費用面での工面の問題であるから、実際の運営においてはやはりSPDCAで実施していくものである。
 
 ミニ行事の運営と大きな行事の運営
 やりたいなあと思う行事はミニ行事から取り組むことが良い。例えば餅つき会をやりたい場合で考えてみよう。最初から地域を巻き込んだ200人の餅つき会を計画するのは大変だ。まず放課後児童健全育成事業の児童クラブ50人のおやつとしてやってみよう。一臼つくだけでこのミニ行事は成功させることができる。スモールプランの実行である。次に二臼とトン汁をプラスすれば児童クラブの昼食会の餅つきとなる。こうした活動の中で餅つきにおける問題点をチェックし、餅つきボランティアなども確保できるようになる。社会福祉協議会などの補助金がつくことになり、地域全体の行事に格上げとなる。町内会や長生会・民生児童委員協議会・公民館などと共催で行事を行うことになる。といった展開を考えることができる。一臼から始まったものが六臼の餅をつく大きな行事へと発展したことになる。児童館や児童クラブの活動ではいつもいろいろな種を持っていることが必要である。


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