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児童館・児童クラブの活動を大きく分けるとケースワーク・グループワーク・コミュニティーワークに分けることができる。それぞれ個別援助活動・集団援助活動・地域社会援助活動ということになる。これらは互いに有機的な関連を持ちながら存在している。たとえば学校へ行かされていない子どもがいたとする。この子どものケースワークは児童館の運営委員に主任児童委員がなっているので、そこから連絡があり、児童館の仲間遊びの中に入ることでその居場所を見つけ、保護者の説得を通して、学校との連携の中で学校へ行くようになるといったような関係性にある。ケースワーク・グループワーク・コミュニティーワークは最初から関連性を意図的に考えて行う必要があるのである。

乳幼児のことばの発達の遅れがある子どもがいたとする。親子で遊びましょう(グループワーク)の中で保護者からの相談を受ける(ケースワーク)その相談を地域の保健所や専門機関との連携(コミュニティーワーク)の中で適切な専門機関での指導を受けながら、親子で遊びましょうで声かけをしていくというような展開を意図的に考えなければ児童館の乳幼児の集いはたんに遊ばせ屋になってしまうのである。

 

さて児童館・児童クラブの活動の3要素の中で、グループワークは児童館活動の中心的な軸になっている。このグループワークのあり方について考えてみたい。

グループワークというと子どもの遊び集団を援助したらグループワークだと思われがちであるが、それだけではグループワークとはいえないのである。

 

小関康之著 児童グループワーク(ミネルヴァ書房発行)では以下のように述べられている。

格的協同志向型の小集団は、明らかに人格的発達志向型集団として位置づけることができる。ドイッチ(M.Deuysch)は、このような小集団の特徴を次のようにあげている。

@   集団の仕事をしようという意欲が高く、メンバーが互いに責任を感じあうことが多い。

A   成員間の分掌と協力の度が大きい。

B   成員間のコミュニケーションがより効果的で、より多くの意見が出され、理解の度も受容の度も高い。

C   友情があつく、他人に対する尊敬も高い。

一般にグループワークは、自然発生的集団や団体や施設が意図的に作った人為的集団を対象とするが、グループワークが、それぞれの団体や施設、あるいはサークル活動において努力しなければならないことは、対象となる集団が、人為的集団であれ自然発生的集団であれ、グループ活動の過程にあって、小集団=人格的協同集団的性格をもった集団へと変容することである。

 たとえば自然発生的集団である子どもたちの遊び集団に対して、グループワーク的アプローチを試みても、子どもの自然発生的集団=遊び集団のもつ排他的性格を、人格的協同集団としての性格に変えながら、より多くの子どもがグループワークの対象となるように、試みがなされなければ、グループワークは、自然発生的集団の内的凝集性を高めるだけの効果しかなくなり、結果的には、排他性を高めること以外に効果を持たないことになる。すなわちグループワークは、自然発生的集団をも対象として扱うが、それはあくまでも自然発生的集団を、小集団の核として活用することであり、自然発生的集団を民主的・人格的な開かれて小集団へと変容発展させていく過程を整える援助をすることに、大きな役割を見いだすべきでる。

 またグループワークが対象とする人格的集団についても、同様なことが言えるわけで、集団成員がプログラム活動=グループ経験を通じて、対面的相互交流をはかりながら、自然発生的集団の性格にみなれる「われわれ感情」を育てていく過程が、グループワークの仕事になるのである。

 子どもを対象とするグループワークが、小集団をすすめていく際に留意したいことは、子どもがグループワークに参加する心理的動機には「他の子どもと一緒になにかをしたい」という欲求があることを理解することである。すなわち、子どもの他の子どもとの相互活動への方向づけは、他者志向性(他の子どもに対する関心)と課題志向性(なにかをしたいという欲求)との相互の機能的関連によって成立っているのである。

 青井和夫の小集団の定義は次に示すような条件をみたすものであるが,彼の示した小集団の定義は、グループワークが念頭のおいている人格志向型の集団の性格を端的に示すものとして評価することができよう。彼は小集団の「小」(small)は。人数のことではなく、「集団の性格」をあらわすこと言葉としてとらえている。たとえ20名をこえても、小集団としての三つの条件をみたせば、それは「小集団」であり、また、たとえ数名の集団でも、小集団としての性格をになわなければ「小集団」ではないとしている。すなわち小集団を示す三つの条件とは

@   対面的(face to face)な関係にあること

A   成員の間に相互作用(interraction)が行われていること

B   成員間の間に個人的な(as a individual person)印象や知覚を有すること

小集団とグループワークの関連について言えることは、グループワークの活動過程そのものが「小集団」の概念をつくりあげていく過程であり、グループワークが目指す集団過程が小集団の形成過程ということができるのである。

 

以上の児童グループワークの概念をもとに私は児童館・児童クラブのおける遊びをグループワークととらえ、意図的な小集団の編成を目指して以下のように活動している。

 

第一に児童館・児童クラブにおける遊び活動=グループワーク活動は排他的であってはならないということである。同時に小学校の低学年児童の遊びグループの人数が3人から5人であることを考え、(対面的な関係や成員間の相互関係や個人的な印象・知覚を有するための人数)30人から40人の集団の中に3人から5人の小集団を5グループから10グループ作る。3人から5人の小集団(スリーパワー・ファイブパワーと通常呼んでいる)の間で成員間の対面的関係・相互関係・個人関係を実現し、その中に民主的・人格的に開かれた人間関係を実現していく。当然その遊びの小集団の中に途中で仲間に入りたい人も仲間に入れていくことになる。同時に小集団が集団の中に多数存在することにより、子どもの相互活動の方向付けが小集団同士の他者志向性(他の子どもに対する関心)と課題志向性(なにかをしたいという欲求)との相互の機能的関連によって成立っていくようなる。つまりたんにワーカーが1小集団に働きかけるのではなくて、いくつかの小集団に働きかけることにより、子どもたちの活動意欲がわくというものである。

 

 みんなで奴さんの折紙を使って大きなユニット折紙を作ることを考えてみよう。40人の子どもを4人から8人くらいの小集団7グループを作る。奴さんの基礎ユニットの作り方を教えてあとに小集団作りをする。この小集団では仲間に寄せないといってはいけない(排他性の排除)命令でやってはいけない(民主的な関係)お互いに伝え合う(個人的な関係と相互関係を作る)などを確認し、奴さんユニット作りに入る。同時に他の小集団の活動を自由に見学してアイディアをいただいても良いことにする(グループ間の排他性の排除とアイディアの共有)こうして全体として1時間ほどの活動をすると子どもたちは協力して自主的に想像力豊かな作品を作り上げる。こうした過程がグループワークの過程であると私は考える。

 児童館・児童クラブでは途中から参加する子どもも多くいる。こうした場合に途中参加者はいくつかの小集団の中に自由に仲間に入れてもらえることになる。また途中で帰ってします子どもがいても他の子どもたちだけでも作業が継続できる。児童館・児童クラブで工作をしても一人一人を主体とした工作だと工作が中断してしまい、完成できないまま中途半端になってしまうことも多いものである。小集団での活動はこうした点有利である。

 

 缶けり・フットベース・ドッジボールでも小集団をうまく活用し、グループワーク活動へともっていくことができる。

 50人子どもを5人の小集団(38人でも良い)10グループにわけ、鬼を一人とする。小集団の中の一人がケントされたら他の4人の子どももケントされたことになり出てくる。3グループがケントされると15人が捕まったことになる。捕まって子どもは子ども同士でワイワイガヤガヤ相互におしゃべりをしたり、手遊びをしたりして遊んでいる。ケントされていない子どもは15人を救うために頑張るし、捕まりたくない子どもは見えないところで別の遊びを同時並行で行いながら缶けりをしている。こうしたグループ活動を行えば缶けり遊びもグループワークとなるのである。全員捕まったら次の鬼は最初にケントされた人でその人の所属する小集団はその鬼を除いて逃げる。

 

 児童館・児童クラブあるいは小学校の子どもの数がいくつが適正であるかは議論の分かれるところである。学校で30人学級等の主張もなされるが30人学級というのは15人・16人の2クラスができるということである。5人くらいの小集団が(この小集団は常に人数も成員も変容可能なものと私は考えているが)7つとか8つあると活動が活発化することを考えると、30人学級の実現よりは31人に二人の教諭を配当し、児童相互の関係をより豊かなものにすることが大切だあると私は考えています。

同様に児童館・児童クラブでもやはり建物のキャパシティーにもよりますが、出席率を考えると30人くらいの参加者数が欲しいと思います。人数が40人以上になればやはり2人の指導者がまとめて見るというのが良いと思います。もちろん一人でもやれます。

 

 グループワークの小集団を使うことにより子どもたちの活動をよりよいものにできると共に実はケースワークに該当する子どももグループワークのワーカーが適切な援助を与えることにより、グループワークの小集団の中でケースワークをしていくことができるものです。ケースワークについてはまた別にアップデートしますが、不登校・うまく遊べない・粗暴等々のケースワークを必要な児童を仲間に入れられないようなグループ活動はたんなるグループ活動であり、児童館や児童クラブにおけるグループワーク活動ではないことを理解し、児童館・児童クラブの活動が真のグループワークの活動になるようにと思います。