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              (2021年1月23日)

折り紙





 
 
  
「折り紙のみち」について

児童健全育成指導士 田中 純一

 1 折り紙のみち
 私は子どもたちと一緒に「動く簡単面白い」創作折り紙を10年ほどやっています。折り紙活動を子どもたちと一緒にやっていると、折り紙はたんに技術だけの問題ではなくて、深いものがあると感じています。剣術が剣道となり、人としての道を指し示すものになったように、折り紙も折り紙道というような「折り紙のみち」を提案したいと思うようになりました。
 折り紙のみちをひらがなで書いたのは「道」との意味と「満智(みち)」のような考え方をしたいからと思ったからです。二つの意味を込めて「おりがみち」=origamitiのように出来たらいいなあと思っています。

  2 物としての折り紙を考える
 人間は物によって活かされていると共に、物を創ることによって活きているともいえると思います。物である折り紙も同様であると思います。折り紙も大自然の光合成により樹木が育ち、多くの器具や機械・人の働きによって、眼の前に折り紙として存在しています。また私たちは物としての折り紙を使うことで自己表現や自己表出をすることが出来ます。物としての折り紙に対しても大自然を含めて畏敬の念を持ち、感謝の心を持つことが必要であると思います。私は物としての折り紙に対しても互いの人に対しても「礼で始まり、礼で終わる」ようにしたいと思います。 

 3 折り紙の特性を考える
 人にはそれぞれ個性があるように折り紙にも折り紙の個性があります
@  正方形の紙であること
A  大きさはポピュラーなものが1515pで、大きいものは30cm×30cm、千羽鶴は7.57.5pである。
B  色はいろいろなものがあり、千代紙のようにものもある。また両面に彩色された両面折り紙もある。
C  市販の折り紙は洋紙であるので紙目がある。紙目とは繊維の方向であり、折ったときに軽く折れる方向が紙目(流れ目ともいう)である。これに対して和紙は繊維が散らばっているので丈夫であるが値段が高い。水に濡れても大丈夫なポリエステルフィルムのものもある。

4 折り紙のみちのあり方について
@折り目正しく
 私が折り紙活動を「みち」と考えたいと思ったのは、ある人が「折り目正しく折り紙を折れることが子ども達の折り目正しい生活につながる」と話していたのを聴いたからです。(ネット検索しても出てきませんので誰の言葉かはわからないのですが)折り紙の活動を通して折り目正しい生活が出来るようになることは素晴らしい事だと思います。折り目正しい折り方を楽しく習得できるようにと私は創作折り紙をやっています。 A動く簡単面白い
 同時に子ども達が楽しく折り目をつけて折り紙を折るようになるために「動く・簡単・面白い」ことが必要となります。最初に折り目正しく折ると述べましたが、二重三重に重ねて折るようになると、なかなか上手く折れなくなってきます。でも「動く・簡単・面白い」折り紙は多少うまく折れなくても、動き方が個性的で自己表現が出来るようになります。折り紙のみちは多様で多彩であることが大切であると思います。
?変容していくことは表現すること
 私は山折り・谷折り・長四角折り・三角折り・座布団折り・中割り折り・かぶせ折り・風船の基本折り・鶴の基本折り・花弁折り・メリーゴーランド折り・ひっくり返し折り等々折り方の基本は教えています。しかし作っていくプロセスで子ども達がいろいろに変容させていくことをとても大切にしています。意図しないで折り方が変容していくことも、とても貴重なことだと思います。なぜならば上手く折れることが目標ではなくて、上手くそれぞれの人が自己表現出来ることが大切と思うからです。
C仲間作りになること

 ガードナーは多重知能理論を提案しています。論理数学的知能・言語的知能・音楽的知能・身体運動的知能・空間把握的知能・対人的知能・個人内知能・博物的知能の八つの知能が独立して有機的関連を持ちながら存在しているというのです。折り紙活動を通して、意図的にこれらの知能が発達するようにと考えています。折り紙を半分にしてまた半分にしたら四角形がいくつできるか?話をしっかり聴いてしっかり伝えよう。作った折り紙でわらべ歌を唄おう。作る過程で折り紙を右手から左手に動かしたり、作りながらジャンプをしたりしよう。友達にも教えてあげよう。自分で面白いものを考えてみようなどといろいろな活動を通していくつかの知能を活発化することが良いと思っています。とくに仲間作りを通して、楽しく活動できることはとても大切なことだと思います。

D働くこと
 折り紙のみちで大切なことは学びと遊びだけではなくて働きを取り入れることであると思っています。働くは「傍(はた)を楽にする」との意味で「人の為に動く」と日本人が創った国字です。折り紙活動をするときはみんなできれいにする。自分のためだけではなくて、友達にも教えてあげる。家族や地域の人たちのために折り紙を完成し、プレゼントする。終わったらきれいに後片付けをする。このような働くことをきちんと意図的に取り入れることが大切と私は思っています。働くことが、物としての折り紙に対して畏敬の念と感謝の気持ちを表すことになるのではないかと思っています。

 

 5 折り紙活動の実際 WHについて
 折り紙活動をやる前に身体を動かすことを入れておくと子ども達は安定するものです。コロナ過では30秒くらい全身の筋肉を硬直させその後に弛緩させるなどの筋弛緩法を使用するのも良いと思います。狭い場所でもどんな姿勢でも出来ます。全身の筋肉を緊張させたり緩めたりすると、血液循環が良くなり、心が安定します。是非に試してみてください。これは私たちの日常生活でも使えます。心が動揺した時に深呼吸をするよりも筋弛緩法の方が私には効果がありました。
 折り紙活動をやる場合のWHについて具体的な手法として考えてみたいと思います。WHとはWhoWhomWhenWhereWhatWhy、の6WHowHow muchHow manyの3Hである。(一般的な5WHWhomHow muchHow manyがないものです)
 Who
は誰が折り紙活動を教えるかの問題です。一人でやる場合もあれば、複数で助け合って教える場合もあります。一人でやる場合でも早くマスターした人を助手として上手く活用することが大切だと思います。折り紙をやる時私は分習法が多いのですが、年齢差個人差が大きいので習得のスピードが違います。習得した人は頭の中でリピートして復習をする。次に出来ていない仲間に教えるようにすれば、対人的知能が高まります。また教えることは教える人の能力を高め、ヴィゴツキーのいう最近接領域が活性化します。最近接領域とは今は出来ないけれど練習すれば明日には出来るようになる領域のことです。私はこれを可能性年齢と言っています。小学校3年生くらいの小学生は羽ばたく鶴を折ることが出来ます。他人に教えるのは相手の気持ちや能力を把握して教え方の工夫が必要です。小学校5年生くらいの能力が必要となります。小学校3年生にとって、他人に教える能力は最近接領域(可能性年齢)となります。
 Whomについてですが、対象を誰にするかの問題です。小学生相手なのか、乳児と親子相手なのか。園児相手なのか、大人相手なのかで違ったものになります。もちろん対象の人数や年齢層でも違います。幅広い対象であることを考えるとユニバーサルデザイン的なものが良いと思っています。私の創作折り紙が簡単なものに限定している所以です。押してあげると立つという倒立折り紙を私はよくやるのですが、保育園の年長組なら作れます。でも横につなげたり、縦にしたりするとけっこう工夫することが出来ます。学生でも大人でも十分に楽しむことが出来ます。
 Whenは時間帯と所要時間が問題となります。一斉に教えることが出来る場合だけではないものです。次々と教える場合は教えられた人が次の人に教えるようにする手法は有用です。私の折り紙は20分程度で出来るものが多いのですが、10分程度しかないならば、予め折れ線だけでも折ってつけておくのも一つの手法です。クリスマスツリー作りなどは私が折れ線をつけておいてやります。親子での集いなどでは余分に完成品を用意しておいて、プレゼントして遊ばせることもあります。小学生でも30人相手をするならば、余分に10ヶは用意しておいて、作らなかった子どもも仲間に入れるようにします。とっぴゅーんS飛行機などは作らなかった子どもが一番喜んだりします。
 Whereについてですが、どこでやるかは大きな問題です。体育遊戯室のような広い場所でやるならば、思い切って身体を動かすアクション折り紙でやるのが良いと思っています。アクション折り紙とは分習法で折り紙をやるのですが、早い子どもと遅い子どもの調整を図るために、半分に折ったら胸に載せてランニング、また半分に折ったら床に置いて飛び越しジャンプなどをやることで身体運動能力を高めながら、折り紙活動をするというものです。狭い場所で折り紙をするならば、羽ばたく鶴とかプテラノドンなどが良いと思います。避難所生活などでは防災ボックスなども有用です。家での親子遊び場合はおやつのゴミ入れやおもてなし箸袋などを作るのも楽しいものです。ケンカをしてしまって別室でクールダウンさせるときなども完成した折り紙で遊べば目そらし方略となり安定することもあります。
 Whatをやるかは相手のレディネスを考えてみることが必要と思います。私はともやん折り紙24選としていくつかの創作折り紙をホームページで紹介しています。是非に参考にしていただいて、ご利用いただければと思います。2歳半から3歳4歳までは倒立折り紙・ロケット・フラワーワーク・羽ばたく鶴・若菜ちゃんのクッキー頂戴などの眼の前で動くものを作ってあげれば喜ばれます。保育園の年中児や年長児になると、とっぴゅーんS飛行機・倒立折り紙・パタパタ鳥などを自分で作ることが出来るようになります。小学生では男の子は圧倒的に動くものが好きなので紙鉄砲や十字手裏剣・紙飛行機のようです。女の子にはなおみバッジ・ハートの指輪などが喜ばれています。何をやるかは子ども達の興味に合わせていくことが必要と思います。その子どもの興味に該当するものがないなら、創作していきたいと思っています。
 Whyは折り紙を何のためにやるかとの目的の問題だと私は思っています。基本的には折り紙のみちを通して「折り目正しい生活が送れるように」と考えています。同時にガードナーの論理数学的知能・言語的知能・音楽的知能・身体運動的知能・空間把握的知能・対人的知能・個人内知能・博物的知能を伸ばすことにあると思います。折り紙の折り方の技術の向上だけが目的ではないと考えています。折り紙活動をしながら、身体を動かし、出来あがった風船などで、ビーチボールをして遊ぶなどです。こうすれば空間把握的知能も高まります。歌を唄いながら折り紙風船で遊べば音楽的知能と言語的知能の活性化になります。グループワーク的手法を活用して友達同士で教えあえば対人的知能に役立ちます。どのように作ったらよいかを推論したら論理数学的知能と個人内知能に影響を与えるでしょう。虫や花や鳥などとアナロジーさせたら博物的知能にもなると思います。ガードナーの八つの知能を上手く向上させることが折り紙のみちの目的であると私は思います。そのためには一番の基本は物に対する感謝の気持ちと自分自身がやろうとする意欲が出てくることだと思います。最初から活動に参加してこない子どもがいることを前提にして、途中からでも参加できるようにしておくことが大切と私は思っています。

 Howはどのような手法を使ってやるかです。すでに折り紙を含めて物と人への感謝の気持ちと自己表現の大切さ・折り目正しく折ることの提案・アクション折り紙のように身体を動かしながら活動すること・「動く簡単面白い」ものの提供・準備や後片付けの働くことを大切することなどを記述してきます。これらを前提にしつつ、折り紙のみちでの手法を補記したいと思います。 
 全員で必ず一緒にやるとの固定観念を捨てることが必要と思います。人間は「やれ」と言われるとやりたくなくなるものです。興味があるように働きかけますが、最初からみんなが参加してくれることの方が正常でないことが多いものです。まずはやりたい人からやり、次第に楽しさが広がっていくのが良いと考えています。途中からでも参加でき、最後の遊ぶ段になってから参加してきても何ら問題はないと私は考えています。 
 次に折り紙のみちでは活動がグループワークでもあり、ケースワークでもあり、コミュニティワークでもあるように設定しておくことだと思います。人間は一人では孤独に生きていけない動物のようだと私は思います。ケースワークの基本も周囲の人と仲良く暮らすことが出来るようにとの働きかけであると思います。たとえ1対1で折り紙を教えたとしても、「習ったものを他の人へ伝えてね」とのメッセージを入れればグループワークになります。作ったおもてなし箸袋などを特別養護老人ホーム慰問に使えばコミュニティワークとなります。
 教え方伝え方もいろいろです。目の前で作って見せながら一緒に作り方を伝える方法もあります。見せるために空中で折る手法も会得することも大切です。折図を作成し、折図をみながらやる方法もあります。折図と完成品を渡して完成品を分解してみる方法もあります。パソコンから大画面に映し出してやることもあります。動画撮影をしてやることも出来ます。いろいろな手法を駆使することが大切と私は思っています。
 How muchから考えてみることも必要です。少ない数の場合は比較的に高くつきます。でも数が少ないのでそれほど苦になることはありません。しかし例えば3枚組コマを一人3ヶ、100人に作ると考えると百円ショップなどの安い折り紙でも550円位かかることになります。コストのことを考えておくことは大事です。私も学生の授業では60枚くらいの両面折り紙を1回2セット10回くらいはやりますので、2200円くらいになります。How muchを考えておくことは必要です。また必要数と販売単位は一緒でないことを知っておくことも大切です。30人分の材料を用意するとします。1人3枚ずつだから90枚必要とはならないのです。ダイソーの両面折折り紙は60枚のことが多いので2セット120枚が必要となるのです。折り紙でなくてもチラシなどを正方形に裁断して折り紙として使うこともあります。絵柄が多彩なので、かえって奇麗なこともあるものです。
 How manyを考えてみましょう。人数が違えば教え方の手法も費用も場所も目的も大きく違ってきます。私は支援員研修会で600人の人たちにフラワーワークの折り紙を教えたことがあります。まずは前日までに完成品を予備も含めて700ヶ折りました。のべ20時間くらいかかりました。折図を印刷しておいてもらい、後ろからも見えるように大きな正方形の紙で折り方を説明しました。難しかったですね。
 放課後児童クラブ合同の体育館で、200人以上の子どもたちと紙飛行機を作ったこともあります。仲間の支援員に予め折り方を伝えておいてサポートしてもらいました。また倒立折り紙は作っておいて、遊ぶだけにしました。折図を渡しておいて後で作ってもらえるようにしました。
 保育園で35人の年長さんと20人くらいのお母さんと保育士さんたちに紙飛行機を作ったこともあります。当然のことで折れない園児もいるので、予め人数分くらいは用意しておいて実施しました。
 土曜日などで放課後児童クラブに来る子どもが5人程度で少ないこともあります。そんな時は新作の創作折り紙を持って教えに行きます。少数なので支援員と一緒に楽に教えることが出来ます。余裕があるので折り方や折り順・もっと工夫した方が良いなどのアイディアをもらってきます。
 対象の人数がどのくらいであるかはとても大事なことです。

6 終わりに
 私は日本の伝承文化でもある折り紙を通して、大人も子どもも高齢者も楽しく活動することが出来て、仲間の和と輪が広がるようにと思っています。

 たんに昔は良かったと今を厭い、現状の不平不満を壊して未来があるのではなく、昔がダメなので今が上手くいかないと現状を憂い、未来を悲観するのでもない生き方をしたいと思う。今があるのは昔があるからで、現在の活動が過去に輝きを与える。今があるから明日があるし、逆に未来は現在の中に散りばめられている。伝統や伝承としての折り紙が日本の中にあるので、今楽しく折り紙活動が出来る。今充実した折り紙をやることが日本の伝統を輝かせることになる。現在、創発的な折り紙活動をすることで未来があり、未来があるとの希望から現在が存在しているとも考えられる。折り紙のみち(折り紙の道・満智≒origamiti)が創れたら良いなあと思います。多くの仲間たちや子どもたちを師匠として頑張りたいと思います。

   
  ■十字手裏剣                  ■防災ボックス2

   
 ■ハートの指輪                  ■三角しおり

   
 ■フラワーワーク               ■ドリーム飛行機

 

 ■2014年版折り紙指導の方法

tomoyanの遊びを考えるとのホームページに掲載されています。http://www.na.rim.or.jp/~tomoyan/(ともやんおりがみと検索ください)