医療法人社団晃勲会
 

 睡眠時無呼吸症候群とは


 2003年の山陽新幹線の事故は運転士がこの病気による居眠り運転をおこしたことで一般にも知られるようになった病気です。自動車のみならず居眠りによる操作ミスで起こった事故の原因になることもあります。
 単に睡眠の障害だけでなく、高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常症などの様々な生活習慣病にも悪影響を及ぼします。
 なお、睡眠時無呼吸症候群には
  1. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群
  2. 中枢型睡眠時無呼吸症候群
  3. チェーン・ストークス呼吸症候群
  4. 睡眠時低換気症候群
  5. 上気道抵抗症候群
の五種類がありますが、1.の閉塞型睡眠時無呼吸症候群が最も多く、CPAPという呼吸を楽にする装置で改善するタイプなのでここでは睡眠時無呼吸症候群とはこの型のものを指します。
 このタイプの睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に空気の通り道を完全に、または部分的に塞がったり戻ったりを繰り返します。そのため塞がっている時は血中の酸素濃度が減少し、更には炭酸ガス濃度が増加します。このため下記のような様々な障害を引き起こします。
 

 生活習慣病との関係


 睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病とは関連があります。無呼吸による酸素欠乏によって心臓や自律神経、ストレスなどが生じて生活習慣病に悪影響を及ぼすためです。ある研究では睡眠時無呼吸症候群があると健康な方と比べて狭心症・心筋梗塞などの心臓病は3倍、高血圧は2倍、脳卒中は4倍、糖尿病は1.5倍かかりやすいと言われています。

 高血圧


 睡眠時無呼吸症候群の4〜7割が合併します。血管にストレスがかかるためです。

 脂質異常症(以前は高脂血症と言われていました)


 内蔵肥満を含めた肥満の患者さんが多く、脂質異常症を起こしやすくなります。

 糖尿病


 いびきと糖尿病と関連があるという報告があります。それによると常にいびきをかく方は時々かく方より2倍、まったくかかない方より5倍も糖尿病になりやすいと言われています。これは脂質異常症と同様肥満の人が多いこともありますが、睡眠時無呼吸症候群そのものが血糖を下げるホルモンのインスリンの作用を効きにくくする(インスリン抵抗性)を起こすためと言われています。

 脳卒中


 睡眠中に起こる脳の血流の変化に異常を来すためです。健康な方でも睡眠の深さなどによって脳の血流が変化します。これが睡眠時無呼吸症候群ではその変化が大きくなります。また

 肺高血圧


 酸素不足からくる肺の血管の障害によっておこると思われます。心臓から肺への血流が通りにくくなり、心臓に負担がかかって様々な病気を起こします。

 その他


 就寝中に苦しくて目が覚めて睡眠不足になることと、酸素不足によることにより、昼間の眠気、記憶力の低下などを引き起こします。睡眠時無呼吸症候群の治療とともに男性の性機能障害が改善することもあります。
 

 閉塞型の原因

 首やあごの形状


 肥満のため首の周囲の脂肪によって空気の通り道が狭くなります。また元々日本人は顎が小さい人が多く、肥満のない人もなりやすいと言われています。

 扁桃肥大


 成人では稀ですが、肥大した扁桃が空気の通り道を狭くするために起こります。

 舌の落ち込み


 過度のアルコール摂取によって起こったり、仰向けに寝ると起こったりします。
 

 検査

 ESS眠気テスト


 問診票で簡単な眠気の程度のチェックをします。

 簡易型睡眠ポリグラフィー


 当院で行っている検査です。一晩この装置を体に取り付けて血中の酸素濃度の動きや呼吸の状態を評価して、睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度の評価を行います。これ以上の精密検査が必要な場合は一泊入院で行うより詳細な検査を行いますので、対応できる病院をご紹介します。
 

 閉塞型の治療

 生活習慣改善


 肥満が原因になることは既に述べました。生活習慣の改善により肥満を解消することによって改善できます。

 CPAP(径鼻的持続陽圧呼吸療法)


 睡眠時無呼吸症候群の自覚症状があって、簡易モニターでAHIが40以上の場合に保健適応になります。空気の通り道で息を吸う時にふさがるのを防ぐため、マスクから空気を送り込む装置を使用します。費用は保険診療で3割負担で1月に約5000円で、月1回の診察を受ける必要があります。

 マウスピース


 CPAPが適応でない軽症の方で、この器具を使用して空気の通り道を変える治療で済む場合に使われます。製作できる専門の医療機関に受診する必要があります。

 外科手術


 耳鼻咽喉科での手術による改善が期待される場合です。