医療法人社団晃勲会

 よくある質問や間違い

 ここでは日常よく患者様からお聞きする疑問やよくある間違いを述べていきます。ただしあくまで一般論としてですので、何かあったらすぐに相談に乗ってくれるかかりつけ医を決めておきましょう。

 「高血圧やコレステロールが今までより高くてもよくなるように変わったのですか?」


 変わっていません。人間ドック学会が発表した基準値と称するものが通常用いられている値よりも高くなったため、あたかも高血圧や脂質異常症の治療がやり過ぎのような印象を与え、また一部の報道機関もそのような記事を書いています。しかし発表した人間ドック学会自身も「今すぐ学会判定基準を変えるものでない」と声明を出しています。 人間ドック学会 のホームページにあるTOPICSの「重要」と書かれている2014/4/8の項目の「4月4日に厚生労働省、報道機関へ公表した内容について」をご覧下さい。
 そもそもこの調査方法には様々な問題点があります。
  • 対象者をアメリカのある基準に従って選定していますが、そのうち肥満指数と血圧130/85以上という項目を除いています。この時点で本来のこの基準から逸脱しています。またコレステロールの基準はそもそも含まれていません。「生活習慣病の薬物を常用していない」という項目も薬物療法が必要または生活習慣の改善が必要な生活習慣病の患者さんでも薬物を常用していなければ選定されてしまいます。どんなに血圧やコレステロールが高くても「超健康人」としてデータを出せば高くなって当然です。
  • 「150万人のメガスタディ」と謳っていますが、対象は約1万人〜1万5千人です。確かにこれでも人数としては大規模ではあります。しかし問題は対象の人数ではなく調査手法なのです。150万人を対象とするのは確かに稀に見るビッグデータではありますが、数が多いから正しいといわんばかりです。
  • そもそもこの調査は生活習慣病の専門医不在の調査です。
  • 今回の発表は人間ドック学会自身が後にアピールしたように「中間報告」であり、今後検討して基準を考えるとのことですが、それであれば最終報告後に発表すべきです。
  • 高血圧や脂質異常症などの関連学会は長年の追跡調査を行った上で、どのくらいの値まで下げれば将来余病を起こさないですむか、を考えたものです。今回の人間ドック学会にはその点については全くなされていません。人間ドック学会の基準値で将来どうなるかは2年間しか行いません。これは通常我々が参考にする生活習慣病のガイドラインの元になっている調査期間と比べても非常に短く、これだけとってもエビデンスレベルが高いどころか低い調査なのです(例として久山町研究:1961年から継続中、大迫研究1986年から継続中、NIPPONN DATA80:1980年から継続中)。

 みなさんは報道に惑わされないように、かかりつけ医とよく相談して治療方針をたてましょう。

 「血圧の薬はのみ始めたら一生のまなければなりませんか?」


 いいえそうではありません。というよりその人の病状にもよるのですが(ここでは何か血圧を上げるような病気がある二次性の高血圧は除きます)。例えば肥満があって塩辛いものが好きな高血圧の方が、節制して減量し、塩分制限するとある程度は下がります。例えば高血圧の方が入院して塩分制限食を摂取されますと、徐々に血圧が下がります。極端な場合、何種類も飲んでいた薬が食事療法で1〜2種類に減っていく方もおられます。それで低血圧になるほど下がっても薬を飲む必要があるでしょうか?。そうではありませんね。血圧がよくなったらそれにあわせて薬の量や種類を調節します。もちろん中には薬がいらなくなる場合もあります。

 「薬はたくさんのめばのむほどよく効く」


 薬にはどれでも日本人にあった容量が決められています。その範囲で病状に応じてのむ量を決めるわけです。その量を超えると副作用などの危険性が高くなります。また、病気がよくならない場合、その薬そのものが現在の病状にあっていない可能性もあります。その場合は薬を増やすよりも他の薬に変えることもあります。決して自分で指定された量を変えてはいけません。もし何らかの理由でのむ量を変えようかとお考えの際は主治医に相談してください。

 「ある薬を飲んだら体調が悪くなった。副作用と判断してやめた」


 確かに副作用なのかもしれません。しかしやめてしまって病気が悪くなるかもしれません。その場合は他の薬にかえるか他の治療法を考えなければなりません。そもそも体調の悪いのは病状が変化しただけなのかもしれません。疑問に感じたらすぐに主治医に相談しましょう。

 「ある病院でいつもの薬を飲んでいた。それとは別の病気になって他の病院に行って薬をもらった。飲みあわせが悪くなると困るのでいつもの薬をやめた」


 この場合、受診する際には他の病院で飲んでいる薬がわかるようにしておきましょう。これは薬の名前・のみ方、かかっている病気もわかるようにして下さい。そして重ねてのんでよいかを医師に聞いてください。また最近は院外処方を実施する医療機関が増えています。これは処方した医師だけでなく薬剤師も処方に関与することで副作用や飲み合わせのダブルチェックをすることも目的となっています(当院でも平成24年3月から院外処方を実施しています)。

 「食事制限をするために食事を一日二回にした」


 これは意味がありません。二回でも三回でも一日のカロリーが同じなら、二回食の場合は一回にとるカロリーが多くなります。そうすると食事に対する体の負担もその分大きくなってしまいます。もちろん適正な量のカロリーであることが前提です。

 「糖尿病は糖分を減らせばよい」


 糖尿病という病名からどうしてもそのようなイメージがあります。もちろん糖分も制限しなければなりませんが、それだけではなく、適切な一日当たりのカロリーをバランスよくとることが重要なのです。ちなみに糖尿病という病名は、その患者さんの尿にアリがたかるのをみたヒのポクラテスが名付けたそうです。