学校ツーパワー・スリーパワーで遊ぼう詳細トップ    ホームトップ

有明児童センター  児童厚生員

児童健全育成指導士 田中 純一

 

1、少子化第2期の子どもの現状

 21世紀に入ってからの日本の子どもの現状は少子化第2期の時代と私は考えている。少子化第2期とは仮に第1期を一人っ子二人っ子の時代とするならば、第2期は親自身が一人っ子二人っ子で、その子どもも一人っ子二人っ子の時代と言えよう。

 もちろん子どもの数は各家庭の考えによって違うから、2003年でも8人姉妹兄弟もいる。(私の非常勤講師をする専門学校でも51人中に8人兄弟姉妹がいる人が1人おり、一人っ子が一人だった。ちなみに4人兄弟姉妹が1人・残りの48人は二人か3人兄弟姉妹であった)しかしながら全体の傾向として21世紀の日本は一人っ子二人っ子が親となり、その子どもも一人っ子二人っ子なので結果として親族が集まっても子ども二人にお母さんとお父さんと母方祖父母に父方祖父母といった子どもの数に対し大人の数が異常に多いという事態を生んでいる。私も5年前に知人の葬式に出席した。亡くなったのは80歳位の方だが、ご長男には子どもがいなく、ご長男のお嫁さんのご兄弟ご姉妹にもまだお子様がいないので、お孫さんのいないお葬式になってしまった。そんな時代が今の時代を象徴しているのではなかろうか。

 こうした少子化第2期の時代において、子ども同士の切磋琢磨の減少と社会不安の増加は子どもが群れて遊ぶ体験を少なくしている。群れ遊びの経験の少なさがすぐに切れてしまう子ども・仲良く遊べない子ども・多動傾向の子ども・自閉傾向等の子どもの増加を生んでいる。しかし、うまく遊べない子どもが群れて遊ぶニーズがないかというとそうではないことが子どもを観察しているとよくわかる。

私は子どもの理解の第一歩は子どもの目線のさらにその下から子どもが何をしたいと思っているかを観察することだと思っている。子どもの目線の下からの大発見をとの提案をしたら、理解するは英語でunderstand(下側に立つ)との提案を掲示板でいただいた。そこで子ども理解をunderstandと以下いうことにする。

多動で粗暴でよく問題行動を起こす小学校2年生男子のA君をunderstandしていた時のことである。A君は興味があるものを見つけようと盛んに動き回る。ちょっと他の人が縄跳びをしていると黙ってその中に入ろうとする。縄にひっかかる。縄跳びをしていた子どもたちに非難をされる。普通はここでキックやパンチが出るのだが、私が観察されているので我慢をする。次にのぼり綱のところへ行くが他の人がやっているのでできない。無理にとろうとするが、嫌がられる。トラブルそうになるが、観察されているのでまた別の場所へ行く。ボールを見つけ、壁に向かってシュート練習を始める。「ちょっとうまいじゃん」との実習生の声かけに満足そうにシュート練習を15分以上続け、汗だくになる。満足そうな顔になる。

A君の多動は自分がやりたいことを見つけるための多動であり、粗暴はその過程でのトラブルであった。A君のニーズを満たすものを見つけてあげれば、集中力もあり、みんなと仲良く楽しく遊ぶことは可能である。

不登校で小学校5年生のB君はスポーツが得意でないのだけれど「僕はリフテングを30回できる」などと児童館に来て自慢話をする。しかし実際にやらせてみると2〜3回しかできない。学校ではうそつきと言われて学校に行きたがらない。B君の本当のところはみんなと仲良く楽しく遊びたいのだが、そのためにうそをつく。うそをつくから遊び相手がいない。こうした悪循環に陥っていた。B君はこのままいけば引きこもりになる可能性もあった。児童館で年下の子どもたちと一緒に遊ぶ経験から自信を取り戻し、虚勢を張らなくても大丈夫ということを学習した。不登校も直り、元気に高校生活を送っている。

 以上のunderstandの経験から遊べない子どもや粗暴な子どもも本当は遊びたいニーズが強くあることを私はunderstandした。ある意味では遊べない子ども・粗暴な子どもはみんなと仲良く遊びたいというニーズが強すぎるために友達関係がうまくいかないと考えられるようになった。負けたくない・うまくやりたい・認められたい・自分中心でありたいという欲求が強すぎるのである。大人だけの関わりの中で、勝たせてもらえる・ほめてもらえる・認めてもらえる・自分を中心にしてもらえる経験をしてきた子ども(王子様・王女様であった子ども)が外に出て他の子どもから王子様王女様扱いされないで挫折するのはある意味では当然である。

こうした少子化第2期の21世紀の日本において子どもたちを健全に育てるための手法を考えることが必要となった。ツーパワー・スリーパワーの手法はその一つである。

 

2、ツーパワー・スリーパワーで遊ぼう
          
   ツーパワーでオニムをやっています。                          ツーパワーでバックギャモンをしています

 

@ツーパワー・スリーパワー遊びの手法

 ツーパワー・スリーパワー遊びの手法は次のようなものである。たとえばトランプで七並べをするとする。■ツーパワーでトランプ遊び仮に4グループABCDで遊ぶとする。ABグループを2人組ツーパワーとする。BCグループを3人組みスリーパワーとする。一つのトランプに10人の子どもが一緒に七並べをすることになる。後は普通の七並べと同じ要領で行うことになる。AグループBグループは2人づついるが、自分たちの番が来てもカードを出せるのは一回である。同様にCグループDグループも3人づついるが、自分たちの番にできるのは一回づつである。子どもたちは各グループの中でカードを持つ係、カードを出す係、考える係などを分担して、グループワーク的に遊ぶのである。

 ツーパワー・スリーパワーの手法を考え出してきっかけは障害児Tちゃんを指導していく過程であった。Tちゃんはダウン症児であった。このためみんなとフットベースの遊びを小学校3年生位までできなかった。小学校3年生になり興味が出てきてやり始めるのだが、ルールがよく分からないのでなかなか参加が難しい。そこで私がTちゃんと一緒にキックをして走ることにした。当時児童クラブの在籍数が増えてきていた。Tちゃんの方法を他のみんなに応用してみようとした。20人対30人でフットベースをするとき、20人をスリーパワー7グループ・30人をスリーパワーフォーパワーの7グループ作り試合をするのである。この手法を使い始めてから、新1年生でもルール説明なしで遊びの輪の中に入れることができるようになったのである。

 

Aツーパワー・スリーパワー遊びの効果

  遊びが持続する

 児童館・児童クラブにおける児童の来館時間及び帰宅時間は一定でない。このために遊んでいる途中でお迎えが来たりすると遊びが中断する。また後で来館した児童を仲間に入れることが難しい。ツーパワー・スリーパワーの手法を活用するとこうした問題が解決する。オニムゲームをやる場合に最初からツーパワー・スリーパワーでチームを作っておく。途中で「寄せて」(仲間に入れて)と友達が来たらツーパワーのグループをスリーパワーにすればよい。途中でお迎えが来て一人帰ってもツーパワーがワンパワーになればよい。仮にツーパワーのグループが2人とも帰ってしまったら、スリーパワーのグループから1人グループ移動すれば遊びは持続することになる。

  初心者や障害児を入れても障害にならない

 ツーパワー・スリーパワーの手法は先頭を行くものを基準にしている。フットベースでもキックをして4人で走っても先頭がセーフになれば他の3人は自動的にセーフとなる。足の遅い子どもがいてもそれはグループの障害にならないのである。このことは同時に遊びのルールを知らないこどももいつでも誰でも仲間に入れることができるようになることである。また、遊びのルールを教えるのに、遊びを中断しないで、遊びながら遊びのルールをこどもたちは伝え合うことができるようになる。

仲間つくり容易になる

 遊びながら遊びのルールを伝達できるので、いつでも誰でも仲間に入れることができるので仲間作りが容易になった。児童館では児童クラブだけではなく、他のクラブの子ども・自由来館児童などもくる。遊びを中断することなく遊びが持続できるので誰でも仲間の輪と和の中に入れることができるのである。2〜3歳の幼児であっても、トランプでトランプを持つ係とかバックギャモンでよい目が出るように祈る係とかになることで遊びに参加できるのである。

  勝ち負けへのこだわりが減少する

 少子化第2期では王子様・王女様が多くなり、負けることを嫌い、勝ち負けに執着しすぎる子どもたちが多くなってきている。負けたくないから、負けると馬鹿にされるからゲームや遊びをしない子どももいる。直接的な相手のいないゲームボーイやテレビゲームへと逃避していく子どももいる。ツーパワー・スリーパワーの手法で遊ぶと一人で負けるわけではないので、案外安心して負けることができる。「赤信号みんなで渡れば怖くない」ではないけれど、「じゃんけんゲームみんなでこけても楽しいよ」ということになる。

 グループワークへの発展

 日常のいろいろな遊びがツーパワー・スリーパワーの手法を使うことにより、ゲーム運動遊びの中に小グループが編成されることになり、小グループの中で子ども同士の親和的関係が助長される。これはグループワークである。

 50人で缶けりをする場合、5人組=ファイブパワー(概ね5人の意味)10グループを作る。オニは一人である。オニは一人をケントすると5人をケントしたことになる。ケントされたグループは出てきて、他の人が缶を蹴るまでだべったり、他の遊びを同時並行で行っている。また隠れているグループも隠れていながら違った遊びや学校でのことなどを話し合っている。ケースワークの必要な子どもも意図的にしっかりした上級生の仲間に入れてあげれば楽しく遊ぶことができるようになる。

 日常遊びがグループワークになることにより、ワーカーとしてグループワーク的手法も積極的に活用することが可能となる。

 子どもの遊びは通常5〜10人で行われる。ドッジボールなどもそうした遊びである。しかしながら、児童クラブでは60人以上の子どもを相手にすることも必要となる。このときにツーパワー・スリーパワーの手法は有効である。60人くらいの子どもをツーパワー・スリーパワーにし、10グループ対10グループでドッジボールの試合を行う。■ツーパワーでドッジ教えるほうは効率的である。またこの方法でドッジボールの遊び方やルールを習得すると5人から10人の子どもたち同士で日常遊びの中でドッジボール遊びを自主的にやるようになる。「王様とこじきじゃんけん遊び」「じゃんけん陣取り」

「フットベース」「リレー」「お地蔵様氷オニ」「トランプ」「ウノ」「バックギャモン」「オニム」などの遊びもツーパワー・スリーパワーの手法で遊び方を伝達し、日常遊びに定着していきやすい。有明児童センターの子どもたちの遊びが豊富なのはツーパワー・スリーパワーの手法で簡単に楽しく、異年齢異世代が一緒に遊ぶことの経験が豊富なことによる。■ツーパワー・スリーパワーでだるまさんが転んだ ■ファイブパワージャンケン■集団ジャンケン陣取りゲーム■歩き歩きお地蔵様氷鬼遊び■tomoyanトランプ・・足していくつ?・・

Bツーパワー・スリーパワーの手法を使うときの留意点

  仲間を非難させない

 ツーパワー・スリーパワーの手法でドッジボールをやると一人が当たると全員が外野に出ることになる。すると必ず「お前が当たるから負けるじゃないか。逃げろや」等の非難の言葉が出ることになる。こうした言動は許してはいけない。仲間がいるから遊べるのだということをしっかりとワーカーは注意をしなくてはならない。また勝ち負けにこだわり、5年生6年生が1年生に強いボールを当てることがある。こうしたときはゲームをちょっとストップし、「今の玉は強すぎる」ときちんと注意し、っと再開することが必要である。私はちょきんさの原則といっている。ちょきんさの原則を使って遊びの体験をたくさん貯金していくのである。

  遊びの終わり方の工夫

 ファイブパワーじゃんけん遊びは80人位の子どもをファイブパワー16グループに分けてじゃんけんを行う。各グループは相手のグループに何を出すか聞かれないようにひそひそ話で自分たちの出すじゃんけんを決める。(スキンシップになる)グーは5人そろって小さくなり、チョキは手を離し手と足を」前後に開く。パーは手をつないだまま大きく横に広げる。こうしていろいろなチームと戦い、どこのチームが一番たくさん勝つかを楽しむものである。子どもたちはあいこになるとしつこく続け、あいこが続きすぎると多くの他のグループと戦うことができなくなる。そこであいこのときは相手チームと握手をして、分かれることにした。「あいこは握手」とすると勝負へのこだわりが減って楽しく遊ぶようになる。

 一番大切なのは遊びの終わり方の工夫である。何回かの練習の後、各チームに飴を人数分持たせ、じゃんけん飴獲得ゲームを行う。勝ったら相手チームから飴をもらうことができる。負けたら飴を一個やる。あいこは握手である。一定時間ゲームを行い、グループの人数より少ない飴のグループに飴の補填を行う。飴を食べながら、一番たくさん飴を集めたチームを決める。「最初の数より1ヶ余計になったグループ」と始まり、7ヶ〜8ヶのグループが出てきて優勝が決まる。優勝チームに優勝インタビューを行う。「勝因は?」「運がよかった」「がんばった」「チームワークがよかった」などの答えが出てくる。そこで「確かに今の話は勝因ですが、必要十分条件ではありません。あなた方が勝てたのは負けてくれたグループがいたからです。優勝できたのですから、他のグループにお礼を言いましょう。私のように床に座って『皆様のおかげで優勝させてもらいましたありがとうございました』と言ってください」といった終わり方にするとずいぶん和やかな雰囲気の中で遊びが終わるものです。

 遊びの終わり方の工夫は大切です。

3、ツーパワー・スリーパワーの遊びや新しい遊びを作っていこう

 遊びやゲームはルールを決めてしまうのではなくて常に創造していくものであると思います。「トントントン・何の音」の遊びをやっていたときのことです。保育園の子どもが「トントントン」ではなくて「ブーブーブー」とやり始めました。その後「カンカンカン」「リンリンリン」など何でもありになりました。そのほうが楽しいものです。遊びは伝達しあうものです。そして時代に応じて変容していくものです。子どもたちの柔軟な発想を大事にしていろいろな遊びやゲーム・遊びの手法をこれからも開発していきたいと思っています。詳細トップ